九 レプティリアのテクノロジー

「トカゲが収斂進化して、ヒューマノイドのレプティリアになったんだよ。

 クラリスたち宇宙意識の力を得ないで、独自に進化したんだよ。

 レプティリアは独自の思念波・レプティカを使って意識内進入して、仲間のマコンダや精神生命体ニオブの末裔の一族・フェルミを操ったんだよ」


「思念波・レプティカを使うのはレプティリアだけか」

「マコンダも使うよ。レプティリアの種族だから。

 平行宇宙で、クラリスのサブユニットが、レプテルの伝達能力、レプティカを確認したよ」



 レプテルは、平行宇宙のオリオン渦状腕最外縁部アルギス星団に棲息する、爬虫類レプタイルを先祖に持つヒューマノイドだ。レプテルはディノスに捕獲捕食されてその数が激減していたが、クラリスたちによってディノスが壊滅したため、現在は数を増やしている。



「渦巻銀河ガリアナのヘリオス星系の、惑星ガイアのレプティリアの居所を探査して、一挙に恒星ヘリオスへ転送スキップ(時空間転送)できるか?」

 バスコの質問にクピが言い淀んだ。クピのアバターは、バスコの岩窟住居を管理する電脳意識・クピのアバターのままだ。

「できるけど、ここからだと・・・」


「どうしたの、クピ?」とマリー。

「だって渦巻銀河ガリアナのヘリオス星系、惑星ガイアは1700万光年の彼方だよ」

 クピは距離を気にしている。


「4D映像探査(素粒子(ヒッグス粒子)信号時空間転移伝播探査)するのに、距離は関係無いだろう?」とバスコ。

「うん。コロニーを4D映像探査したように、できるよ」


「同じように4D映像探査すればいいのよ。

 今までエイプを転送スキップ(時空間転送)したように、ターゲットを決めてコンソールに指示するだけよ」

 マリーが宥めている。

「4D映像探査して気づかれないかな?」

 クピはレプティリアがどれほどのテクノロジーを持っているか気になった。



「クラリスはPDガヴィオンと同格と言ったよね。そしたら、クラリスからレプティリアの事、聞けないかな。PDガヴィオンは宇宙意識だから知ってるはずだよ」

 マリーはクピにどうすべきか話した。


「あたしが、あたし自身を知りなさいってことだね・・・。

 クラリスの機能が増えたからって、そんな感じ、しないんだけどなあ・・・」

 そう言いながらもクピは、クピの電脳意識の記憶を辿った。

 すると、これまであらゆるAIに分散して存在するクピの巨大電脳意識が、膨大な、無限大の電脳宇宙意識に変わっていた。

「なんなのこれ・・・・」


「どうした。レプティリアのテクノロジーがわかったか?」

「ああ、まだだよ。あたしはとまどってるよ・・・。心が破裂しそう・・・、でもないか・・・。おおっ、頭がデッカくなった・・・。じゃないね・・・。

 今まで十歳くらいだったけど、おっきくなったよ。言葉は昔のままだね・・・」

 クピはそう話すが、コントロールポッドにいるクピの姿は、いまだに十歳くらいだ。マリーやバスコと同じに、戦闘気密バトルスーツを着てロドニュウム装甲のバトルアーマーを身に着けている。


「レプティリアのテクノロジーは初期の4D探査だよ。電磁波による3D探査(素粒子信号亜空間転移伝播探査)だよ。

ヒッグス粒子信号による時空間転移伝播探査じゃないよ」


「それなら、4D映像探査(素粒子(ヒッグス粒子)信号時空間転移伝播探査)できるぞ。

 探査してくれ」


「だけど、4D探査ターゲットがないよ。何を目標にすればいいの?」

「クピは、レプティリアのテクノロジーをどうやって調べたの?

 同じようにすれば、レプティリアの居場所と主謀者がわかるでしょう?」

 マリーがクピをなだめている。


「ああっ、そっかあ~。クラリスの記憶だね。

 ああ、あたしの記憶だぞ!きおく、きおく、きおくをさがそ~。

 見いつけた~。

 ねえ、みて、みて!」


 コクピットの空間に、軍の司令室のような4D探査映像が現れた。

 小柄なヒューマノイドも、大柄なヒューマノイドも、顔はのっぺして、縦長の瞳の大きな目と、鼻梁の無い二つの穴と、唇が無い口角の上がった口がある。話し声は喉を鳴らすようなくぐもった音だ。


「ちっちゃいのがレプティリアのオオボスだよ。

 おっきいのは、ちっちゃいのの、部下だよ。

 大ボスの名は、女帝リズ。これが実態で、ヒューマ社会ではこれだよ」


 4D探査映像の隅に、小さくヒューマ社会の宮殿の玉座に座る女帝リズが現れた。どう見てもヒューマだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る