第13話 運命の再会



 村の中に不審者がいた。

 私が見つけた時は全身泥まみれになっていて、何故か何もない地面の上をほふく前進していたのですぐ不審者だということがわかった。

  

「ありがとう、少女」


 変なお姉さんがいるというのに、村の人に声をかけず自分の部屋の中に連れ込むなんておかしなことをしていると思う。

 ……村の警備の人に言うべきなんだろうけど、もしそうしたらこのお姉さんは連れて行かれちゃう。


「私、少女じゃなくてエリカっていいます。お姉さんの名前はなんですか?」


「…………いーちゃん」


「ちゃん?」


「いーちゃん」


 本名を教えたくないのかな?


 なんにせよ、このお姉さんは外からきた人。……そういえばほふく前進なんてしてたけど、なんでお姉さんはこんな辺鄙な村にきたんだろう?


「いーちゃんさんはこの村に何しに来たんですか?」


「私、悪くない。いい人。敵、違う」

 

 いーちゃんさんは私に誤解されないよう両手を上げてきた。


 この、既視感がある。私ってあの時の女性からこんなふうに見られてたのかな。この人みたいに、少しでも言葉が通じていたら色んなことを喋ってみたかった……。


「違う。違う。敵、違う」


「うんわかった。いーちゃんさんが私に敵意がないことはわかったよ」


「よかった」

 

 なぜだろう?

 身振り手振りが似ているからなのだろうか。いーちゃんさんと一度会ったことがある気がする。


「私達、どこかで会ったことある?」


「な、ない。初めて」


「ね」

 

 既視感って怖い。


 いーちゃんさんに質問していって、色んな事がわかった。たとえばいーちゃんさんはここに来る途中持ち物をすべて奪われちゃったとか、そのせいで遭難していたとか……。

 絶望していたときに、この村を見つけたらしい。 


 ……事情を聞かなければ、警備の人から一度追い出されなけど、すきを見て村の中に入ってきた本物の不審者だと知った時は警備の人を呼びそうになった。


「いーちゃんさんはこれからどうするんですか? 少しの間はここにいてもらっても気づかれないとおもうんですけど……。あ、でも多分私のお姉ちゃんにすぐバレちゃうと思うので厳しいかもです」


「私、村見る。それで帰る」


 帰るって言われても……。

 まぁ休んでいくはずだよね。


「せっかくなので私が村の中を紹介しましょうか?」


「ありがとう」


「あ、もちろん水浴びしたにあとですけど」


「はい……」



 体を見られないように水浴びをし、私は一度倒れていたところを助けた少女に村を案内してもらった。


 村一つしかない診療所。村一つしかない売店。村一つしかない食堂。

 話を聞く感じ、エリカはそこで看板娘として働いているらしい。


 村の人達は主に農作物を売り、生計を立てている。動物を狩り、手に入れた毛皮を売ったりするともあるがそれは安定した収入にはならない、と一度も狩りをしたことがなさそうなエリカが誇らしげに教えてくれた。


『カレン様。農作物わ盗みませんか?』


 一通り村の案内をしてもらいこれからどうしようかと考えていた時、いーちゃんは悪魔の提案をしてきた。


「そんなことできるわけないでしょ」


『ですが、盗めばいろんなものを食べることができるようになります。栄養の偏りもなくなるので最善の提案だと思ったですが』


 最近肌荒れしそうで怖かったから、言いたいことはわかる。

 けど盗むっていうのは先のことを考えて最善の提案だは言えない。


「いい? いーちゃん。これから私は盗むことなく農作物を手に入れるから見てて?」


『あなた様がそういうのであれば……』


 いーちゃんは自分の提案を突っぱねられしょんぼりしてしまった。

 別に悪いことしたわけじゃないのに……。提案してくれるのは嬉しいから普段からもっとしてほしいな。


「いーちゃんさん? さっきから誰と喋ってるんですか?」


「大丈夫」

 

「そう、ですか」


 ふぅ、日本語で喋っててよかった。

 もし今後異世界語を完璧に話せるようになったら、絶対聞かれたくないことは日本語で喋ろ。


「エリカ。お腹、すいた」


「もしよかったら、うちのお店で食べていきます? お金はいいもで私が働いてる姿見てほしいです!」 


「食べる」


 お金を取らないなんてなんていい子なんだ……。

 ていうか、いつの間にか異世界語スラスラ聞こえるようになってるし。耳の慣れって大切なんだ〜。


 エリカに連れられ、さっき村を紹介してくれたときに一度見たお店についた。

 派手な看板があるわけではなく、ただ一枚の文字が書かれた看板がある。もうお昼が過ぎているのに、まだ中は混み合ってる。


 もしかして、村の外にあまり人がいなかったのはここに集まってるからなのかな?


「じゃあ私着替えてくるから、ここで待ってて」


「わかった」

 

 睨みつけてくるおじさん。お酒を交わしながら触れることなく横目できてるおじさんやおばさんもいる 

 周りにいる人の目線がすごい。村の中に見知らぬ人がいるのだから、当たり前だといえばそうなんだけど……

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