五 新情報屋
数日後。
マリーはアシュロン郊外の、故ハリー・スピッツの自宅応接間にいた。
「ハリーはいい奴だった。これをハリーから頼まれた。そして、これは私からだ・・・」
マリーはクレジット五十枚が入ったケースを二つ、ダイニングのテーブルに置いて母親の元へ滑らせた。
「いつか、こんな日が来ると思って覚悟はしてたわ。
アンタの仕事をするようになって、安心してたのよ。でも、やっぱり、過去の繋がりは切れなかった・・・」
そう言いながら、母親はクレジットを取って、首にかけた小さなポシェットに入れ、それを胸の谷間に押し込んだ。
「すまない。私のせいだ。バトルスーツを装備してやればよかった・・・」
「それはダメよ。どこから手に入れたか、すぐにわかってしまうわ」
ハリーの母親は、もっと早くハリーが殺されただろうと言った。
「そうだな・・・」
「ねえ、マリー。マイケルもいるから、使ってね」
ハリーの母親は、ソファーに座っているハリーの弟マイケルを目配せした。
マイケルはマリーを見て、握り拳の親指をあげて見せた。
マイケルのまわりで、男女五人の子どもたちが、マイケルと同じ仕草をしている。
「その時が来たら、みんなの力を借りるよ・・・」
マリーは子どもたちに向って、握り拳の親指をあげて見せた。
(一章 現場復帰 了)
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