五十 研究所陥没
二〇二五年、十月十九日、日曜、十四時過ぎ。
ロータージェットステルス戦闘爆撃ヴィークルの指令ディスプレイに、東亜重工M工場、宇宙航空研究所内の側面透視映像が現れた。情報収集衛星が銃器探査、身体放射波探査を開始している。
ディスプレイの隅に、情報衛星センター所長が現われた。
「研究所側面探査が可能になりました!研究所が陥没してます」
ステルスヴィークル編隊は、東亜重工M工場へむけて超音速飛行中だ。
「衛星単独の探査波エコーか?」
「いいえ、低俯角の衛星三機の探査波合成です。研究所真下から巨大チェレンコフ光が現れ、研究所の探査が可能になりました。
衛星探査では、研究所内に武器反応はありますが、弾頭と弾丸装填とエネルギー充填反応はありません。ミサイル弾頭と開発されてるはずの高性能爆薬は皆無です。身体放射波探査に反応がありません・・・」
身体放射波探査に反応が無いなどありえない。それに巨大チェレンコフ放射はスキップ現象だ。亜空間航行する艦がここにあったなんて考えられない・・・。
そう思っている所長の思考を本間は感じた。
「おそらく君の考えるとおりだ。研究所の真下に巨大物体があり、地下からスキップした。その結果、衛星の探査波を妨害するシールドが消えた」
「スキップは私の専門外ですから」
「そうだな・・・。
所長。身体放射波探査、銃器探査と発光と、例の発信探査を続行してくれ」
「はい」
指令ディスプレイから所長が消えた。
本間は指令ディスプレイを通じ、各ヴィークルに指示した。
「各機に告ぐ。
機長とクルーは、各機の透視探査映像、銃器探査映像、身体放射波探査映像を衛星情報と合成して隊員に送れ。隊員からの通信を確保しろ。
隊員は、各自装備による探査映像に、ヴィークルからの探査映像を合成させろ。
工場は電磁波がシールドされている。行動と通信の可能域は互いの視覚認識域だ。チーム行動してくれ。
高レベルの身体放射波と銃器反応の一致は、奴らからの攻撃だ。女子供でもただちに攻撃し殲滅しろ」
ステルスヴィークル編隊が、東亜重工M工場の離着陸ポートに着陸した。
本間は指令ディスプレイに向かって言った。
「臨戦態勢で捜査捜査開始だ!行け!」
「了解!全員、行動開始!」
バトルスーツとフル装備のアーマーで身を包んだ佐伯は隊員を率い、指令機のロータージェットステルス戦闘爆撃ヴィークルからポートに降り立った。
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