第一章 運命の出会い 第一話 謎の森の洋館

初めまして、俺は「セイバー・クラニカル」。何処にでも居る極々普通の冒険者だ。と言っても、冒険者になったのはつい昨日の事なんだけど…でも、遂に憧れの冒険者デビューか、楽しみ過ぎて昨日は一睡も出来なかったよ!なので、今は睡魔と戦いながら歩いているので絶賛千鳥足状態です。長老も厳しいなぁ…近くの大きな町までそんなに離れていないから馬車で送ってくれて欲しかったのに、「若いから歩いて行きなされ」なんてほざきやがって…現実キビシー!でも、約一時間歩いて町まであと少しなのでこれは水に流しますかぁー…さて、まずは町の冒険者ギルドに向かって、適当にクエストをクリアして冒険者ランクを上げますかぁー!




 ここが冒険者始まりの町、王都「ライアナ」だ。始まりの町にしては結構衣食住が充実してるし、街並みも綺麗だ。俺が住んでいた村とは大違いだ(失礼)。さて、冒険者ギルドへ向かう前に…装備一式を揃えないとな。でも、現在の所持金は…金貨50枚か。ちなみに、この世界でも金貨が最高級の硬貨だと思っている人が居るはずだが、実際は違うんだ。金貨の上にもう一つ高価な硬貨がある。それは「白金貨(別名:プラチナマネー)」だ。これを扱っているのは俗に言う貴族が対象になる。なので、金貨は俺みたいな冒険者なりたての人間でも持っているのが当たり前だ。さて、硬貨の話はまた今度するとして…俺は冒険者になる前にも何回かこの町に来た事があるので、何処にどの店があるかは大体分かるんだ。防具屋は確か…果物店の隣にあったはず…


「あったけど…一年来てないだけでこんなに店は変わる物なんだな?」


「おう、セイバーの坊主!一年振りだな」


「あぁ、久しいですね、店長」


店長は変わってなかったけど、店の雰囲気がだいぶ変わってる…少なくとも一年前まではこんなチャラチャラした雰囲気の店では無かった気がする…なにかあったのだろうか?


「店長、だいぶ店の雰囲気が変わりましたね?なんかパリピが通いそうな店に様変わりしてるんですけど?」


「あぁ、俺…パリピデビューしたからな!」


「……………はい?」


「あれは、ほんの二週間前の話だ。俺が普通に店を切り盛りしていたら…偶然俺の家族が店に来たんだ」


「まさか、その家族がパリピ化してたから、それに影響を受けて…」


「あぁ、そうさ!俺以外の家族がパリピになってんのに、俺だけがパリピじゃないのはおかしい事だろう?だから俺は…店ごとパリピになったのさ!」


「イメチェンは良いけど、これは流石にやり過ぎなんじゃないんですか?とりあえず、必要最低限の装備一式を頼みます」


「あぁ、ダイヤ装備一式だ!」


「なんか某建築ゲームのアイテムみたいな言い方しますね?でも、こんなに貴重な装備を俺なんかが貰っても良いんですか?」


「良いの良いの、ダイヤモンドなんて腐る程持ってるからさ!」


「そ、そうですか…では、お言葉に甘えて…いくらですか?」


「銀貨1枚だ」


「正気かてんちょーう!?破産すっぞぉーっ!?」


「人生とはギャンブル、賭けなきゃ勿体無いぜ?」


「カッコいい事言ってるけど、本質はただのギャンブル依存症その物なんだよな」


俺は本当にこの価格で良いのか迷ったが、店長が良いと言うので、お言葉に甘えて銀貨1枚でダイヤ装備一式を購入しました。なんか…罪悪感が半端ないな、おい?あの価格は非合法じゃないのかと疑問を持ったけど、冷静に考えて俺は客なので何も悪くはない。悪いのはその価格で売った店長なのだから。俺はパリピと化した防具屋をあとにして冒険者ギルドへと向かった。




 冒険者ギルド…なんか思ったより大きいな。外見だけでかなりお腹いっぱいなんですけど?俺はそんな状態のまま冒険者ギルド建物の中に入った。中は綺麗に掃除されているのか、清潔だ(当たり前)。そして、一定の間隔で置かれた観葉植物に天井には大きなシャンデリア…俺の村には無かった物のオンパレードだ。俺はそれに驚きながらも受け付けの方へと向かった。受け付けには年相応の綺麗なお姉さんが居た。まぁ、今の俺は彼女とか作っている場合じゃないから女がどうこうとか考えてない訳だけど…


「昨日冒険者登録をしたセイバー・クラニカルという者ですが、クエストは何処で受けられるのですか?」


「あぁ、あちらの掲示板からお好きなクエストを選択してください」


掲示板か…右方向に見える大きな壁の事か?俺は受け付けのお姉さんの指示通りに掲示板の方へと向かった。うーん…たくさんあるからどれを選べば良いのかが全く分からん!とにかく、報酬が高そうなクエストを選ぶか…えーっと、「謎の森の洋館攻略、懸賞金金貨100枚」…金貨100枚か、これだけ金貨が集まれば他の町へと向かう事も出来そうだ。俺はその依頼を受ける事にした。




 その依頼を受ける事を決めた日の晩、俺は格安の宿のベッドで横になっていた。それにしても、「謎の森の洋館」か…この町に来る道にはそんな建物はなかったけど?もしや見落としたのかな?俺は頭の中でずっとそれを考えていた。しかし、今考えても何も起こらないし意味がない。なので今日は明日に備えてゆっくり体を休める事にしよう!俺はこの日の為に用意したあるアイテムがあるんだ…そう、それは…


(セイバー、バッグからゲーム機を取り出す)


携帯用ゲーム機だ!俺は冒険者にはなったけど、まだ歳は15、まだまだ子供なのだ。そんな歳の子供がゲーム機無しでどう生きろと言うのか?やっぱりコレが無いと何も出来ないし、コレがあるからこそクエストも頑張る事が出来る。俺は充電器も取り出し、今から約8時間ゲームに勤しんだ。




 翌日、俺はまた千鳥足になっていた。理由は一つ、ゲームをし過ぎたからだ。結局昨日は午前2時まで起きてたからな…この昼夜逆転の生活から早く脱却しなくてはならないな。俺は自分自身に「覚醒」の魔法を付与し、なんとか戦える状態を強制的に作り出した。これで、大型モンスターに襲われても何とかなるな…俺は城壁の外にある大きな森へと足を踏み入れた。




 そして今に至る訳だ。森の中を散々探し回ったけど、洋館どころか廃墟の一つも見つからない。このクエストを依頼した人は本当にその洋館を見つけたのか?洋館だったらかなり大きいはずだからすぐに見つかるはずなんだけどな…もう日も落ちてきそうだし、今日は帰るかぁ…俺は帰ろうと思い、後ろを振り返った時にそれは俺の目の前に現れたのだ。


「うぉ…!?これが『謎の森の洋館』…でもおかしいな?ここにはただの道しかなかったはず…さっき俺がそこを通ったからここに大きな洋館があるはずが無いんだけど?でも、今見つかって良かったとしよう!タイムリミットは近いけど、今日調べられるだけ調べ尽くすぞ!」


俺は意気揚々とその洋館へと足を踏み入れた。

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