第一章 運命の出会い 第三話 少年の魔眼と変貌

翌日、俺はとんでもない恰好にされていた。


「似合いますね…想像してた数百倍は…」


「女である私よりも色気があるなんて…羨ましい事この上ないよ!」


「な…な…なっ…!!」


この会話だけでは俺がどんな恰好にされているか分からないと思うから俺なりに簡単に纏めたのでこれを見てくれ。


・犬耳とふさふさとしている尻尾を付けられた


・服装が完全に女の子そのものになっている


・髪が腰まで伸ばされた


こんな感じである。何で何で何で何で?こんな恰好にされているのかな、俺は!?これでもし、声も女だったら完全に「女の娘」そのものなんですけど!?てか、髪は切るとして、この耳と尻尾は取れるんだろうな?取れなかったら人間卒業なんですけど?


「サファイアルさん?何でこんな恰好をしないといけないんですか?」


「ここには獣人族の店員しか居ませんでしたし、いきなり獣人族以外の種族が働くなんておかしいと思って…」


「だからって強制的に獣人族にしなくても良いだろ、しかも女の娘の方の獣人族かよ、こんな恥ずかしい恰好で働けとでも言うのか!?」


「セイバー君に与えた変化はそれだけではないですよ?」


え?「それだけではないですよ?」?女の見た目にされた以外に特に変化は見当たらないけど…そう思っていた俺は次の瞬間、体のある部位に違和感を覚える事になる。


「あれ?無いな…なんか下半身のあそこがスースーする…てかてか、俺が今穿いてるパンツって女物でしたよね?だったらはみ出るはずなのにその感覚が全くない…」


「そうです、少し頑張りました」


「何を頑張ったんですか?」


「撤去です」


「何を撤去したんですか?」


「アレです」


「アレってまさか…」


「男の子を外す撤去工事です」


なるほど、「男の子を外す撤去工事」か…なるほど、なるほどね…はぁぁぁぁ!?


「何してくれやがるんだアンタはぁー!?頑張ったって、そういう事かぁー!!」


「見ますか?君に付いていた息子を…」


(サファイアル、セイバーの息子をセイバーに見せつける)


「ほら?いつでも取り外し出来る様にホルマリン漬けにしてるんですよ?」


「見せんで良いわ!大体、何で見た目だけじゃなくて中身も性別転換するんですか!?俺は男として真っ当に生きたかったの、女として生きるつもりなんて欠片も無いのぉー!!」


「良いじゃないですか?女の子になりたいのは男の永遠の夢なんでしょう?」


「アンタは男を何だと思ってんだ、この世に居る男の男全員がそんな特殊過ぎる夢なんか抱えてないわ!てか、こんな事したという事はアンタも女になりたかったという事でしょ?だったら自分の体で再現すれば良かっただけじゃないか!?」


「私の体は…私の物なので…出来ません」


「いや『出来ません』じゃねぇよ、その理論が正しいなら俺の体を他人に改造される筋合い無いんですけど!?言ってる事とやってる事とが完全に矛盾してしまってるよ!」


な、なんてこった…見た目だけじゃなくて中身まで女の娘になってしまうなんて…これだとこの作品のメインキャラとして不甲斐ない事この上ないんですけど?まだ一章も終わってないのに主人公の容姿が180°シフトチェンジしちゃったんですけど?大丈夫なのかな、もう既にこの時点で明らかにバッドエンドを迎える気しかしないんですけど?でも、暫くはこの姿のままでも大丈夫な気がするな…だって、この洋館は…普通に探しても見つからないらしいから!つまりは、いつも通りの一日ならこの洋館には誰も入って来ないという事になるのだ。サイコー、サイコー、マジサイコー!しかし、俺には一つ任務が残っている。それは…


「この洋館の調査の報告の期限が今日なんですけど、どうしましょうか?」


「では、この店の代表として私が一緒に行きましょう」


「店員総勢三人しか居ないんだから皆で行った方が良い気がしますけど?」


「では、そうしますか…サルタ君、出かける準備を」


「分かったよ、マスター」


という訳で、俺とサファイアルさんとサルタは俺の任務の為に近くの町「ライアナ」へ向かう事になった。




 一日振りに町へと帰って来れた。まぁ、これだけでも及第点としますか…ただクエストを受けただけで糞尿みたいな料理を食べさせられたり、「マ〇〇ガムテープの刑」の餌食になる寸前まで追い詰められたり、見た目までではなく中身まで女の娘にされたり…冒険者とはこんなにもハードな職業なのか?いやいや、少なくともこんな散々な目に遭わされるのは俺だけだろう。まだ始まったばかりだと言うのに、俺の冒険者ライフはどうなるのやら…


「セイバー君、着きましたよ?」


「…あぁ、すみません…考え事してました」


「もう、セイバーったら…まだ男の子から卒業した事気にしてるの?」


「放っとけぇっ(恥)!!」


俺達三人は冒険者ギルド建物の中へと入った。中へ入ると、建物の中に居る冒険者全員から変な視線を向けられた。それもそうだろうな、だって…俺達三人世にも珍しい獣人族だもんね!普通なら奴隷として見るはずの種族が冒険者として活動してるなんて前代未聞だもんね!


「おいおい…何で獣人族が冒険者やってんだよ…?」


「主からの命令じゃねぇか?」


「おい、あの三人のうちの一人…昨日『謎の森の洋館攻略』ていうクエストに向かったセイバー・クラニカルじゃねぇか!?」


「まさか、その近くに居る二人に…!?」


「やっぱりあのクエストに関わらなくて正解だったな…」


やっぱり訳アリのクエストだったのか!クソォッ、騙された…金に目が眩んだ…俺の馬鹿、マネーモンスター、ド屑人間…


「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ、セイバー君?」


「そうだよ、過去の事を気にしたって何も始まらないよ?」


「いや、アンタ等のせいでこんな事になったんだろうが!なに正義の人間騙ってんだよ、言っとくけどアンタ等ただの加害者だからな!」


この馬鹿コンビニ構っている暇はないな…さて、クエスト内容は全てクリアしたし…さっさと報酬金を受け取って帰りますかぁー…俺達が受け付けへと向かった時だった。掲示板に聞き覚えのあるクエストがあった。


「ん?『冒険者パーティー〈トライデント・キャラバン〉構成員の捜索願』か…」


「聞いた事あるよ、この島で最強のパーティーだって…」


「ですが、私には到底敵わない存在ですがね?」


「料理の腕での話だろ、それは!」


俺は報告ついでにその依頼を受ける事にした。なにせ…俺が子供の頃から憧れていた〈トライデント・キャラバン〉に会えるかもしれないチャンスなのだから!しかし、彼等は冒険者の中でも最強格に近い人達のはずだ。何故彼等の捜索願が出されているのだろうか?俺は不思議になったが、とにかく受け付けの人に詳しい話を聞く事にした。


「どうも、一昨日『謎の森の洋館』のクエストに向かったセイバー・クラニカルです」


「せ…セイバー・クラニカル…さん!?」


「ど、どうしたんです!?そんなに驚いて…」


「そりゃ驚くでしょう、だって人間族の青年から獣人族の女性へと変貌を遂げているのですから!」


「サファイアルさん…(怒)?アンタのせいでこの人を驚かせてしまったんですが、どうツケを払うんです?」


「こ、怖いなぁ~…そんな目で私を見ないでくださいよぉ~?」


この雄狐め…あとから俺の怒りを兆倍にして返してやるからな?


「コホン、セイバー・クラニカルさん…それで、何か情報を得られましたか?」


「はい、謎の洋館ではなくただの料理屋というのが俺が調べた結果です」


「料理屋…それを証明する証拠はあるのですか?」


「はい、俺の後ろに居る二人は例の洋館の中に居た店員です」


「サファイアル・レクイエムです」


「サルタ・ラウアリアだニャ~」


「なんと…証拠ではなく証人を連れて来たという事ですか…サファイアルさんとサルタさん、お二人には後からじっくりと話を聞かせてもらいますからね?」


「だってよ、馬鹿コンビ?」


(サファイアル・サルタ、セイバーの腹に一撃を加える)


「ゴフッ!?」


「言って良い事と悪い事の区別も付かないんですか?」


「不届き者には正義の刃を…」


「やってる事パワハラと何ら変わらないからな、言っとくけど悪いのはアンタ等だから!」


や…やべぇよ、この二人…明らかに自分達が悪い事は分かりきっているのに横暴の限りを尽くしているよ。皆はこんな大人にならないように!


「セイバーさん、その手に握っているクエストは…」


「あぁ、このクエストも受けようかな…なんて思って」


「ま…まぁ、前回のクエストと違い体を改造される事は無いので安心ですが…」


「ですが?」


「彼等の居所や情報は全くと言って良いほど無いんです。なので、この難を乗り切った貴方でも難しいクエストになっておりますが大丈夫ですか?」


勿論、俺の答えは決まっている。


「例え難しい壁であっても突き進むのが俺のモットーです。時間は掛かるかもしれませんが、必ず全員見つけ出してみせます」


「それは心強いですね…では、クエスト許諾でよろしいですね?」


「はい、よろしくお願いします!それと…」


「それと?」


「報酬金は?」


「は、はい!危うく忘れる所でした…はいっ、これが今回の報酬金です」


俺は約束通り報酬金を受け取った。これで暫く生活には困る事は無いな…いや、困る事が一つだけあった。それは…この容姿!明らかに奴隷としか見られない上に女として生きるしか道が無いんだった!あぁ、俺の冒険者ライフオワコンかも!?


「セイバー君、君は一人じゃないですよ?」


「私達が一緒に居るから、ね?」


「言っとくけどこうなったのはアンタ等のせいだからな、それだけはお忘れなく!?」


こうして、一仕事終えた俺は例の洋館へと帰ったのだった。




 俺は呆れていた。理由は一つ…この店の外観があまりにも料理屋ではなかったからだ。外壁全面にはツタみたいな植物が蔓延っているし、入り口のドアが不気味なお化け屋敷みたいになっている。おまけにこれは重大過ぎる問題だ…そう、この洋館を見つける事自体が珍しい事なのだ。俺自身も見つける事が出来たのは奇跡に等しい…この店の一員になったからにはせめても力になるのが筋という物だ。なので、俺はこの店を繁盛させる為にサファイアルさんとサルタに声を掛けた。


「そうですね…確かにお客さんが全く来ませんね?」


「私はこのままでも良いけど?」


「いや、良くないでしょ?俺の有り金も限りがあるんですから、少しは稼ぐことも考えてください!」


「とりあえず、隠蔽魔法を解きますか…」


サファイアルさんが指を鳴らし、隠蔽魔法を解いた。そうしたらやる事は一つだけだ。


「サルタ、このツタ擬きを全部取っ払うよ?」


「え~?めんどくさいなぁ…」


「まぁまぁ、セイバー君には何か考えがあるんでしょう?ここは大人しく従いなさい」


「は~い…」


まずは俺とサルタが腐食魔法を駆使し、外壁のツタ擬きを全て除去した。それにしても…この洋館は大きいからただ除去すると言ってもかなり大変な作業になるんだよな?まずは正面から始めたけど、どうにも一週間は掛かりそうな予感がする。サファイアルさんにも手伝ってもらおうとしたけど、彼の姿はここには無かった。ったく、何処に行ったのやらアイツは…仕方ない、館を傷付けてしまうかもしれないけど…アレを使うしか時短にはならないな…


「『付与【ギフト】〈腐食・極〉』!」


俺は現在所有している腐食系の魔法で最も強い物を使い、館正面のツタ擬きを一掃した。


「おぉ~、凄いねセイバー!」


「この魔法はスキルポイントが100あれば誰でも取得出来る、サルタぐらいのレベルならこんな所業朝飯前だろう?」


「でも、その…技の名前の後に『極』が付く魔法は入手するのに普通は数百年掛かると言われているし…」


「そ、そうなの!?なんかナチュラルにディスりに行ってすまん」


「良いよ、私達もさっきセイバーの事ボロクソに言ってたし…これでお相子だね?」


何か分からないけど、いつの間にかサルタと普通に話せるようになったな。人造とはいえ、同じ獣人族だからサルタも話し易い気持ちになっているかもしれない。でもなぁ、俺には誰にも知られたくないあの力が宿っているからな…その力とは何かというと、名前は「好眼」。この名前だけ見てもどういう魔眼なのかは分からないだろう…おっと、この魔眼の事を話す前に、そもそも魔眼とは何なのかを説明しないとな。魔眼とは簡単に言えば魔法スキルとは別の能力を宿す神から与えられた眼の事だ。この眼に宿った力は魔法攻撃が封じられても使う事が出来るかなり貴重な力だ。しかも、この魔眼自体も有する者は限られていて、魔眼が宿る確率は1000人に1人らしい。更に、一人当り魔眼は最大8種類まで有する事が出来るという噂がある。さて、これで魔眼についての説明は終わるとして…奇しくも俺に宿った魔眼、「好眼」の説明に入ろうと思う。この魔眼は簡単に言うと恋愛で役に立つ物だ。いや、俺女に性的な興味が無いから意味がなぁーい!!もう少し詳しく説明すると…例えば、目の前に居るサルタに照準を合わせる。すると、彼女の頭の上にある数字が表れる。その数字の正体とは…「自分に対する好感度の数字」だ。この数字が高ければ高い程好感度が高いという事になるのだ。だから、俺女に発情した事が無いから意味がなぁーい!!そう、父親から魔眼が宿ったと聞いて嬉しかったが、その正体が聞かされた時の絶望は半端なかったな。目の前で自分の財布からお金が抜かれている時と同じ絶望を感じました。しかし、俺の魔眼はこれだけではないので良しとしよう。ちなみに、これ以外に俺には二つの魔眼が宿っている。ていうか、マジでどうでも良い事なんだけど…なんかサルタの頭上に「9999」って表れているけど、これって普通の男からしたら大変嬉しい事なのかもしれないけど…俺にとっては無意味に過ぎませーん!!つまりはだよ、好感度9999っていう事かな?という事は…


「セイバァ~♡」


マジで、マジで、マジですかーい!?何でコイツ発情しちゃってんの!?あ、好感度9999だからか!


「私とセ〇クスしよう?」


「はい?」


「私のア〇ルにセイバーのイチ〇ツを○入してぇ…〇の中でセイバーの息子から〇った時に出て来る〇子をクパァッってして…」


「すんげぇ生々しい事言ってるんですけど!?聞きたくないんですけど!?」


「もう限界…♡」


そう言うと、サルタは俺に馬乗りになってあんな事やそんな事をやってきた。


「や、止めろ止めろぉー!?こんなシーン放送出来る訳が無いだろうが、これ健全な子供も見てるからさ、もうこんな卑猥な事止めよう、ね?」


「はふっ…はふっ…」


だ…ダメだぁ…終わったぁー…!!えー!?ナニコレ、某ライトノベル新人大賞に応募して下ネタを入れ過ぎて一次選考で落ちた時と同じ絶望を感じるんですけどぉー!?


『オワタ(笑)!』


そう、彼の作品は一次選考で落ちた。そして、俺も別の意味で選考で落ちたぁー!おいおい、俺は一体何を言ってるんだ!?いやいや、ちょっと一旦状況を整理しよう。店の外観を整える為にツタ擬きを除去していた、いきなりサルタが発情して俺を馬乗りにした、絶賛エチエチプレイ中…おいおい、マズいよこれは!このままエッチなシーンが続いてみろ?作者一生「童貞生活」まっしぐらだぞ!


「デュフゥ~!」


これをなろうに投稿したら「また発情しているんですね?」や「息子が暴走してんのか」とかコメント欄に書き込まれるんだろう?そんな恥ずかしい事書かれたら作者が生み出したキャラクター代表として不甲斐ない事この上ないぞ!?仕方ない、これも使いたくなかったけど…俺の別の魔眼を使おう!


「『絶眼』起動…!」


「ニャッ!?」


(サルタ、気を失う)


そう、今使ったのが俺の「好眼」以外の俺が使える魔眼、名前は「絶眼」。名前を見てある程度どういう力があるかは分かるかもしれないが、分からない人も居るかもしれないのでここで詳しく説明しよう。まず、この魔眼の正式名称は「絶対強制魔眼」だ。これを見て大体分かったかな?「絶対強制」という言葉、そう、簡単に言うなら「自分が起こって欲しい事象が確実に発生する」と言えば良いだろうか?もっと噛み砕いて説明するなら、「パンチで相手を殺したい」と願えばそれがそっくりそのまま現実となって表れる。極論を言うなら、この国の王様だって簡単に殺せるという、あまりにもチート過ぎる魔眼なのだ。だからこそ、これは秘密にしたかったので使うのを控えていた訳だが…まさか発情して行動に移すという行動にまで発展するとは思っていなかったので、仕方ないだろう。あともう一つの魔眼はまた別の機会で紹介するとしよう。あれ?今気付いたんだけど…俺…なかなか最強キャラなんじゃね?おっと、そんな事はどうでも良いんだ。早くこの館の正面だけでもツタを除去しないと話が始まらない、俺は大急ぎでツタ除去作業に入った。




 あれから数時間が経過した。大急ぎで作業に徹した結果、館全面のツタの除去まで改築作業が進んだ。良かった、これで汚い店とは見られないはずだ…あとは…


「この不気味にも程がある年季の入ったドアだな…」


そう、皆の世界で言う所の「ホラーゲーム」で出て来る建物のドアそのものなのだ。早くこれを撤去して新しいドアに変えたいが、ここは俺が所有している建物ではないからな…サファイアルさんに一声掛けたいけど、あの馬鹿は何処に居るのかが分からないし…もしかしたら近くに居るかもしれないので、大きな声でサファイアルさんを呼んでみた。


「サファイアルさーん!!!!」


「大き過ぎますよ、そんな大きな声を出さなくてもちゃんと聞こえますから大丈夫ですよ?」


俺が大きな声で呼ぶと、耳を押さえながらサファイアルさんがトボトボと歩いてきた。


「サファイアルさん、このドアあまりにも不気味過ぎるので取り替えても良いっすか?」


「えーっと…出来ればこのドアをそのまま使いたいのですが…」


「でも、こんな不気味かつ不衛生なドアなんかこのまま置いてても無価値ですっ…」


(サファイアル、セイバーに蹴りを入れる)


「ぐばはぁっ!?」


「これは私にとって大切なアイテムなんです」


「大切な物を『アイテム』って言うなよ…」


「これは…数千年前の私の愛人が遺した思い出のドアなんです…これを取っ払う?そんな事絶対に許しませんよ?」


「じゃあ、改築しても良いですか?」


「これを改築…難しいと思いますよ?だって、このドアは『神樹【しんじゅ】』で作られているんですから」


えっとー…「神樹」か…確か遥か昔に絶滅した樹木の一種だったっけ?それが…このドアに…


「大丈夫ですよ、俺の『絶眼』でパパッと改築しちゃいます!」


「え!?ちょっと待った、『絶眼』!?」


俺は「絶眼」を使って扉を改築しました。やり方は簡単です。という訳で、大体汚れを落とせば綺麗な扉になるだろうと思い、絶対に汚れを全て落とす水を生成して扉に噴射して長年の汚れを落とします。これだけでもだいぶ印象が変わりました。水で汚れを落とす前はホラーゲームの様に不気味さを放っていた残念な扉が…なんという事でしょう、木目がはっきりとした古代感溢れる美しい扉に変身したではありませんか!


「これで、外観の問題は全て解決出来ましたね?」


「凄い…私が数十年掛けても全く落ちなかった汚れがたった数秒で綺麗さっぱり無くなってる…流石は『絶眼』、聞いていたより何倍も凄まじい力ですね…これが封印魔法を駆使しても封印出来ないとは…セイバー君、その力…『チート』です!」


はい、言われました!俺のこの力が完全に「チート」であると証明されました!いやいや、今はそんな事はどうでも良いんだ。早く開店準備をしないと…今現在この店に居るのは…俺とサファイアルさんとサルタの三人…え!?明らかに人手不足だよね?え、大丈夫なのかな?このままだと過労死するビジョンしか見えないよ!?


「サファイアルさん、人員募集しましょう?」


「何ですかそれは?」


「嘘でしょ、人員募集知らないの!?」


「はい、全くと言って良い程分かりません」


「簡単に説明しますね。人員募集とは…(省略)…という意味です。経営者なんだからそのくらい知っててくださいよ?」


「じゃあ、明日から求人を出すとしましょうか」


「そうですね、でも…こんな木々が鬱蒼とした店で働きたいと思う人居るのかな?」


「その点は気にしないでください」


そう言うと、サファイアルさんは大きな洋館に向けて指を鳴らした。すると、あんなに大きかった洋館は小さなサイコロ状みたいに小さくなり、サファイアルさんの手によって回収されました。


「な、何なんですか?その魔法?」


「その名も…『エリア・バキューム』です!」


「中二病か、まぁ良いか…店を移動出来るなら人員は幾分か流れて来そうだし…」


そうして、俺の洋館大清掃は終わりを迎えたのでした。


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