第1話 スキル『森』



「なるほど」

 

 大体手紙の内容はわかった。 

 私は疲れ切った神様の粋な計らいで、第二の人生というものを与えられたっぽい。神様曰く、いわゆるというやつらしい。異世界転移というのがなにかよくわからないけど、別世界に転移させられたということなんだろう。

 神様が私のことを思って異世界に転移させてくれて、嬉しい……と思うべきなのだろうか?

 いや、ここは神様が監視しているだろうし、嬉しがったほうがよさそうだ。


「やったー異世界転移だー」


 私は、異世界転移させてもらいその特典? としてとあるスキルを手に入れた。

 それは『森』。


「おーすご」

 

 今試しにスキルを使ってみて手紙に書いてあったスキルの内容を再確認したが、どうやら森を創り出すことができるスキルだ。

 さっきから地面に生やした木がどんどん成長している。

 もう私一人覆い隠すことができる影ができるほど成長してしまった。

 とりあえず木の成長を止めて、木の幹を背中にして木陰で一息つく。


「すごいなぁ……」


 あまりにも非現実的なことが目の前で起きて、呆然としてしまった。

  

 手紙には、「ここはファンタジー世界で魔法を使う人々が住まう世界だ」と書かれていた。

 多分、これからいろんな非現実的なことを目の前にするんだろう。慣れとかないと心臓がもたなそう。


 花怜は深呼吸しながら、再び手紙に目を通した。


「好きに生きて、か。……なんで神様が私のことなんて助けてくれたんだろう」


 考え始めたらきりがない。

 花怜は一旦考えるのをやめて、目の前のことに集中することにした。

 

「これからどうしよう……」


 飲み物がない。

 食べ物がない。

 このなにもない環境じゃ、生きていくすべがない。

 生きるために人がいる場所まで行くか、と言われたら行きたくない。もう、色々疲れた。

 神様が「好きに生きて」とおっしゃるのなら、私はここで自分らしく自由気ままに一人で生きたい。


「よし」


 ――私はここで自由気ままに生きる。

 方針は決まった。

 決まったらまず行動あるのみ。

 

 一番生きる上で大切なのは飲み物と、食べ物。

 周りを見ればわかる通りここにはなにもない。だから、


「ふんが!!」


 生やした木の成長を再開させた。


 さっきスキルを使って、この成長させる力というのは無限だとわかった。地中に根を這わせて、山にも山の奥にも人間はいないこともわかった。

 だから、遠くにある山のような影まで木の根を這わせて山の水分を移動させる。


 木はみるみるうちに大きくなり、根が山の水分があるところに到達し成長を止めたときには雲の上を突き抜けるほどの大樹になっていた。

 

「あれ〜……いで」


 上を見ていたせいで転んじゃった。


 足元に巨大な根が土の中から飛び出している。気になることは多いけど、とりあえず水分を移動させないと。


 右手で水分を大地に。

 左手で大地から木を、植物を生み出す。

 森にありそうな植物、と言っても何も思いつかないから食べれるようなものを。


 枯れ果てた荒野は、大樹を中心に周りを囲むように木々が並び小さな山ができ、滝ができ、沼ができ。やがて、森と言える大自然が出来上がった。


 巨人がいるみたいに、ちょっと木々の大きさが規格外になっちゃったけど。

 


 

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