第15話 拗ねてる猫ちゃん



 なぜか最近猫ちゃんが不機嫌で、意図的に避けられてる。

 いつものように一緒にご飯を食べようとしたら逃げ、魚を釣ったというのに盗みに来ない。お昼寝をする時も少し距離が離れてる。


「あの〜私なんかやったかな?」


 直接聞いてみても、ぷいっと顔を逸らすだけ。 

 

 魚を餌にしてみても機嫌を直してくれなかった。……隠れて魚を食べていたのは見なかったことにしよう。


 猫ちゃんに避けられてる理由がわかればいいんだけど……。

 とりあえず何か猫ちゃんが夢中になれるようなおもちゃでも創ってみよっかな?


「できた」

 

 というか、地面に生えてたただの猫じゃらしなんだけど。創ったわけじゃないんだけど。

 ささっ猫ちゃんどこにいるのかなぁ〜っと。

 いた。

 草むらの上で無防備にお腹を出して寝転がってる。いつもならあのポカポカしてそうなお腹めがけて猫吸いをするんだけど、衝動を抑えて、気配を消して……。

 

「にゃ」


 お。猫じゃらしに気づいたみたい。

 ほ〜れほ〜れ。遊んじゃってぇ〜。


 ……さっきから猫ちゃん、横になりながら猫じゃらしを目で追ってるだけで中々食い付いてこない。


「にゃふ」


 あ、寝ちゃった。

  

 普段からハチャメチャなことをしてる猫ちゃんからしたら、猫じゃらしなんて低俗な遊びだったのかな……。それともただ眠かっただけ?


「あっ、カレン様」


 猫ちゃんがいる草むらから離れようとしたとき、いーちゃんが声をかけてきた。

 ぎりぎり前が見えなさそうなほどキノコを山のように持ってる。


「今キノコを取ってきたのですが、これどこに置いときましょうか?」


「う〜ん……とりあえず適当な空の木箱の中に入れといて。あっ、まだ調理はしないでいいからね」


「わかりした」


「いつもありがと。いーちゃん」


 ん?


「いえいえ。では、作業に戻ります」


 さっきいーちゃんの名前を呼んだとき、猫ちゃんの耳がピクッと動いた気がする。

 気のせいかな?


「そういえばいーちゃんの体後で補強しておかないと……」


 気のせいじゃなかった。


 もしかして猫ちゃん、いーちゃんのほうが先に呼び名をつけられて拗ねてたのかな? いや多分あの感じ絶対そう。

 って、それで不機嫌になってたっていくらなんでも可愛すぎるんじゃない? ただでさえ外見でも可愛いのに……。


「猫ちゃん」


 触っても何も抵抗してこなかったので、寝ているふりをしている猫ちゃんを抱きかかえる。


 ……まだ寝てるふりしてるんだけど。


「起きてるでしょ?」


「にゃ」


 やっぱり。

 

「これからこの花怜が猫ちゃんに名前をつけようと思います」


「にゃ」


「なんか希望とかある?」


「にゃ」


 「にゃ」ってなに?

 にゃってつく名前にしてほしいのかな? 

 それとも「にゃ」っぽい名前にしてほしいのかな?

 あぁ〜頭おかしくなりそう……。

 ていうか、


「にゃって何?」

 

「にゃ〜う」


 猫ちゃんっぽい名前にしてほしいってこと?

 それなら簡単……じゃないね。


「う〜んどうしよっか」


 猫ちゃんと言ったら自由で、怠惰を極めてて、意思疎通ができて……。多分、名前をつけるってそういうことを名前にするんじゃないんだよね。

 毛が白いから。


「しーちゃんは?」


「にゃ……」


 どうやらお気に召さいらしい。

 

 初めて猫ちゃんの外見を見た時、純白の衣とルビーのような瞳って思った気がする。

 ルビー……。


「るーちゃんは?」

 

「にゃ……」


「じゃあ『るぅ』は?」


「にゃふ」   


 まぁそれでもいいかな? みたいな態度で返事してきた。……絶対気に入った名前で嬉しいんでしょ。


「改めてこれからよろしくね、るぅ?」


「にゃーにゃ」


 またぷいっと顔をそらされた。

 これってもしかしなくても照れ隠しってやつなんじゃ? 

 やば。


「可愛いぃいいいい!!」


「にゃ!!」


 あっ、逃げられた。

 


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