第三章 森の妖狐と妖艶な少女 第四話 正義の復讐と勇者再来

 では、前回の続きぃー!前回、ザクロさんから新しい剣を貰った俺は「真紅の森」で戦闘によってランガを無力化し、彼女の罪を問いただそうとしていた。そして、今回は彼女からその罪の内容を問いただそうとしている訳だ。




「それで、ランガ?君は一体何をしでかしたんだ?」


「あぁ、我が命を狙われている理由が滅茶苦茶なんだ」




理由が滅茶苦茶ねぇ…まぁ、聞いてあげようじゃないか?




「実は…我には将来を共にすると誓った男が居たんだ。しかし、その男は一年前に亡くなった。この森の近くの村の住人によって殺されたんだ」


「その問題が罪の話とどう関係しているんだ?」


「我は元々人間だった。だが、村の人間によりこの姿に改造されたんだ…痛かったよ、体から皮膚を少しずつ千切り取られるんだ…ブチブチ、ベリベリ…とな?あの感触は今でも忘れられない…」




辛過ぎる過去だな…人間から別の種族の生き物に体を改造されたとは、まるで俺なんかより辛い事実じゃないか。ここまででお腹がいっぱいになりそうだったが、彼女の話はここで終わらなかった。




「しかもな、その実験に失敗したという理由で…我を殺そうとしたんだ!しかも、我の家族や親友、恋人もな!」


「なっ…!?」


「何故だ、我が殺されるのも筋違いだが、何故、我の大切な人達まで殺されなければならない!我は皆の言う事に従っただけだというのに、何故こんな仕打ちを受けねばならないんだぁー!!」




彼女の口から出て来たのは正に怒りの慟哭、その事実を知らない俺にもその怒りの爆発は心にまで浸透してきた。なるほど、これは…正義の裁きが必要みたいだな?




「安心しろ、俺がそいつ等を殺してやる」


「な、何と…我の仇を討ってくれるというのか?」


「あぁ、こんなに純粋無垢な少女の人生を壊した下種に天罰を与えないと、どうも俺の気が済まないんだ?」


「おぉっ!?」


俺は怒りが溢れて多量の殺気を出してしまっていた。まぁ、仕方ないよな?だって、俺は自分に迷惑は掛けても、人に迷惑を掛けるのは許せないポリシーだからな?




「それで、君をこんな目に遭わせた奴等はまだ生きているのか?」


「あぁ、我をこんな姿にした代わりに長い寿命を手に入れたからな…まだ寿命は尽きてはいないだろう」


「そうか、だったら…ランガの苦痛を兆倍にしてアイツ等に味あわせるだけだ!」


「これは…力強い男が味方になったみたいだな…」




俺はランガから村の位置情報を教えてもらい、その村へと向かった。




 ここが森近くの村か…下種には見合わない場所だな、おい?一応、一人だと戦闘時に不利になりそうなので、ランガにも付いて来てもらった。




「良いのかランガ?君は命を狙われている立場なんじゃ…」


「良いんだ、どうせこの村には恨みしかないし…全員皆殺しだ!」




ほほう、良いオーラを纏っている…皆殺しか、流石に子供は殺さないと思うが、大丈夫だろうな?おや?一つおかしな事がある…村に子供が一人も見当たらないだと?おかしいな、普通は子供を産んで子孫繁栄を図るのが人間の思考だ。一人くらい居てもおかしくないはずだが、大人しか見当たらない。いやいや、今はそんな事はどうでも良いんだ。早くランガをこんな目に遭わせた下種共を駆逐しなければ…俺は木陰から身を潜めながら村の中に侵入した。しかし、俺が侵入した事はすぐにバレてしまった。




「だ、誰だアンタは!?」


「まさかランガの手先か!?」


「だったらここで殺す!」


「おいおい、俺はただ村に遊びに来ただけだぞ?なにも人殺しをしに来た訳じゃない」


「う、うるさい!この賊めがぁ!!」




俺の言葉を一切聞く気がないのか、村人達は一斉に俺に襲い掛かって来た。




「全く、己の身の程を弁えろよ?」




俺は襲い掛かる村人のうなじを掻っ切った。何故殺したかって?理由は一つ、「万里眼」でコイツ等の心の中を覗いてみた結果、ランガを殺す事に賛同していたから。コイツ等もまた、ランガの命を狙う者、そう判断して彼女に被害が来ない様にここで殺したという事だ。それに、俺はサファイアルさんに「生き物を殺す」という事について学ばされ、覚悟は出来ている。この程度の事くらい朝飯前という事だ。まぁ、傍から見ればただの人殺しなんですけどねぇー?




「す、凄い…10人相手に圧勝じゃないか!」


「まぁ、伝説の『邪王四皇聖』と互角に戦ったからな?レベル50じゃ俺の練習相手にすらならないという事だよ?」


「主人公パワー健在だな?」




さて、早くランガの目標の相手を探さなければ…もしかしたらこの村から逃げ出す可能性だってある訳だし、さっさと復讐を果たそうじゃないか?




 暫く村を歩いていると、俺達の前に3人の大柄な男達が現れた。




「お前、ランガを守るとはどういう料簡だ?」


「ソイツはこの島に厄災を齎す存在なんだぞ!」


「早くソイツから離れるんだ!」


「お前達がランガを改造した張本人だな?心を見て分かったぞ?」




まさか、大将がわざわざ俺の前に現れるとは…手間が省ける。




「あぁ、ソイツは失敗作だから殺すんだよ」


「何だと?」


「子供は大人の指示に従って死ねば良い、強い奴が弱い奴を殺して何が悪い!」


「ランガは俺達の逆鱗に触れたんだ、死んで当然だ!」


「弱者が損をして何が悪いんだ!」




なるほど、お前達の気持ちはよく分かった。だったら、俺なりの正義の裁きを与えるだけだ!俺はまず、3人のアキレス腱を斬った。




「「「ぐわぁぁぁぁっ!?」」」


「どうした?俺の攻撃はまだ終わっていないぞ?」




俺は次に一番近くに居た男の腹にボロボロになった鉄の剣を突き刺した。




「お前の腐った腸、綺麗にしてあげよう、俺のボロボロな剣で」


「ギャァァ!?」




そこから更にその男の頭に向けて「炎属性・絶級」の魔法を放った。




「あつぅうっ!?あつつつぅー!?」


「お前の腐った脳味噌を消毒しないとな?」


「て、てめぇー!!」




さて、この男はもうすぐ死ぬだろう。次は俺に向かって走って来る別の男だ。俺は彼の脚に「氷属性・絶級」の魔法を放ち、その直後に心臓に向けて「創造」で作った鉄の槍で貫いた。




「さて、これで残るはお前だけだな?」


「く、クソッたれがぁー!!」




直線的な動き、攻撃が読み易い。どうやらこの男がランガの事件の首謀者みたいだ。だったら、俺の〈万物の道具〉の餌食になってもらおうか?俺は〈万物の道具・草薙の剣〉を装備し、その男の腹部を一突きした。




「ぐわぁーっ!?腹が…腹が焼けるぅー!?」


「ランガが味わった苦痛に比べればこんなもの、お遊戯に過ぎないだろう?」


「ひぃいっ!?」


「だから、この攻撃をあと50回繰り返す…途中で死なないでくれよ?」




そして、俺が〈万物の道具・草薙の剣〉で49回攻撃した所で男はあの世へ逝った。全く、どこかの人が言っていたが、下種は耐久値が低いみたいだ。これで今回の復讐は達成出来た。よし、もう帰るとするか…俺はランガを連れて村をあとにした。




 翌日、俺は王都ライアナまでランガと共に「瞬間移動」で移動し、冒険者ギルドで報告をしていた。




「なるほど、つまり貴方の隣に居る女性が大妖狐の正体で、近くにある村が噓の情報を流していたという事ですね?」


「はい、彼女には俺達に敵意はありませんし、安心出来ると思います」


「では、報酬金を贈呈します」




そうして、俺は報酬金金貨5000枚を受け取った。よし、これで今日は何もせずに生活が出来るぞ!しかし、ここで新しい仲間が出来るとは思わなかった。しかも、俺には遠く及ばないものの、相当の実力者だ。サルタ達のいい練習相手になるだろう。




「ランガ、これから君がお世話になる人達に会わせるから、分かった?」


「その、子供みたいな扱いはしないでくれ!我はお主より年上だ、子ども扱いされる筋合いはない!」


「いやぁ~、ウチにも居るんだよ?俺より50倍の時を生きてる癖に俺に甘えて来る子供がね?」


「そ、そうなのか?そやつにはプライドという物がないのかもしれないな…だが、我は中身も大人だからな!子ども扱いしたら威力100倍の拳骨だからな!」


「おぉ、怖い怖い」




しかし、ランガの見た目がな…まさかの竜の獣人族だからな。獣人族の中でも珍しいレアな種族だから、当然高い値で売買される。そうならない様に俺が守ってやらねば…しかし、案の定予想出来る展開が訪れる。




「おい、姉ちゃん?その子、金貨10000枚で譲ってくれねぇか?」


「何故だ?この子は俺の妹だ、譲る訳がないだろう?」


「い、妹!?」


「妹だろうが何だろうが関係ない、力で奪う!」


「やれるもんならやってみろ?」




俺は微量の殺気をその男達に放った。すると、全員の顔色が悪くなり、俺の目の前から走り去っていった。全く、この程度の殺気で怖気付くとは…もっと己を磨け、男の恥が!




「おやおや、誰かと思えば…この前僕をコケにしてくれた犬っころじゃないか?」




誰だ?言葉を聞く辺り、俺の事を既に知っている様な口振りだが、顔を見ても誰なのか思い出せない。試しに「万里眼」で奴の情報を見てみた。「勇者」…?あぁ、思い出した。この前喧嘩を売って来たので軽くノシタ奴等だったかな?




「セイバー?コイツ等は何者だ、お主に何か用があるみたいだが?」


「あぁ、『万里眼』で見て思い出したよ。全く、アイツ…まだ懲りていないのか?」


「ぼ、僕を『アイツ』呼ばわりするとは…やはり貴様はここで壊す、そして、僕の忠実なる奴隷になってもらう!そこに居るドラゴンハーフの女もな!」


「はいはい、お前の下らない思想はもう聞き飽きたよ…それで、今回は何の用なんだ?」




すると、勇者を名乗るバリカン…いや、バリアンは俺を指で指して、こう告げてきた。




「前回は少し手を抜いた、だがな、今日は全力で貴様と相手してやる!しかも、手下を100人連れて来た!戦力差は歴然だ、諦めるなら今の内だぞ!」




はぁ…だから、雑魚が100人集まっても無駄なんだって!俺のレベルは1160だから勇者であるお前が俺にコテンパンにされてる時点で手下は居ないも同然なの!




「さぁ、ここで戦おう?そして、僕に倒されろ!」




そう言うと、バリカンは手下と共に俺に襲い掛かった。しかし、俺が出る幕もなかったな?




「フンッ!!」


「「「「「ギャァァッ!?」」」」」




ランガの一撃で20人の男が吹き飛ばされた。流石は森の主…雑魚い勇者の下部なんか相手にならないという事か。てか、そもそもの話…俺一回バリカンを完膚なきまで叩き潰したよね?それなのに奴は懲りずにまた俺に喧嘩を売って来たという事か…悪い子には薬が必要みたいだ。




「ランガ、雑魚を全員のしたら俺に代われ?」


「良いが、もう雑魚共は既に全滅しているぞ?」


「早いな…雑魚とはいえ100人も居たんだぞ?流石は森の主だな…」


「その呼び方は止めてくれ、恥ずかしい…」




俺はバリカンの前に立ち、最初にこう警告した。




「前にこう言ったのを覚えているか?『俺はお前を数秒で再起不能にする自信がある』とな?」


「そ、それがどうした!あの時は僕も全力を出していなかった、だが、今回は全力で相手してやる!はぁぁああああ!!」




すると、バリカンは自身に水属性の魔法を付与した。なるほど、コイツもハーディーさんと同じで属性限定の付与魔法が使えるのか…面白い!俺は〈万物の道具〉を全種類装備し、奴に向けて放った。




(バリアン、セイバーの攻撃によって吹き飛ぶ)




「ぎぃぃぃやぁああああああああ!?痛い痛い痛い痛い!?」


「なるほど、この攻撃を受けて即死しないとは…これは勇者特有の魔王を倒さないといつまでも死ねないというスキルか…羨ましいなぁ?」


「き、貴様…あの技は一体…?」


「あぁ、俺の秘技だ。これ以上俺には関わるな、ただし…死にたいなら話は別だがな?」




俺が少し多めの殺気を放つと、奴と仲間達は俺の目の前から一瞬で消えた。さて、今度こそ勇者問題は解決かな?俺はランガを連れて店へと帰って行った。


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