第12話 新たな挑戦
我が家ができた。
相変わらず食事は外でしてるけど、やっぱり自分の家があるとモチベーションが高まる。
と、そんなわけでまた新しいことに挑戦してみようと思う。
その挑戦というのは……。
「これ、ちゃんとそれっぽい服装になってるのかな?」
「はい。水が反射して映し出している私の姿は、遭難している女性そのものです」
森の外を探索すること。
探索はいーちゃんのことを操作して、実際には私自身は外に出ないけど……細かいことは気にしない気にしない。
「いやもうちょっと乾燥してる肌を再現しないと……」
手直しに手直しに手直しを加えたいーちゃんは、早速探索に乗り出た。
もともといーちゃんは遠隔操作するために創っていたので、いーちゃん自身が私に体を動かす権利をくれればいつでも操作できる。
視覚聴覚はもう先に権利をくれて、同調できている。
『へぇ〜。いーちゃんから見る世界ってこんな感じなんだ……』
「私とあなた様はそこまで身長差はありません」
『あっそういうことじゃなくて、顔を下に向けた時の世界なんだけど……』
「…………」
どんな顔してるのかわからないけど絶対呆れられてる。
『な、なぁ〜んちゃって。嘘だよ?』
「あなた様はそんな嘘つきません」
『今日からいーちゃんが知ってるあなた様じゃなくなったんですぅ〜』
「子供じゃあるまいし……」
と、人形であったはずのいーちゃんにため息を吐かれながらも足は前に進んでいた。
もう4時間以上歩きっぱなしだ。
さすがの私もずっと喋り続けてたら疲れるので、小休憩に入ってる。いーちゃんが作り置きしてくれた野菜だけ炒めを食べながら視覚を覗く。
『荒野って果てしないね』
「はい。私は今、緑がどれだけ大切なのか実感してます」
『やっぱ森はいい!』
「いい! です」
今いーちゃんが歩いているのは、もともと森があった場所。まだ異世界転移されて一ヶ月も経ってないのに、どこか懐かしい気分になる。
スキルのおかげだけど、よくここまで生き延びられてる。やっぱ、人間って凄い。いやこの場合は私がすごいのか?
「カレン様。前方に建物の影が見えます」
『なぁ〜にぃ〜?』
本当にあった。何軒もの家の影……ということは、村があるってうことなんだろう。
あの変顔少女以来の人、か。初めて出会う人が怖くなければいいけど。
『できるだけ大回りして、人がいない方から村の中に入ってくれない? この世界の人がどんな生活してるのか気になるんだよね』
「カレン様。どうやらもう遅いみたいです」
『え?』
いーちゃんの目の前には、門番のような格好の男が二人いる。槍を持っていて、矛先を向けてきているのでものすごく警戒されていることがわかる。
作戦失敗になるの早すぎない?
「どうしましょうか?」
『どうって……。そうだ、対話。私、猫ちゃん先生から色々教えてもらって大体異世界語わかってきたから試しに対話してみたい』
「わかりました。では、一度体の権利をあなた様に譲ります」
『ありがとぉ〜』
私の意志で手を動かせる。体を動かせる。
声も……。
「あーあー」
いーちゃんの声だけと出せる。
よし。じゃあ早速第一村人に話しかけてみますか。
「あのー……私、家、ない。遭難、した」
槍を構えていた男二人は私が喋った異世界語が通じたのか、槍をおろして警戒を解いてくれた。
「では)*%$^*@)‘? @*$$言うわけではないでしょ?」
やった。全部は聞き取れなかったけど、一部は聞き取れた。
「どうなんだ!!」
一喜一憂していると、再び槍を向けられた。
どうなのか? と言われても、何言ってるのか肝心なところがわからないので答えようがないんだよね……。
「私、言葉、勉強してる。すべて、わからない」
「なるほど。‘`*%&%=&#@*$#@()+だな。休ませたいが身元がわからない者を村の中に入れるのは難しい」
耳が慣れてきたのか結構聞こえた。
この感じだと村の中入れないんだ。まぁけど当初の目的であった、学んだ言葉を試してみるということができたから満足。
「じゃあ、私、帰る」
警備の二人は親切心で私のことを村に入れてくれることはなく、後ろ姿を申し訳無さそうに見守っていた。
と、普通は帰るところじゃん?
『カレン様。この体は私の所有物なので、あまり汚していただきたくないのですが』
「わかってるわかってる。帰ったら一緒にお風呂入ろ?」
いーちゃんの体を操作して体を泥まみれにし、警備の監視をくぐり抜け村の中に入ることに成功した。
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