第9話 生活水準を上げる



 猫教師に監視されながら、異世界の言語の解読は進んでいる。

 言語を覚えるのも大事。けど、私はそれをしながらしたいことがある。ずっと前か考えていたこと。

 それは……生活水準を上げること!


「うがー」


 毎日シイタケを食べる生活。最初は食べ物があるというたげて嬉しかったけど、流石にもう飽きた。蒸し焼きという食べ方も飽きた。


 いい加減別の食べ物を食べたり、別の食べ方を模索したりしないと私がシイタケになっちゃいそう……。


 スキルを使って森の中に食べ物がないのか探す。


「あれ?」


 すぐ見つかった。それも色んな種類の食べ物が。

 

 緑色で細長いきゅうり。赤く一口サイズのミニトマト。土が被っているじゃがいも。

 何がどうなっているのかわからないけど、森の中で新鮮な野菜たちが見つかった。


 普通野菜って森の中に生えてるのかな……? わかんないけど、明らかにおかしい。 


 食べれるのか気になったので、土を洗い流すため滝がある場所まで来た。


「にゃ〜」


 いつも一緒に行動してるはずの猫ちゃんがいないと思ったら、こんなところで涼しんでた。

 猫吸いしたいけど、今は野菜を洗わないと。

 

「よし」


 見た目はただのきゅうり。試しにぱきっと折ってみてわかったけど、断面も新鮮なきゅうりそのもの。 

  

 見た目ばかり観察していて、怖がっていても仕方ないと思い意を決してきゅうりにかぶりついた。

 

 ボリっという気持ちいい音がし、


「ん〜」


 口の中にきゅうりの味が広がった。

 味噌も何もつけてないけどおいしい。というか、久しぶりに食べる野菜がおいしすぎる。

 

 食べれるものだとわかり、ミニトマトも食べた。


 プチっというトマトだけにある感触に感動しつつも、甘酸っぱい味にまた感動してしまった。


 元の世界じゃ、野菜が嫌いで普段栄養はサプリメントや青汁から取っていたけど、こんなおいしいと感じると野菜を食べないことなんて考えられない。


「よいしょっと」


 いっぱい野菜を取ってきた。

 まだ成長途中の野菜もまだまだあったから、これが全部というわけではない。


 ……にしても、この成果はすごいんじゃない? だって野菜だよ野菜。色んな栄養を取ることができるっていうのもあるけど、やっぱ食べ物を種から植えて自給自足できるようになったっていうのがでかいかな。

 忙しくて家庭菜園は興味あったけど、結局できずに終わったんだよね……。

 まさかこんなところで無念を晴らすことができるなんて思わなかった。


 とは思うものの……。


「家庭菜園なんてまだする余裕ないし、またあとでにしよぉ〜」


 色々考えながらきゅうりをボリボリして、ミニトマトをもぐもぐしているうちに、じゃがいもはどうしようか? という問題に突き当たった。

 

「じゃがいもって生で食べれるのかな?」


 食べられたとしても、しゃりしゃりしてて美味しくなさそう。


 鍋……はない。でも代用できるものがあるかもしれない。


「ほりゃ」


 実はさっき野菜を見つけたとき、地面の中になにか板のようなものがあるということも気づいた。 

 木の根をうまく使って……。


「おぉ」


 掘り出すことができた。……見る感じ、大きな板のように見える。それも木じゃなくて鉄のような板。この板が火を通すのかわからないけど、その可能性はある。


 土だらけの板を洗うと、ところどころ錆びついる場所があった。……この板は鉄製。燃えることなく、火の熱を伝わせることができるいわば鍋になる前の素材だ。


「よ〜し」


 火に当てて想像通りこの板が鉄製だとわかった。

 あとは形を変えて鍋みたいにしたいんだけど、力で曲げるのは当然無理だし……。

 

「こういうときに役に立つのがスキルだよね」


 土の中にあった石を大量に出し、挟んで曲げる。一気に曲がらずスキルで支えていた木が折れたりしちゃったけど、最終的にいびつな桶のような鍋(仮)が出来上がった。


 これで調理方法が増えようやく……。


「色んなものが食べられる!!」

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