第2話 真の目的

 俺には観覧車の何が楽しいのかわからない。

 百歩譲って展望台なら行ってもいいと思うが、観覧車の良さは理解できない。


 その子はAさんと言う名前だった。ずっとはしゃいでいた。20年前ならそういう人がいただろうと思うが、ずっとキャピキャピしていた。俺は憂鬱だった。


 ゴンドラは完全な密室だ。

 俺は言葉が思いつかない。

 ゴンドラが地面から遠ざかるにつれて、次第に不安が増していった。


「私のこと、覚えてない?」

 Aさんが怖い顔で言った。

「え????」

 いきなり、年相応に喋り出すから驚いた。

「しらばっくれたって、あんたの顔は忘れないよ!あたしは、あんたからひどいことされた女だよ!」

 俺もやり逃げしたり、多少は酷いことをやって来たもんだ。

 でも、その人は本当に知らなかった。

「お母さん、やっちゃって」

「えぇ!」

「命が惜しかったら、財布の現金全部出しな!」

「は、はい・・・」

 俺は財布から3万円だした。ワンチャン、若い子とホテルに行けた時に、カードを出したくなかったからだ。クレカはすべて家に置いてきた。PASMOには、定期の区間と俺の名前が入ってるから見られたくない。俺の意識はズボンのポケットに集中していた。


「まあまあ持ってるじゃん。嘘つきやがって」

「殺すには惜しいいい男だから、命だけは助けてやるよ」

「はあ・・・ありがとうございます」


 すると、女は俺の下半身を器用に触りだした。

 あ、お店の人かもしれない・・・。

 そして、〇ェラもされてしまった。

 お母さんの前で・・・。

 お母さんは、他人行儀に窓の外を見ていた。

 それが余計に恥ずかしかった。


 かわいそうだな、お母さん。

 頭のいかれた娘のいいなりか。

 ちなみに15分で一周みたいだけど、永遠のように長かった・・・。


 俺たちは、観覧車を降りた。

 女は手を振って去って行った。


「バイバイ。超、楽しかった」


 彼女は満面の笑みだった。

 俺は恥ずかしいから警察に行かない。

 最初からそのつもりだったのか・・・。

 

 病気を理由にしたら、相手は強く出られない。

 それに、ちょっとした性的サービスを受けてしまったから、3万はその代金と言われてもおかしくない。

 

 あのお母さんは美人局なのか。

 

 たった3万円のために?

 普通に働けよ!俺は思った。

 でも、3万がなかなか稼げないのかもしれない。

 あの容姿だと風俗やっても稼げないだろう。

 トラウマになりそうな嫌な日になってしまった。

 東京ドームの観覧車を見ると、その日のことを思い出して憂鬱になる。

  

 俺はこの日からきっぱり出会い系をやめた。


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年齢詐称 連喜 @toushikibu

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