第8話 スパルタ猫ちゃん先生



 変顔少女遭難事件によって、いずれこの森の中に他の人間が入る可能性があることがわかった。

 今回来たのが、たまたま敵意のない人で運が良かった。もし敵意のある人だったら最悪の事態もあり得た。だからまず、森の外から人が入って来ないようにする策を考える。


「う〜ん」


 パッと思いつくシンプルで簡単な方法は、外周の木の幹を平べったくして森全体を覆うこと。してもいいけど……逆にそっちのほうが目立って、興味本位で中に入ろうとする輩が出るかもしれない。

 

 ここはちっと面倒だけどアレしかないかな……。


「ほっ」


 森の外周にあるを森の中を見えないように移動させる。そして蔦を創り出し、外から誰か入ってきたら森の中心の大樹に合図を送れるようにする。

 頭の中でいつも大樹のことを考えることになるけど、これで人が入ってきたらすぐ対処できる。


「もしや、天才なのでは?」



 今後のことを考えて、私はもう一つやらなければならないことがある。

 それは……。


「にゃにゃにゃ!」


「ご、ごめんなさい。間違ってました……」


 この世界の言語を習得すること。


 理由としては、ここで初めて出会った少女と喋ってみたいからというのもあるが、一番の理由はこの世界の人達と対話をすることができる唯一の手段だから。

 今後私が望まぬとも、必ずまた別の人はくる。

 言葉を知らなければ、こと異世界において何も始まらない。


 ちなみに今解読しているのは、荷台の残骸に残ってた図鑑。一時は釣りをする時はちょうどいい大きさの椅子として使っていたやつ。って、それは忘れて……椅子代わりになるくらい分厚い図鑑なので、これがすべて読めるようになったら言語習得を意味する。

 

「にゃ〜にゃにゃ!!!!」


 猫ちゃんはまるで私のことを監視しているかのように、机の上にぴしっと座っている。


「ご、ごめんなさい猫ちゃん先生」


「にゃう」


 自分で言ってて今更すぎる謎なんだけど、なんで猫が私言ってる言葉がわかって異世界の言語もわかるんだろう? というか結局この猫ってどこからきたんだ?


「にゃー……」


「はっはい。別に集中がおろそかになったわけじゃないですよ? ただこの文字ってなんかローマ字に似てるなぁ〜って思って……」


「にゃ」

   

 今、絶対嘘を見破られた。

  

 この感じ、もしかしてローマ字も知ってるのな? 

 知れば知るほど謎が深まるばかり……。

 ま、考えてても仕方ないよね。

 可愛いともふもふは正義って言うし、疑問に持つのはや〜めよ。


「にゃ〜うぅー!!」 


「集中します!!」


 

 

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