二十四 精神同化

 二〇二五年、九月十七日、水曜、理惠の休日。

 N市W区の自宅で、省吾は『未来のあるべき世界』の前に、時系列を追って、

『立場をわきまえぬ稚拙な意識の人物は、政府組織から排除する』

『ロシア、中国、合衆国を国連安全保障理事会から排除し、民主国家による新理事会を設立する』

 と二つの内容に関する文章を日記を書いた。省吾の性格上、順序を変えて日記を書くわけにはゆかなかっただけで、マリオンに言われたのではなかった。


 新体制の閣僚が、失言から相次いで三人辞任した。辞任した者たちは大臣になって、自分が官僚の頂点に立ったと思っている。十四年前の震災後と同じだ。やはり、議員たちの考えは変っていない。立場をわきまえぬ稚拙な意識は、閣僚どころか議員としてもふさわしくない。排除すべきだ・・・。

 同様な事は国連にも言える。国連安全保障理事会の常任理事国内でテロや民主化運動が絶えないのは、理事国の政権が民主的で無い事を物語っている。第二次大戦の戦勝国が平和維持の下に結束した理事会だったが、戦勝国の経済が巨大化するにつれ、様々な利権を得るために他国と軋轢が生じ、それらを握り潰して世界を牛耳ろうとした結果、テロや民主化運動が発生した・・・。

 今となっては、国連安全保障理事会は、こうした常任理事国の横暴に対応できなくなっている。国連安全保障理事会の存在意義が無い。常任理事国のロシア、中国、合衆国の横暴は世界を破滅へ導く元凶だ。ただちに新理事会を設立して、現在の常任理事国を速やかに民主国家にしなければならない。民主国家ではない第二次世界大戦の戦勝国が、いつまでも世界の安全保障を牛耳る時代では無い・・・。


「これ、どう思う?」

 午前中の仕事場で、省吾はキャスター付きの椅子ごと、理恵をタブレットパソコンの前に引きよせた。理恵の熱さと香りがいつもより強い。


 仕事場の北西側窓辺に仕事机がある。幅一.五メートル、長さ六メートルの厚板を、部屋の端から端まで渡した代物だ。

 いっしょに暮した当初、理恵は元妻から頼まれたように、元妻が使っていた寝室と仕事部屋の改装が済み次第、そちらを使う予定で、省吾の寝室と省吾の机を使っていた。寝室と仕事部屋の改装が始まると、一人で居るより省吾と居る方がおちつくのがわかり、それ以来、省吾の寝室を使って、省吾の仕事場の机の右半分を使っている。

 元妻は何かする時、同じ空間に省吾が居るのを嫌ったが、理恵は省吾が同じ空間に居るだけでおちついてのびのびと過ごせた。触れたい時に省吾に触れ、また自分の椅子に戻った。それだけで理恵は安定している。


「後ろへ持ってきたんだね」

 理恵はディスプレイを見て、書かれた『未来のあるべき世界』の順序に気づいた。

「未来までの内容が必要だと思うんだ」

「ちょっと待ってね。すぐ読むから・・・」

 理恵は、書き上げた日記を読んでいる。


 低いエンジン音が聞えたように思い、省吾は仕事場から外を見た。二軒先の民家で、造園業者らしき男二人が庭の木蓮をチェーンソーで切っている。窓ガラスは電圧偏光してあり、外から中は見えない。

 省吾は、住人の老婦が

「木蓮が大きくなりすぎて、自分で手入れできなくなったから切る」

 と話していたのを思いだした。

 それ以前にも老婦は、

「実がならないから切る」

 と、それまで育てたキウイとプルーンの木を切っていた。


 老夫婦と娘夫婦が同居している家庭だ。庭木の手入れや庭の手入れは家族ができるのに、自分で手入れできないから庭木は切る、と言うのだ。これが自分の育てた子供たちや動物ならどうするだろう。

 娘夫婦は庭木に興味がなく、

「庭木が目ざわりだから切れと言ってる」

 と老婦から聞いた。その娘も、飼っていた犬が死んため数年間嘆いていた、と老婦から聞いた。

 手入れが面倒臭くなった庭木は切る。実がならなければ、長年育てた樹木も切る・・・。

 所有者の横暴、老いの道連れ・・・。この地域は、人も植物も育てられない土地柄なのだろうか・・・。省吾はそう思った。


「そうだね。ネクローシスへ進むことないよ」

「ネクローシスって、何?」

 省吾はタブレットパソコンに視線を戻して訊いた。

「ネクローシスは壊死よ。老いたのね。あんな事すると、自分の寿命も縮むのに・・・」

 国家を人にみなしたおもしろい表現だ・・・。そう思って理恵を見ると、理恵も二軒先の、木蓮を切る庭を見ていた。省吾と同じに、老夫婦について考えている。


 省吾に気づき、理恵がタブレットパソコンに視線を戻した。

「国家連邦へのシナリオだね・・・。確かに大国の支配欲が、世界の環境と平和と協調を乱してる。テロ集団と呼ばれる者たちはそれを主張してる。

 他の先進国は、大国の横暴を知りながら大国の脅威を恐れて、大国を批判しない・・・」


「ちょっと、待って・・・」

 いつもの理恵と違う・・・。省吾はタブレットパソコンのディスプレイを見ながらマリオンを思った。

『マリオンか?』 

『興味深いので理恵の意識に現れすぎた。今後は意識下の精神上層部から接触するぞ』

 省吾の意識にマリオンの声が響いた。

『マリオン。理恵の精神に完全同化できないか?その方が安心だろう?』

『省吾と暮す以前の理恵はプロミドンに守られていなかった。私が理惠に一時的精神同化して私が理恵と話したのは、思念波を使うとクラリックに気づかれるからだ。

 精神共棲して話せば、思念波は不要だが、クラリックは理恵の中の私の精神エネルギーに気づいて攻撃し、理恵の精神は破壊されて意識が消滅する可能性があった。

 精神はパソコンで言うならオペレーティングシステムで、意識はアプリケーションソフトやデーターと言うべきか・・・。例として適切でないな・・・。

 人間の己、思い、心、霊、魂の、己と思いが意識領域で、心と霊と魂が精神領域か・・・』


『今はプロミドンが守ってる。理恵と精神共棲した方がいい。

 マリオンは理恵に同調しやすいのだろう?』と省吾。

『そうだ。省吾と同じに、理惠の精神は優れている。理恵が精神的ダメージを受けないよう、私は理恵の想像上の分身の立場で、理恵の中に防御エネルギーフィールドを構成し、ガードしてきた・・・。これからも続けたい・・・』


『今すぐ、理恵と話せ。マリオンが実在するのを説明しろ。理恵の精神的ダメージが薄らぐ。理恵が許可したら、精神共棲して理恵とともに現われればいい。

 それとも、今までどおり、烏に変身したまま理恵を通じて俺と話すか?』

『わかった。一挙に説明すると理恵が困惑する。精神同化し、少しずつ納得させ、精神共棲するよ』


『マリオンは突然、俺の前に現れたじゃないかぞ?今さら何を説明する?』

『省吾は、以前から私たちを知っていた』

『「オーヴ」に書いた精神エネルギー体はSFだ。想像の産物だぞ』


『想像ではない。お前の精神の源泉は、我々と同じ精神生命体のニオブだ。ニオブはお前が書いた「オーヴ」の精神エネルギー体だ。精神の根底で私を知っていたからだぞ』

『俺が書いたのは精神エネルギー体だ。精神生命体じゃない』

『意味はどちらも同じだ』


『俺にも精神生命体が精神共棲してるのか?』

『直接ではない。お前の祖先に精神共棲していた。知らなかったか?』

『知らなかった。

 今は理恵が先だ。俺が理恵に話す。説明不足なら補足してくれ。

 それと、その話し方は何とかならないか?理恵に精神同化するんだ。もっと理恵らしくして欲しい。そうでないと、マリオンを女に思えなくなるぞ』


『了解、気をつけるぞ』

『その言い方は、気をつけてないじゃないか』

『わかった。気をつけるよ』

 不満気なマリオンの顔が省吾の脳裏に現れた。省吾は笑いそうになった


「どうしたの?何かおかしい?」

 理恵が大きな眼で省吾を見ている。

「ちょっと考えてたんだ・・・。

 驚かないでくれ。マリオンは実在するよ」

 省吾は穏やかに理恵を見た。


 理恵が大きな眼をさらに大きく見開いた。

「どうしてマリオンを知ってるの?マリオンは私が心に創った女の子だよ」

「マリオンは実在するんだ・・・。

 俺が理恵に会う前から、マリオンは時々俺の近くに現れた・・・。

 たった今、マリオンが、理恵を通して俺に話してる、と教えてくれた。

 理恵に少しずつマリオンの存在を説明したい、と言ってる」

「・・・・」

 急に話が変って理恵は困惑している。


 省吾は椅子ごと理恵を抱きしめた。

 理恵は省吾の首筋に顔を伏せた。理恵の放つ熱さと芳しい香りはそのまま変らない。

「大丈夫か?」 

「私はいいよ。マリオンの説明を待つから。・・・でも、これで安心したよ」

「どうして?」

「マリオンは、小さい時から私の心に現われた、私の分身みたいな存在だった。

 私はマリオンと話す時、周りに無頓着になってた。他人から、理恵は現実逃避してる、と言われるから、マリオンと話してる事を誰にも言わないよう、マリオンに口止めされてた・・・。

 ずっと私は、マリオンは私が心に創り上げた架空の女の子だと思ってた。

 でもマリオンが実在するなら、これで私は、現実逃避してたんじゃないって自覚できる・・・」

 理恵は顔を上げて省吾を見つめた。

「マリオンが現れても、私は変わらないよ。なぜって、マリオンが現れた状態で何度も先生と話してるし、愛しあってるから」


「最初に会った時から?」

「怒らないでね。マリオンが先生の事を教えてくれなかったんだから・・・」

「わかってる。俺もマリオンの事を理恵に話さなかった。マリオンは俺の想像上の産物で、マリオンの声は幻聴と考えてた。そんな事話したら理恵に嫌われると・・・」

 省吾は椅子に座っている理恵をさらに強く抱きしめた。理恵も省吾を抱きしめている。


 省吾の脳裏に、理恵と同じ体形の金髪で緑の目の若い女が現れた。最初に見たマリオンだが、皮下組織の変化した翼はない。

『人間のマリオンは、私が最初に精神共棲したヒッタイトの娘だ。ヒッタイトの一族は、小アジアのハットゥシャからタリム盆地へ移動して、都市国家ローランを築いた』

『いつ、どこで?』

 と省吾は訊いた。

『紀元前三世紀より前だ。シルクロードのローランと呼ばれた地だ。

 私は人間のマリオンが胎児の時に精神共棲した。マリオンは生まれる前から私であり、人間マリオンだった』


『人間マリオンの精神を奪ったのか?意識は消滅したのか?』

『精神共棲は人間の精神と意識が我々ニオブを認識した上で成立する。主体は人間の精神と意識だ。我々アーマー階級のニオブと、ポーン階級のニオブとトト、そしてクラリック階級のプリースト位の生物学者ケイト・レクスター系列のニオブと、クラリック階級のディーコン位のニオブは、人間の身体と精神と意識を保護する代償として共棲する。

 我々と人間は、精神も意識も共有して同一化できる。分離も可能だ。ともに成長する。人間の己、思い、心、霊、魂の、己と思いと心が意識領域で、霊と魂が精神領域だと説明したように、我々も人間も、精神と意識により個性を持っている。

 だが、クラリック階級のニオブが行う意識内侵入は、人間が過去に、悪魔は魂を奪う、と表現したように、人間の精神と意識を略奪して本人に入れ代わり、身体を己のセルにして支配する。クラリックが分離すれば、精神と意識を失ったセルつまり身体は、崩壊する』


『何て事だ!確かにマリオンの実体を見れば、悪魔と思うのも無理ないな・・・』

『悪魔なんて言うな!私だって傷つくんだぞ・・・』

『すまない・・・』

『説明を続けていいか?』

『ああ、続けてくれ』

『胎児のマリオンが人間マリオンの意識を持った時、マリオンは私の精神と意識を自覚して精神共棲を許可し、私は精神共棲した。

 私はマリオンの身体と精神と意識を保護した。これまで私が一時的に理恵と精神同化しても、理恵が変わらなかったように、マリオンの精神と意識は人間のまま変らなかった』


『クラリックに気づかれなかったのか?』

『当時のクラリックは、まだ、私たちほど精神的階梯を進んでいなかった。私たちが思念波を使わなければ見つからなかったのに、私たちは判断を誤った。

 クラリックの行動を探るため、私たちは思念波を使って、クラリックに精神と意識を支配されていない、パルティアの隊商の意識内を探査した。

 パルティアの為政者の精神と意識を支配していたクラリックは、隊商の精神領域の記憶から、隊商が思念波で意識内探査されたのに気づき、パルティア軍を動かしてローランを襲撃した。

 ローランに居たヒッタイトの一族は、私たち子どもを逃がしてパルティア軍と戦い、そして、殲滅された。生き延びた子どもたちは、その後、子孫を残したが、マリオンは出産時の心臓負担が大きくて衰弱した。

 父と私たち精神生命体はマリオンの身体を調べ、心臓に負担を与える遺伝子を見つけた。マリオンに無かった遺伝子だ。他の子供たちも調べた結果、パルティア軍は遺伝子に異常を与える物質を矢に塗ってマリオンたちを攻撃していた。クラリックのアーク・ヨヒムが、生物学に通じたプリーストに課した攻撃だった。

 マリオンは衰弱して死亡した。私たちはマリオンを守れなかった。私たちはマリオンの身体から腐敗要素を排除して身体を維持し、マリオンの中に留まった。同時に、子供たちと子孫の間を移動して遺伝子を修復し健康を保った。移動は私たちが精神生命体の私だから可能だった。

 二十一世紀の初め、大隅悟郎とアレクセイ・ラビシャンらの発掘隊が、ローランからマリオンのミイラを発掘した。大隅悟郎とアレクセイ・ラビシャンは、ニオブのポーン階級コモン位のトトであるシンの系列の末裔だ。

 私たちの系列の精神生命体は、以前にも増して、マリオンのミイラから自由に抜け出て移動できるようになった。

 私はマリオンの身体と子孫を守りながら、この世界をクラリックの支配から奪還するために動き始めた』


『マリオンの拠点はどこだ?』

『ニオブのマリオンとして単独で存在すると同時に、ウルムチの新疆ウイグル自治区博物館に居るマリオンの中だ。同時に変身した烏であり、省吾の子孫たちであり、理恵でもある』

『精神共棲する相手が認めれば、精神共棲できるのだな?』

『低俗な精神を除き、可能だ』


 抱きしめている理恵の身体がさらに熱くなった。芳しい香りも増している。マリオンが理恵に強く精神同化したのがわかる。このような理恵を省吾はこれまで何度も感じている。

「理恵は政治と経済に詳しいか?」

 省吾は理恵を抱きしめている腕を解いた。理恵は省吾の腕に手を載せたまま省吾を見ている。

「詳しくないよ。でも、新体制になって民主化されたのはわかる」

 省吾は驚いた。

「理恵は凄いな!俺は民主化されたなんて考えなかった」

「世界を日本のように民主化するの。

 民主化する国は、一族が支配している国や一党独裁の国だけじゃないよ。

 表向きは民主主義国家で、国民が生活不安と危険に晒されてる資本主義国もあるよ。

 それらの国を真の民主国家にするの。それに、国民だけで民主化運動するんじゃなくって、為政者が民主的になればいいんだから、政府内に民主化運動が起こってもいいはずだよ・・・」

 理恵は省吾の腕を撫でている。

「それ、日記に書くよ」

 省吾は理恵が見ている前で日記を書いた。


『新体制下、民主的為政者により政府と政府機関と法人、あらゆる組織と団体はさらに民主化される。

 日本は議会制民主主義の資本主義国家と言われてきたが、実質は世襲化された政治家と、学閥で世襲化された官僚政府による、世襲化された経済界に癒着した、独裁的政治に寄る国家だった。

 新体制下、政府は民主化された。「公務員政策立案推進実績責任法」と「公約宣言厳守責任法」が施行され、政治関係者全員が発言と公約を守らねばならなくなった。各政策は法的決済権を持つ部会によって仕分けされる。国民に利益還元されない政策は、その関係者全員が責任追求され処分される・・・。

 その結果、国会議員と閣僚、官僚をはじめ、公務員と公務員に準ずる者たちの経済界との癒着は切れる。政府機関も政府関連の法人も、利益を産まない部署と組織は廃止され、新たな政府組織や法人も利益を産まないものは設立不可能になる。

 理由は、政府機関と法人の利益全てを、赤字財政の穴埋めに使うからだ。そして、国民と国家を脅かすあらゆる団体と個人が、検警特捜庁と検警特捜局と、その下部組織の検警特捜部によって完全に排除される』



「ニュース、見ていい?」

 理惠が何か気にしている。

「うん、いいよ」

 省吾は仕事場の壁にあるテレビのスイッチを入れた。

 正午のニュースは北陸地方に流れ着いた北朝鮮脱北者と、新たに発生した台風について報道している。


「彼らの国は崩壊寸前だ。ロシアと中国が崩壊寸前の独裁政府に友好的なのは、なぜだ?」

 理恵が説明する。

「歴史的国交の延長とは異なるイデオロギーが、ロシアと中国を支配してる・・・。

 北朝鮮政府がクーデターや民主化で崩壊すれば、ロシアと中国は治安維持を名目に北朝鮮へ出兵して支配し、日本海へ進出する拠点を築くよ。

 逆に食糧不足で国民がいなくなれば、経済支援を名目に、日本海への拠点を手にする。

 ロシアも中国も、もっと領土を拡げたいんだよ」

 精神同化したマリオンが強く理恵に現れているのを、省吾は感じた。


 さらに理惠は説明する

「中国もソビエト連邦崩壊後のロシアも、過去に少数民族と領土を武力で支配し、そのまま現在に至ってる。

 合衆国は表面的な民主主義や正義を掲げて、他国とイスラム圏に圧力をかけ、国際的緊張を高めてる・・・。

 これらの国々で民主化運動が急速に拡大して現政権をいっきに倒せば、支配されている民族が独立して自由になるよ」


「世界に独裁政府が存在するのは一党独裁政権や、独裁政党が支配する間接民主制政権や、大統領制のためだ。一大国で国民による民主化が起これば、独裁政府が民主化を鎮圧する。小国なら独裁政府に友好的な大国が民主化を鎮圧して小国を支配する・・・。

 多数の国々で同時に、大規模な民主化を進め、いっきに世界の体制を変えればいいよ。その場合、政治体制をどうするかだね・・・」

 何か手段があるはずだと省吾は思った。


「完全な政治体制を作るの。私たちが政府だね」と理惠。

「俺たちが政府か・・・」

 日記は単なる政治批判じゃない。理恵が言うように、俺たちが政府だ。

 All for one.One for all.・・・.三銃士か・・・。

「台風が発生してるから、日本がこれ以上災害を受けないように祈らなくっちゃね。

 日本が災害を受けないよう、日記に書いてね。民主化もだよ」

「うん『未来のあるべき世界』をモデルにする」

 省吾と理恵は、人々が災害を受けないように祈った。


 ニュースで、倉本と田辺が脳溢血で緊急入院した、と報じられた。

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