二 テスログラン軍事基地

 テレス連邦共和国軍テスログラン基地は、惑星テスロンのテスロン共和国首都テスログランの西百キロメートルにある。

 テスログラン基地にはテレス連邦共和国軍のテスロン共和国本部とテスログラン軍事基地と、テレス連邦共和国軍警察重武装戦闘員・コンバットのテスログランキャンプがあり、キャンプ内に、テスロン共和国に駐留するテレス連邦共和国軍警察重武装戦闘員・コンバットの総司令部がある。

 テスロン共和国の治安維持は、マリー・ゴールド大佐の指揮下だ。



 グリーゼ歴、二八一六年、九月二十日、一二一〇時。

 オリオン渦状腕外縁部、テレス星団、テレス星系、惑星テスロン。

 テスロン共和国、首都テスログラン、テレス連邦共和国軍警察テスログランキャンプ。



「マリー。これから、テスログラン軍事基地に突入する」

 3D映像コンバット通信回線で、テレス連邦共和国軍警察重武装戦闘員・コンバットのテスログランキャンプ総司令官ジム・ヤング中佐が、テレス連邦共和国軍テスログラン基地内にある、テスログラン軍事基地に突入する状況を伝えてきた。



 テスログランキャンプ現場指揮官のキム・ロジン少佐が率いるコンバットは、圧倒的勢力で迅速にテスログラン軍事基地内の生物兵器研究所と生物研究所を制圧し、施設内の所員と兵士を拘束している。施設内に惑星カプラムに生息していた原種ウィルス・カプコンドリアは無い。

 テレス連邦共和国軍テスログラン基地の総司令官、アダム・ローレンス中将は、基地の福総司令官マイケル・エンゲレフ少将によって拘束され、軍事基地内の生物兵器研究所に連行された。


「ジム、何事かね?見てのとおり、生物兵器に関する管理は万全だよ。

 ここにウィルス・カプコンドリアなんか無いよ」

 基地総司令官アダム・ローレンス中将は憤慨した顔で、尋問のために生物研究所に同席している基地副総司令官マイケル・エンゲレフ少将と3D映像のコンバットテスログランキャンプ総司令官ジム・ヤング中佐に詰めよった。


「ここにあるのはなんだ?この装置はなんと呼ぶんだ?」

 ジム・ヤング中佐は、生物研究所の密閉隔離された細菌管理培養施設内にある装置を、耐衝撃ガラスの窓越しに、アダム・ローレンス中将に示した。

 生物研究所の密閉隔離された細菌管理培養施設内に、水平の台座に設置されている青白い光で覆われた直径五メートルのリングが見える。その上には〇.五メートルおきに七個の加速リングが連なり、リング間が青白い光で覆われている。

「それは・・・」

 アダム・ローレンス中将は言葉を無くしてうなだれた。


「細菌管理培養施設にスキップリングが必要か?」

「・・・」

 ジム・ヤング中佐の質問に、アダム・ローレンス中将は黙秘している。

「キム。拘束者全員を、テスログランキャンプの公開尋問室へ連行しろ。

 スキップリングのコントロールと、何処へ何をスキップしたかを調べろ」

「了解」

 キャンプ総司令官ジム・ヤング中佐は、現場指揮官キム・ロジン少佐に命じると、さらに3D映像コンバット通信回線を通じて緊急指示した。

「テスログランキャンプの全コンバットに告ぐ!

 テスログラン軍事基地からの攻撃に備え、厳戒態勢をとれ!

 テスログラン軍事基地からの攻撃に備え、厳戒態勢をとれ!」



 スキップリングを調べるコンバットを残して、キム・ロジン少佐たちコンバットが、拘束した者たちを連行すると、テレス連邦共和国軍テスログラン基地副総司令官マイケル・エンゲレフ少将が、

「ジム・ヤング総司令官。

 私が指揮するテレス連邦共和国軍テスログラン基地は、テレス連邦共和国軍警察(テレス連邦共和国軍警察重武装戦闘員・コンバット)テスログランキャンプの指揮下です。ご安心ください」

 と言って現場から去った。

 

 ジム・ヤング中佐はマリーに告げた。

「マリー。ここから生物兵器をスキップしたらしい。

 スキップリングは独自AIで管理されてる。

 被害は惑星ユングだけではない。テレス星団全域の脅威だ。

 スキップ先が判明したら、随時連絡する」

「こっちも探査する」

 マリーが返答して指示する。

「クラリス。生物研究所のスキップリングをコントロールしているAIを調べてくれ」

「了解」とクラリス。



 ジム・ヤング中佐がマリーに訊いた。

「ダナル基地と言い、テスログラン基地と言い、基地総司令官の中将がテレス帝国軍の残党とはどういうことだと思う?」

「クラッシュの生成と密売に絡む事件で、ランド少佐たちの潜伏先と、フォクスレイ中将の連絡先は、波動残渣が消滅していたため判別できなかった。

 オルソン・チャンがテスログラン軍事基地からスキップした波動残渣は残ってた。その他の波動残渣は皆無だ。

 ここまでは、クラリスがアントニオ評議委員長へ報告したから、ジムも訊いているはずだ」とマリー。


「ああ、聞いてる」

「フォクスレイ中将の尋問記録も見ただろう?」とマリー。

「見た・・・」

「フォクスレイ中将は、なぜ、消去したオラール元帥の考えを知っていた?

 エミリーは、なぜ、ウィルスが惑星カプラムに生息していた原種と推測した?

ジムはどう考える?」

「わからん。どっちも即断できん。いずれにしろ、こっちで判明した事は随時伝える。そちらからも判明した事を知らせてくれ」とジム・ヤング中佐。

「わかった。クラリスを通じて随時伝える。それではまた・・・」

 マリーは3D映像通信回線を閉じた。



 ジム・ヤング中佐の3D映像コンバット通信回線が閉じると、カールが言った。

「ずさんだ。あまりにずさんすぎる。クラッシュの件とカプコンドリアのテロ。首謀者は手掛りを残して消滅されるか、逮捕されてる。これは何を示している?」


「誰かが、テレス帝国軍の残党を消滅するように仕向けたと言うのか?」

 マリーは、誰が動いているか主要人物を考えた。

 テレス帝国軍に保管されていた遺伝子と意識と記憶のバックアップは全て消去した。

 オラールに関しても、オラールがテレス帝国軍警察の総司令官だった当時のものから、テレス帝国軍総司令官ウィスカー・オラール元帥としてテレス帝国軍とテレス帝国軍警察を指揮した当時のものまで、全て消去した。

 オラール指揮下のテレス帝国軍とテレス帝国軍警察は壊滅したはずなのに、レプリカンが残っていた・・・・。この事を知っているのは誰だろう・・・・。

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