第4話 白いアイツ
「ちょっと……あなたどこから来たの?」
お昼寝はとある生物に鼻をくすぐられ、起こされてしまった。
目の前にはさっきまで興味津々に私の顔の匂いを嗅いでいたのに、毛を逆立たせ威嚇している猫がいる。
そう、猫だ。
森の中に突然猫。
森を創っていた時は猫の気配なんてしなかったので、急に私の前に現れたとした考えられない。
「あのぉ〜」
「シャー!!」
物凄く威嚇されてる。それとも警戒されているのかな?
社畜だった頃、私はよく癒やしを求めて猫ちゃんの動画を見ていた。……もふもふしている本物の猫が目の前にいるなんて信じらんない。
でもすぐ手が届きそうな場所に、純白の衣に包まれルビーのような鮮やかな瞳の猫がいる。
顔、埋めてみたい……。
顔を埋めるためにはまず仲良くならないと!
「ヴー……」
私が見ていた動画では、猫ちゃんは紐のようなものが大好きだったはず。
木の葉っぱを細長く丸めて……よし。これで仲良くなれるはず。
「猫ちゃ〜ん。ほ〜らこれ見て〜」
目の前に細長葉っぱを出し、意識を移動させることができた。猫ちゃんは一歩下がり、耳をぺったんこにして様子をうかがっている。
これから遊ぶような体制には……見えない。
細長葉っぱを左右にゆらゆらと揺らした。ものは違うけど、動き方は動画で見たものそっくり。
これでいける……
「シャー!!」
はずないよね。
一見しなくてもこれはただの細長い葉っぱだからね、うん。
おもちゃ作戦は失敗。
猫ちゃんは依然として私のことを警戒している。
もうどうすればいいの……。もう猫ちゃんと仲良くなるための策は知らない。いや、あるかも? 策と呼べるかわからないけど……やらないことには始まらない!
両手を地面に付き、顔を猫ちゃんと同じ高さに。喉の調子を確かめ、仕上げにお尻をちょっと突き出して準備完了!
「にゃ〜ん」
猫のマネをして敵意がないことをアピールすれば、 仲良くなれるんじゃないかと思ってやってみたんだけど……なんか引かれてる気がする。
「私は悪い猫じゃにゃいにゃ〜ん」
「…………」
やっぱりこの猫ちゃん私のこと見て引いてるよ。何も反応がないから、何故か自信満々だったの恥ずかしいんですけど。
いやでも、さっきまで警戒していたのに何も言わなくなったのでこれは成功なのでは?
「にゃにゃにゃ〜ん。……私花怜っていいます」
「にゃ」
これって返事してくれたのかな?
「もしかして言葉通じてます? こと言葉がわかるのならもう一度「にゃ」って言ってほしいんですけど……」
「にゃ」
おぉーやっぱり通じてるんだ。さすがに二連続で偶然なわけがない。
何故かわからないけど言葉が通じるのなら、仲良くなるなんて簡単なこと。……いや、社畜だった私にそんなことできるかな? 不安になってきた。
「私一人で、猫ちゃんと仲良くなりたくて……」
やばい。言葉が出てこない。
「にゃん」
なんて言ってるのかわからない。
けど、ゆっくり歩み寄ってきて顔に頭をすりすりしてきて不思議と言いたいことがわかった。猫ちゃんは私に「安心して」と温かい言葉を伝えたいんだ。
もう、これじゃあまるで私が子供で猫ちゃんがお母さんみたい。私が望んでるのは逆の立場なんだけど。
立場逆転のためにも立ち上がって、猫ちゃんを抱っこした。
「これからよろしくね?」
「にゃ」
あぁ〜猫ちゃんの毛ってなんてこんな肌触りいいんだろう。肉球の感触も最高。いつまでも抱っこしてたい。
……でも猫ちゃんと仲良くなるために何かわからないけど、大事なものを失った気がする。
「にゃ〜ん……」
猫ちゃんは私のことを慰めるように体に頭をすりすりしてきた。
まぁ、失ったものがあったとしても猫ちゃんと仲良くなれたからいいや。
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