第一章 運命の出会い 第四話 悪夢の始まり

 翌日の昼、俺とサファイアルさんで求人票を作り、ライアナの冒険者ギルドの掲示板に目立つ様に貼り付けた。とりあえず、あの広さだから三、四人は来てくれるとありがたいんだけど…まぁ、それまでは開店準備でもしますかね…


「あ、あのっ!」


「ん、何だ?」


声がしたので後ろを振り返ると、サルタと同じくらいの背の女性が俺を見つめていた。しかもまた獣人族かよ、なに、この物語のメインキャラ獣人族しか居ない訳?これを書いた作者はどんだけケモナーな訳!?


「えーっと、見た所年齢3〇〇歳と言っ…」


(セイバー、サファイアルの頭を殴る)


「純粋無垢な女の子の前で年齢をバラすなぁっ!!」


「良いでしょ、別に…どうせ作者がモザイク掛けますし」


「メタ発言止めてもらっていいですか、それが仮に本当だとしたらアンタ作者の仕事増やしているだけだからね?」


「あの…セイバーさん、僕を貴方の店で働かせてほしいミャウ!」


えー…いやいや、見た目は可愛いから宣伝効果はえげつないけど、語尾に「ミャウ」って…ウチにはもう既に語尾に「ニャ~」や「のだ~」が付いてる面倒臭い馬鹿狐が居るのに、これ以上設定が痛いキャラは彼女だけで十分だよ…てか、彼女も狐の獣人族だし…俺だけ仲間外れされてるみたいで気が引けるんですけど?


「君…名前は何て言うの?」


「僕の名前は『スノウ・アレラウト』ミャウ」


ほう、良い名前を持っているじゃないか…「スノウ・アレラウト」か、まるであの冒険者と同じ名前だ…同姓同名とは…いやいや、そんな事はあり得ないはずだ。何故なら、今の時代、生まれた子供の名前は既に存在している名前にするのは御法度だと言われているからだ。もしそんな事してみろ、聖騎士団に弾圧されるぞ!つまり、この子の名前が本当に「スノウ・アレラウト」だとするならば…


「スノウさん、ちょっとこっちに来てもらっても良いかな?」


「良いミャウよ、隠す事は何もないミャウ」


俺はサファイアルさんを連れて冒険者ギルド建物の裏へと向かった。




 彼女の言っていた名前が本当だとするならば彼女は間違いなくあの探し人という事になる。そう、俺が言っているその探し人とは…少し前に〈トライデント・キャラバン〉を探してくれという任務が俺に降りた事を覚えているだろうか?そう、まさにその探し人が目の前に居るのだ。しかも、ただのパーティーメンバーではない。そのパーティーのリーダーを名乗っている者なのだ。そう、その名前こそ「スノウ・アレラウト」なのだ。


「貴方…一体今まで何処で何をしてたんですか?島中が血眼になって探してたんですよ、ですが…見つかって何よりです」


「僕の事を知ってたミャウね…どうぞ、冒険者ギルドに突き出すなり自由にしてくれミャウ」


「そんな事はしないさ、そんな事よりも大事な事があるし…」


「ミャウ?」


そう、彼女を提出して報酬金を得るのも良いが、生憎そんな事をする余裕がない。何故なら…一人でもいいから働き手が欲しいからだ!あの規模の店を経営するには少なくとも彼女を含めて最低三、四人必要だ。なので、ここで彼女を手放す訳にもいかない。


「貴方を手放すと俺達に不利益しか生じないからな…それに、訳あって王都へは行きたくないみたいだし…無理に連行させはしないよ?」


「セイバーさん…」


「ですが、俺達の店で一生懸命働く事…それを守れないなら即行王都へ連行しますからね?」


「ヒィッ!?わ、分かったミャウ!」


よし、これで人員一人確保…あと二、三人か…いやいや、その前に一つ不確定要素があった。彼女は「営業」という職をやった事があるのかについてだ。今は人手が足りないから至急必要だったから即座に確保したが、本当に彼女はこの店の力になってくれるのやら?まぁ、それは店に帰ってから決めるとしよう。


「サファイアルさん、これで一人は人員確保が出来ましたね?」


「そうですねぇ、しかし…彼女が入ってもまだ人手が足りない事には変わりはありませんがね」


「うぅむ…」


俺とサファイアルさんが頭を抱えていると、スノウが俺達の悩みに気付いたのか、俺にこう話し掛けてきた。


「この町で出来た友達が居るから、声を掛けて…いや、皆首を縦に振ると思うミャウ!」


「都合が良過ぎる話にも程があるだろ、そんな馬が良い話信じるとでも…」


「嘘を吐いているかの心配はないみたいですよ、彼女は本当の事を言ってます」


「それを証明する証拠はあるんですか?」


「私に宿っている魔眼、『千里眼』が嘘でないと証明しています!」


確か「千里眼」って…相手の心を読んだり、将来の出来事を予測する事が出来る能力だったよな?良いなぁ、羨ましいなぁ、俺の意味のない「好眼」と交換してくれねぇかなぁ!


「ん…『好眼』?セイバー君、今、『好眼』って言いませんでした?」


バ…バ…バレたぁー!?この世で一番バレたくない相手に重要機密な情報がバレたぁー!?どうするどうする!?このままだとサルタにもバラされて陰湿な視線で見つめられる未来線しか見えねぇよ、おい!?


「『モブ好眼』いや、『好眼』」


「何だよ『モブ好眼』って、モブの特殊能力だからそう言ってんのか?仮にも俺はこの物語の主人公なの!!」


「確かに君の言う通りその魔眼は戦闘では不向きですが、ある方向性では有意義に使えますよ?」


「その方向性というと?」


「『ハーレム』いや、『大奥』で使う事の出来る代物となっています」


「まだ思春期真っ盛りの俺には無意味に近いんだよ、それは!てか、そもそも論、俺は女性を体がまだ受け付けていないの!」


「では、私のスペアの魔眼と交換しましょうか?」


す…スペア?てか、そもそも魔眼って交換可能な代物なの?初見…いや、初聞なんだけど。衝撃で息子が大雨警報なんだけど?いや、今の俺には息子なんてないんだった。はい、下ネタ失礼しまぁーす!


「ま…魔眼って交換可能な物なんですか?」


「はい。ですが、普通はそんな事は出来ません…しかし、私の『創眼』を以ってすれば可能なのです」


そ…「創眼」かぁ、この章だけで何個の魔眼が登場するんだぁ~?これ読んでる皆の頭がパンクしそうで怖いです。あれ、これ作文?


「『創眼』なんて初めて聞く魔眼ですね?どういう能力なんですか?」


「簡単に言うと、何でも出来る魔眼です」


「では…俺の『好眼』を有能な魔眼と交換してください、出来れば能力上昇系の物を!」


「本当は一つずつ与えたい所ですが…セイバー君の魔眼の上限までまだ『8−3』で5個もありますから…ここで使うとリスクが高いので、スノウ君を店へ連れて行ってから付与してあげましょう」


「ミャウ?」


そうして、俺とサファイアルさんとスノウは家路へと帰るのだった。




 ここで、皆さんに一つ謝らないといけない事があります。えぇ、この作品は数か月前にとある新人賞に投稿した物をリメイクした作品となっています。本当はあの作品をそっくりそのまま書きたかったのですが、どういうストーリーだったのかを忘れてしまいました!なので、暫く試行錯誤しながらこの作品を書いています。大体の大まかなストーリーはなんとなく覚えていますが、なにせ投稿したのが今年の4月なので覚えてなぁい!!しかも、手書き!指が死ぬかと思いましたよ…という訳で、少しこの場を借りて謝罪をしました。あと、投稿期間が開いてしまった事も謝らないといけませんね?すみません、某ソシャゲにドハマりして二日間パソコンを開いていなかったんです。しかし、そんな生活にも今日でさようならです!これからはしっかりと毎日少しずつでも書いていこうと思うのでよろしくお願いします。という訳で、長文失礼いたしました。本編に戻ります!




 という訳で俺達は森の中にある俺達の店に戻って来た。スノウの能力も大事だが、まずはこれを終わらせないと話が始まらない。そう、俺の意味のない「好眼」を有能な魔眼と交換してもらうんだ。


「では、私の所有している魔眼を幾つか譲りましょう…そうですね、せっかくですから私が君と相性の良い魔眼を選んであげましょう。最大で6個ですね?」


「そ、そんなに貰って大丈夫なんですか?」


「安心して下さい、私の魔眼のストックは…564個ありますから!」


「どうやったらそんなに大量の魔眼を手に入れる事が出来るんですか!?まさか、それも貴方の『創眼』の力のお陰…?」


「えぇ、幾つかは私がオリジナルで創りましたが…安心して下さい、安全なので」


「本当ですかぁ?」


「少し待ってください、選抜しますので…」


魔眼を提供されるなんて思わなんだ…なんか変な緊張が出て来たんですけど?まぁ、この人は信頼出来る、気にする事はないだろう。


「では、『好眼』を引き出して…6個の魔眼を付与!」


サファイアルさんがそう小さな声で囁くと、俺の体から突然強く光り出した。しかも、体が熱い…それも、熱湯を掛けられるよりも強い熱さだ!まるで溶けた鉄を体にかけられた様な熱さだ!


「アァッ…!?グゥッ!?」


「セイバー君、呼吸を整えてください。そうすれば少しは楽になれますよ?」


サファイアルさんにそう言われ、俺は深呼吸をした。すると、幾分か楽にはなれた。その状態が一分程続くと、体から徐々に熱が抜け、放たれた光も収まった。


「これで、儀式は完了ですね?」


「ほ、本当にこれで魔眼が合計8個になったんですね?」


「えぇ、ステータスを見てみれば一目瞭然です」


俺はそう言われ、自分のステータスを見てみた。するとそこには…


〇セイバー・クラニカル


 ●所有魔眼


  ・絶眼 ・強化眼 ・創眼 ・愛眼


  ・破壊眼 ・万里眼 ・変眼 ・真眼


 ●固有スキル


  ・身体強化(人間族固有スキル)


・変化神化(獣人族固有スキル)


 ●所有スキル


  ・全属性魔法


   ・初級 ・中級 ・上級 ・超級


   ・爆級 ・轟級 ・絶級


  ・物理スキル


   ・拳系 ・剣技系 ・弓弾系 


お…お……おぉ………おぉ…………おぉぉぉぉいぃぃぃぃっ!?魔眼がフル装備されてるのはまだ分かるけど、所有スキルが完全にチートそのものじゃないか!?完全に冒険者なりたての設定ぶち壊しに来てんぞぉー!?こんな事許されるのか、いやいや、絶対強制完璧確実にサルタ達に恨まれる未来線しか見えないって!!


「驚いたでしょう?これが私の『創眼』の力です!」


「なぁーにやってくれやがるんだアンタは!?魔眼を付与しただけじゃなくて所持スキルも勝手に弄るとか聞いてねぇよ、お陰でS級冒険者の座は確実たるものになったけども!」


「良いじゃないですか、これで有意義な冒険者ライフを全う出来ますよ?」


「良くねぇよ、コツコツとレベルアップする楽しい日々をアンタは一瞬で奪ったんだよ、それがどんなに大きい罪なのかはアンタが一番分かるはずだよ!?」


「サルタ君にも似た様な施術を掛けましたよ?」


「第二の被害者だったんかーい!って、サルタにも無許可でこんなチートを付与した訳!?考え方が到底普通の人間の行き着く考えじゃねぇよ、アンタ人間じゃねぇ!!」


はぁ…これじゃあの冒険者ギルドで仲間集めは到底無理難題だな、トホホ…でも、この力を手に入れたという事は…レベルは上がってないけど、ある程度のモンスターや魔物は倒せるという事!つまり…依頼受け放題という事になる!よぉーし、これで楽しい冒険者ライフを過ごせるぞぉー!


「ちなみに、レベルもポーションで1150に上げておきました」


「だからなぁーにしてくれやがるんだ、アンタはぁー!?レベル1150って人間でも獣人でもねぇよ、完全に神級の魔物だぞ!?余計に仲間集めに苦労するだけじゃねぇか!」


「いやいや、君はまだ低い方ですよ?サルタ君は1200、私は∞です」


「何でアンタだけレベルが無限な訳、これほど心強い味方は居ねぇよ!」


な…なんてこった…スキルだけじゃなくてレベルまで弄られるなんて…これじゃ村の長老にどんな顔して会えば良いのやら?ま…まぁ、これで魔眼付与の儀式は完了したという事で…次はアイツの技量確認だな。




 凄いな…本当に凄い…俺なんか眼中にないくらい凄い能力発揮してるよ。


「本当にこの程度で雇ってくれるミャウか?まだ全力を出していないのに…」


そ、それで全力じゃない?おっと、皆には俺が見ている今の状況が分かっていないだろうから説明しよう。俺の目の前にある大きなテーブルには…


・大きなピザ


・美味しそうなカルボナーラ


・特盛のチャーハン


・透き通る様に綺麗なコンソメスープ


・その他色々


数多の料理達が勢揃いしていたのだ。しかも、その料理達は見た目だけが美味しそうな訳じゃない、匂いが美味な料理そのものなのだ。この女狐、以外にやるじゃないか…しかし、俺も料理の腕には自信がある。俺が作った料理より美味しい訳がない、俺はそう思いスノウが作った料理を口に運んだ。てっきり俺は美味な味が口いっぱいに広がると思っていたが…


「オォォヴェェェェ!?」


「セ、セイバー君!?」


俺の口の中に広がったのは腐った臭いを持つゴミみたいな味だった。こ、これ本当に期限切れ前の材料で作った料理なの!?俺は猛烈な吐き気を押さえながら彼女が使った材料を見てみた。やはり賞味期限切れにはなっていないか…という事はやはり、彼女は極度の料理音痴。何で見た目は美味しそうに作れるのに、中身があの味になるんだ!?俺は吐き気が収まるまでその場にしゃがみ込んだ。


「セ、セイバー?どうしたミャウ、なんか凄く顔色が悪いけど…」


「お宅の料理を口にしたらこれだよ、何で見た目は美味しそうに作れるのに中身がこんな惨状になるんだよ?少し対抗心燃やした俺の気持ち返せよ!」


「ぼ…僕、馬鹿舌だから…味が分からないミャウ」


「馬鹿舌でもこんな酷い味にはならねぇよ、味が完全にゴミそのものだったんですけど!?」


「ま…まぁ、料理の腕はセイバー君に軍配が上がったと…スノウ君にはホールスタッフとして働いてもらうとして…その、お友達はどうしたんですか?」


「サファイアルさんが呼ぶ隙も与えないまま連れて来させられたから呼べる訳がないミャウ」


「では、明日以降という事になりますね?」


「まぁ、開店までまだ時間はありますし…てかてか、さっきからサルタさん一言も喋ってないんですけど、なんかあったんですか?」


俺がそう問いかけると、サファイアルさんはこう言った。


「彼女なら今…妄想妊娠してますよ?」


「妄想妊娠言うなや、可哀想な人にしか思えねぇわ!てか、何があったらそんな行為に走れるんですか?」


「暫く出番がなかったから拗ねたんでしょう」


「良い齢した大人がなぁーにしてんの、年下として、いや後輩スタッフとして恥ずかしいわ!」


はぁ、この状態で果たして無事に開店なんか出来るのでしょうか?大きな不安はありつつ、俺は開店までの準備に取り掛かるのだった。




 セイバー達が開店準備をしていた時と同刻、上空で不振で大柄な男が不敵な笑みを浮かべながら地上を見つめていた。


「グヘへ、ヒサビサノゲカイ…オモウゾンブンタノシモウジャナイカ!」


今まで平和に進んでいたこの物語に魔の手が襲い掛かろうとしていた。


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