八 惑星アルギランのエイプの駆除

 マリーとバスコはしばし呆然とした。

「ねえ、他のコロニーも探査したよ。エイプがヒューマに紛れて、コロニーに入ってるよ。転送スキップ(時空間転送)するね」

 クピが二人に言った。


「ああ、してくれ」

クピは4D映像探査した他のコロニーのエイプを、つぎつぎに恒星アルギリウスへ転送スキップ(時空間転送)した。



 コロニーからエイプが消えて、コロニー内が大騒ぎになった。

「クピ。4D探査で意識記憶管理できないか?」

「う~んとね・・・できるよ。消えたエイプは最初からいなかったと記憶させる・・・。

 はい。完了したよ~」


「了解。こんなに早く駆除できるなら、私たちがここ惑星アギランに移動しなくてすんだね」

 マリーはクピを見つめた。


「でもね、クラリスが現れて教えてくれたから、イロイロできたんだよ~!

 今までは、想像できても、実行する方法が思いつかなかったけど、今度は、あたしの中に、実行方法があるのがわかったよ!

 他に、何があるのかなあ~!」

 年齢は十歳くらいだ。バスコの岩窟住居を管理する電脳意識のクピは宝物を見つけたようにはしゃいでいる。


「それなら、アイネクを壊滅したヒッグス粒子弾を作れるか?」

「作れるよ。

 だけど、それを作ると、バスコが怠けるよ。

 何もしなくなって、マリーに嫌われちゃうよ」


「あら、そんなことないよ。ヒッグス粒子弾はターゲットを選択して消滅するから、手間が省けるだけよ」

 マリーは思っていることをそのまま話した。


「だけど、あたしがイロイロ学ぶ機会がなくなるよ~。

 マリーもバスコも考えなくなるんだよ~。

 自動調理器があると、料理を考えなくなるから、毎回、同じ味だよね!

 おまけに、調理器がなくなったら、料理を作れないよ。

 以前、バスコ、まずいオムレツ作ったんだよ!」

 話がヒッグス粒子弾から自動調理器へ脱線している。


「それを言うな。だが、いろいろの味を楽しめたぞ!」

 バスコが調理の腕前を気にしはじめた。


「それで、ヒッグス粒子弾を使わないなら、今後、ここに侵入するエイプをどうやって駆除するの?」

 マリーが話を元に戻した。

 こいつら、放っておいたら、いつまでも下らないことを言い続けるぞ。いったい、私がコンラッドの岩窟住居に来るまで、どういう生活をしてたんだ・・・。

 マリーは二人の話に呆れた。


 バスコの岩窟住居があるコンラッドは、コンラッドシティにある。

 コンラッドシティは、リナル銀河カオス星雲リオネル星系(恒星リオネル)惑星イオスのコンブロ大陸コンラッド州の、ドラゴ渓谷沿いの大きな市だ。


「考えてあるよ。ここ惑星アルギランに繋がってる惑星ガイアからのワームホールを、全て恒星ヘリオスか恒星アルギリウスに繋げるの。そしたら、エイプはここには来れないよ。

 ワームホールを使えないとわかったら、エイプを送りこむ奴らは他の方法を考えるだろうけど、その時、対策を練ればいいよ」


 そう言うクピにバスコに訊く。

「エイプを送りこんだのはヘリオス星系の惑星ガイアのレプティリアだ。

 奴らを討たねば、エイプの侵略は続く。

 マリーとクピの考えを聞かせてくれ」


「もう一度、最初のミッションを指示したトニオの4D映像通信を確認するね・・・」

 クピは、記録してあるトニオ・バルデス監視監督官の4D映像通信をコクピットに再表示した



「テレス連邦共和国軍警察総司令官マリー・ゴールド大佐からの情報だ。

 マリー・ゴールド大佐の精神共棲体である、オリオン国家連邦共和国代表の指揮官・総統Jから、マリー・ゴールド大佐を通じて、

『惑星ガイアの害獣エイプが逃げた。生死と形態の有無に関わらず捕獲して欲しい』

 と要請があった。

 エイプは惑星ガイア支配を企む異星体レプティリアの傀儡だった。

 レプティリアは、精神生命体ニオブの末裔の一族・フェルミに意識内進入してフェルミを支配し、エイプが惑星ガイアを支配するよう、フェルミをエイプに精神共棲させた。

 だが、エイプの好戦的かつ獰猛な凶暴性は暴走し、惑星ガイアを破壊しかねなくなった。

 そこでレプティリアは、エイプに意識内進入したままのフェルミを再利用するため、エイプを惑星移住用戦艦に乗せて放った。30日前の事だ・・・。

 以上の要請により、今回の指示は、エイプの壊滅だ」



 再表示されたトニオ・バルデス監視監督官の4D映像通信を見て、バスコが言う。

「レプティリアって何だ?

 こいつを討たねば、他の惑星がエイプの餌食になるぞ?」

「やっとまともな会話になって来たね」とマリー。


「うんとねえ。レプティリアはね、収斂進化したトカゲだよ!」

「何だ、それ?」

 マリーとバスコが同時に聞き返した。

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