三 尋問

「マリー。アダム・ローレンス中将を尋問する」

 3D映像コンバット通信回線で、コンバット・テスログランキャンプの総司令官ジム・ヤング中佐が伝えてきた。彼はテスログランキャンプの公開尋問室の隣室にあるコントロールポッドにいる。


 ジム・ヤング中佐の隣りに、アダム・ローレンス中将3D映像が現れた。ローレンス中将は、公開尋問室の椅子に拘束されている。ローレンス中将の近くに彼の透過3D映像が現れて、頭部の脳内インプラントが局所電磁パルスで破壊されている。

 公開尋問室の隣室にいるジム・ヤング中佐は、アダム・ローレンス中将のインプラントが機能を失うと、3D映像のアダム・ローレンス中将に尋問を開始した。



 公開尋問室のアダム・ローレンス中将の横に、3D映像のジム・ヤング中佐が現れて尋問した。

「スキップリングで、何を何処へ転送した?」

「・・・・」

 アダム・ローレンス中将は黙秘している。


「完全に破壊してくれ、マリー。第二インプラントの起動を頼む・・・」

 公開尋問室の隣室から、ジム・ヤング中佐がマリーに伝えた。

「了解した。クラリス、第二インプラントの起動だ」

「了解」


 マリーの指示とともに、テスログランキャンプの公開尋問室の隣室に現れているアダム・ローレンス中将の透過3D映像から脳内インプラントが消失した。ローレンス中将の透過3D映像頭部に、もう一つのインプラントが発光して起動した。

 第二インプラントの起動を確認したジム・ヤング中佐は、クラリスに指示した。

「クラリス。スキップリングを使って何を何処へスキップしたか尋問してくれ」

「了解した・・・・」


「スキップリングを使って、何を何処へスキップした?答えろ」

 クラリスが第二インプラントを通じてアダム・ローレンス中将を尋問している。


 公開尋問室の3D映像で、アダム・ローレンス中将が話しはじめた。

「オルソン・チャンは退役軍人として、生物研究所でウィルス・カプコンドリアの管理をしていた。カプラムの彼は特異体質で抗体を持っていたから、彼自身が保菌者であっても、発症することも、他へ感染させることも無かった・・・・。

 彼をスキップすれば、抗体が破壊して、感染が拡大するのはわかっていた。

 惑星ユングは我々カプラムの物だ。ウィルス・カプコンドリアが蔓延した惑星ユングで生息できるのはカプラムのニュカムの能力を持つ我々だけだ。

 我々は、ウィスカー・オラール元帥の志を遂げる・・・」

アダム・ローレンス中将と彼の部下たちも、少なからずニュカムの能力を持つカプラムのレプリカンで、テレス帝国軍の残党だった。


「ウィルス・カプコンドリアをどこへスキップした?」

公開尋問室でアダム・ローレンス中将が答える。

「カプコンドリアはオルソン・チャンがアシュロンへ持ちこんだ。

 テスログラン基地に、カプコンドリアは無い」


「現在、ウィルス・カプコンドリアは、何処に存在している?」とクラリス。

「私の知る限り、アシュロンを除けば、カプコンドリアは何処にも無い。皆無だ」

 公開尋問室のアダム・ローレンス中将はそう答えて口を閉ざした。

 第二インプラントを通じたクラリスの尋問に、アダム・ローレンス中将はウソはつけない。



「ジム・ヤング中佐。これで、拘束した者たちを尋問する必要はない・・・」

 マリーは、3D映像に現れているジム・ヤング中佐に伝えた。

「わかった。

 キム。拘束者全員を消去する。後の処理を実行してくれ」

 ジム・ヤング中佐は、現場指揮官キム・ロジン少佐に命じた。 

「了解した」

「クラリス。消去してくれ」とジム・ヤング中佐。

「わかりました」

 クラリスが第二インプラントを起動して、拘束者全員を処理した。

 まもなく、3D映像に現れた公開尋問室の待機室で、拘束者全員が目を閉じて動かなくなった。現場指揮官キム・ロジン少佐は、その場にいるコンバットに拘束者全員の処理を指示した。



 テレス帝国軍はアーマー(テレス連邦共和国軍装甲武装兵士)の指揮管理に脳内インプラントを使っていた。そして、アーマーの処理用に第二インプラントを装備させていた。

 第二インプラントの存在を知っているのは、テレス連邦共和国軍警察総司令官マリー・ゴールド大佐と、テスロン共和国、カプラム共和国、ヨルハン共和国の各国に駐留するテレス連邦共和国軍警察重武装戦闘員・コンバットの総司令官だけである。


 テレス帝国軍は壊滅した。オリジナルの兵士も遺伝子情報も全て消去した。それなのに、なぜ兵士のレプリカンが存在している?なぜウィスカー・オラールの考えを知っている?マリーは理由がわからなかった。


(二章 バイオテロ 了)

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