九 議会決定

 ガイア歴、二〇五九年、七月。

 オリオン渦状腕、ヘリオス星系、惑星ガイア、バンコク、地球国家連邦共和国議事堂、共和国議会。



 ボリス・カイト評議委員長は、地球国家連邦共和国議事堂の議会演壇に立って、3D映像の議員と評議委員を見つめた。


「すでに、皆の手元へ、ケプラー博士とミラー博士のレポートが送られている。

 私は、博士たちの見解に賛同する。このまま人類が地球に留まっても、人類が生き延びるチャンスは近い将来なくなるだろう。

 ケプラー博士が述べるように、座して死を待つより、たとえわずかであろうと、可能性ある方向へ進みたい。

 私は、これから進むべき方向が希望ある方向だなどと曖昧な表現で未来を示すつもりはない。あるのは、我々を騙して食糧にしようと考える異星体の惑星に侵攻し、異星体を殲滅して新天地を切り開くことだけだ。

 私も、ケプラー博士とミラー博士と同じに考えている。

 皆の意見を聞きたい」


「我々は賛成する!」

「他惑星の種族を食糧にする異星体を許すな!」

 議員たちは全会一致でボリス・カイト評議委員長に賛同した。


 そして、ケプラーとモリス・ミラーの提案、

『人類と動植物を搭載したノアの方舟に、強力なエネルギー転換機を装備した強力な軍隊を同行させる』

 の実行を決定し、『惑星移住計画』は、

『ノア計画』

 と名を変えて実践段階に入った。


 総責任者は、もちろん、惑星移住計画の提案者のケプラーとモリス・ミラーである。

 惑星移住艦隊に随行して惑星キトラに侵攻する地球国家連邦共和国軍は、地球国家連邦共和国宇宙防衛軍アポロン艦隊である。

 総司令官にカスミ・シゲル宇宙防衛軍中将が就任した。


 地球国家連邦共和国議会は、方舟となる惑星移住計画用球体型宇宙戦艦と、強力な巨大攻撃用球体型宇宙戦艦を建造するため、『ノア計画』の総責任者とアポロン艦隊総司令官に、惑星移住計画用球体型宇宙戦艦と巨大攻撃用球体型宇宙戦艦の設計原案提出を求めた。そして、提出された設計原案を迅速に建設へ移行すべく、共和国政府各省に万全の対策を講ずるよう指示した。


『ノア計画』が成功すれば、『惑星移住計画』が本格化する。

 地球国家連邦共和国議会は『ノア計画』に期待していたにも関わらず、国家プロジェクトの責任と実行をケプラーとモリス・ミラーとカスミ・シゲル総司令官に、ふたたび丸投げした。

 まったく、あきれた共和国議会である。

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