第6話 彷徨う女の子
私は小さな村の小さなお店の看板娘、エリカ。
いつも村の人達を笑顔で迎え入れて、お母さんのおいしいご飯を持っていってる。
そんな私は最近、お母さん達から「いい加減親離れしなさい……」と圧をかけられている。それもこれも私の年齢はもうすぐ15歳(成人)になるから。この前、村にいた唯一の同年代の女の子も村の外にいってしまったので実は私自身も焦ってる。
このまま今いる村にいたい……とは思わない。私もどこか見知らぬ地で、見知らぬ人と接してみたい。
願望はあるものの、私はスキルを持っていないので外の世界に行ってもやれることがない。仕事がない。
色んなことを理由にして、親に甘えちゃうのどうにかしたいな。
「はぁはぁ……」
暑い。歩きすぎて足が痛い。
私が今向かってるのは、とある森。そこには様々な珍しい食材が眠っているので、親から食材調達しに行かされている。親も私のことを心配してくれて外に出る機会をくれたんだろう。
優しいお父さんとお母さんには頭が上がらない。
「あれ? おかしいな……」
両親の感謝を心のなかでつぶやいていて気づかなかったが、どうやらここはもう目的地みたい。地図にはたしかにここだと書いてあるけど……。
「森じゃない」
周りには緑のかけらもない。
っていうか、森に向かう道にこんなまっさらな荒野はなかったはず。
「ここどこぉ〜」
せっかく両親がつくってくれた外の世界に触れるチャンスだったのに、迷子になっちゃった。
水筒の中に入ってる水ももう僅か。
帰るっていう選択肢もあるけど、それじゃあ期待に答えられない。私は前に進むんだ!!
「ぜぇ〜はぁ〜ぜぇ〜はぁ〜……」
唯一の水はもう空。
喉はカピカピ。周りにはなにもない。
終わった。もう私ここで死んじゃう……。
あれ? なに? あれ?
「ぁ……」
絶対ただの幻。
だって、正面に緑の森があるんだから。
嘘嘘。こんなのなかったもん。嘘だよ。死んじゃうから私の都合のいい幻だよ。
……嘘でも幻でも、どこかに水があって生きられるかもしれない。
まだ私は外の世界がどうなってるのか見てない!
エリカは希望を胸に地面を踏み込んだ。
「ったぁ」
やった着いた。森の中に着いた。なんだ。ちゃんと緑が生い茂る森じゃん。幻じゃないじゃん。そっか。森ってこんな遠かったんだ!
「ははは」
最後の力を振り絞って水がある場所に移動したいんだけど、もう無理。
「ゔっ……」
力が入らない。
ゆっくり瞼が閉じていく。
「……にゃ」
「*&&#%+?」
猫の鳴き声と、聞いたことのない言語を喋る女性の声が聞こえてくる。
エリカの意識は死ぬ前の幻聴はこんな感じなんだ……と、どうでもいいことを考えながら落ちていった。
「はっ!」
木造の天井。首を動かそうとすると痛い。というか、体全身が痛い。
たしか私は森に到着して、それでよくわからない言語を喋った人が来て……。もしかして私、助けてもらったのかな?
「あの〜」
私は今、声しか出せない。
「あの〜!!」
大声を出すと、バタッと勢いよく扉が開かれた。
おそらく私のことを助けてくれたであろう、大人な女性が心配そうな目を向け部屋の中に入ってきた。その後に続き、何故か誇らしげな顔をしている猫も。
「あの……助けていただきありがとうございます」
今できる精一杯のお礼をしたつもりだった。
けど女性はどこか気まずそうな顔をしている。猫ちゃんなんて、暇そうに私の顔の横で毛づくろいを始める始末。
「(&*%&#&*^%=〜〃*」
あ、言語が通じないの忘れてた。
女性は私になにか伝えようとしている。
お礼が足りなかったのだろうか? いや、もしそうだったら怒ってるはず。
この感じは……わかんないや。
ただでさえまともに外の世界に行ったこともないのに、言語の壁なんてどうしようもない。
でも、それでも今この状況で私に敵意がないことを伝えないと!
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