第18話 楽しそう!
人里離れた山の頂上でその会議は行われている。
5つの椅子に座る人物は、仮面を被り向かい合う。
「では、問題といったらこの程度でしょうか。……これは良いことなんでしょうが、久しぶりの会議だというのに内容が薄かったですね」
「だからどうした。我はもうこんなところ来たくないわ。なぜ会議をするのに山の頂上なんだ」
「ほら。私達ってあまり素性を明かしたくないじゃないですか? この画面を被っているのは誰が誰なのかわからないようにするためっていうのと、アイツラにこの会議の存在を知られたくないからでしょう?」
「言いたいことはわかるが……ここに来るのが面倒なんだよ」
つまんない。つまんない。つまんない。
いつもこの会議は面白いこといっぱいあるから楽しみにしてたのに、なんでなにもないの!
「ほら、あなた達いい加減にして。私まだ言うことがあったの忘れてたわ」
「お? そんな大事なことなんですか?」
もうドラちゃんに乗って遊びにいこっかな……。でもいつもの、ぐるぐる回転どががが! は飽きた。
やることなぁ〜い。暇ぁ〜。
「今の様子はどんな状況なのかわからないのだけど、この前私の管轄の土地にある森が突然移動したの」
「移動、ですか。で、その理由は突き止めたのですか?」
「いえまだ何も……。ほら、あの荒野の土地ってあまり干渉できないじゃない?」
「仕方はないと思いますが、もし誰かのスキルで森ごと移動させられたのであれば調査団でも送ってもいいかもしれませんね」
スキルで森が移動?
そんなの絶対面白いじゃん!
「ミランダよ。我みたいになりたくないのであれば、悪の根は早めにもぎ取っといたほうがいいぞ」
「わかってるわよ」
やばい。
早く行くかないと面白そうなのがとられる!
「安心するがいい。マーがその森を見てくるのだ!」
「あっ、ちょっとマクティアさん! まだ会議終わってないですよ!」
森に何があるんだろう?
……もし面白くなかったら焼き払おうかな。いやここまでマーのことを動かしてるんだから、その時は絶対焼き払う。
「いくよ。ドラちゃん」
「グガァアアアア!!」
「なにしよっかなぁ〜?」
まだ色々やりたいことはあるけど、それをするためには外から色んな物を買わないといけない。
この世界のどこにどんな都市があってとか何も知らないし、外に出る気にもならないので外の探索はしない。なので、必然的に暇になるのだ。
ハンモックで揺れていると、視界にニョキッといーちゃんの顔が入ってきた。
「することがないのなら、私は釣りをすることをおすすめします」
「え〜。最近ずっと釣りしてたから飽きた」
「そうですか。では、私は食材を採りに行くので」
「頑張れぇ〜」
私やるぅと違っていーちゃんは働き者。
もともと人手が欲しくて創ったから、働くことが自分の役目だと思っているのだろうか? なんにせよ、私10人分くらいは働いてくれている。
「休みないんじゃ?」
いーちゃんっていつも働いてる気がする。
休みと言っても特にすることがないかもしれないけど、ちゃんと休んでもらわないと。
「ブラックは良くないからね」
いーちゃんにちゃんと休んでね、と伝えその足で久しぶりにダムの様子を見に来た。
ここ一ヶ月で雨は少ししか降ってないのであまり溜まってない。
そう、ドラゴンがダムの中で水遊びできるくらい……。
「ってドラゴン!?」
思わず二度見してしまった。
目をこすって三度見してみても、ダムの中でドラゴンが水遊びしている。
血のように鮮やかで真っ赤な鱗。なんでも一噛みで食い千切ることができそうな鋭い牙。水遊びをしているのだというのに、殺気むんむんの瞳孔。
なんでこんなところにいるのかわからないけど……迷ったのかな?
「何も見てない。私は何も見てない……」
花怜は現実逃避して足音を立てないようにゆっくり逃げようとしたのだが、背中に小さな人の手をそえられ、冷や汗をかいた。
「お前、ここに住んでるのか?」
小さな女の子。
後ろに赤と青が一対一で混ぜられた綺麗な紫色の長髪を風になびかせた、見たことのない小さな女の子が立っていた。
外から入ってきたら大樹から私に警告が来るはずなのに……。まさかあのドラゴンに乗って空から来たとか?
「ドラちゃ〜ん! 気持ちいい?」
「グガァアアアア!!」
どうやら私の予想は当たっていたみたい。
ドラゴンといったら、この前異世界の本の中で登場してた気がする。たしか、ドラゴンに都市を滅ぼされたとかなんとか……。
これは、うん。絶対、ドラゴンを仕えるほどの力をもってるであろうこの子を怒らせない方がいいね。
「あ、あのたしかに私はこの森の中に住んでるんですけど……どうかしました?」
「ふっふっふっ。やはりそうであったか。ならばこのマーと勝負しろ!!」
「え、えぇ?」
森の番人、始めました〜何もないところから一歩ずつ〜 でずな @Dezuna
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