第5話
「お邪魔しま〜す」
「なんでお前は当たり前のように入ってきてるんだよ」
「……入れないなんて、言いませんよね?先輩?」
「イウワケナイジャナイデスカヤダー」
俺はあの後、酒井さんに見送られて酒井さんの家を出た。
何かあの連れ去られた路地裏からすごい遠いところだったから電車使おうと思ったんけど、何故か小鹿がタクシーを呼んでしまったのだ。
そしてそのまま俺の家に帰り着いて、今は俺の部屋で二人きりだ。
……何この状況。
「ここ数時間だけで色々ありすぎて疲れたんだが……」
「大丈夫ですよ。これから私が養うのでいくらだけ疲れても」
……だめだこいつはやくなんとかしないと……。
「お前、家は?」
「ついさっき契約解除しました」
「はやすぎませんかね……」
つうかどうやって解除したんだよ。
「だって先輩と一緒に暮らすためですもん!」
「知 っ て た」
「そういえば先輩晩ご飯食べてませんよね?」
言われてみると確かに。
……なんか今日一日で色々あったせいか腹減った気がしてきた。
「そうだけど……なんもないぞ?」
「なら作りましょうか?」
「作れるのか?」
そう聞くと小鹿はドヤ顔で言った。
「私、料理得意ですよ?」
「まあ、期待して待っとく……」
そう言って俺は部屋の隅にあるソファーに座ってテレビをつけた。
……いや、本当に疲れてるな俺。
それから30分程経って台所の方からいい匂いが漂ってきた。
「先輩、出来ましたよ」
「おー、サンキュ」
そう言ってテーブルの上に並べられたのはオムライス、コンポタだ。
「……めっちゃ美味そうだな」
「頑張って作ったんですよ!」
「……いただきます」
俺はスプーンを手に取り、オムライスを一口食べた。
「……うまい」
「先輩に美味しくないものなんて出せませんよ」
少し鉄臭いと言うかなんというか……癖がある味だけどうまい。
あとコンポタになんか浮いてるけど……玉ねぎとかだろうか?
「なあ、この浮いてるの何なんだ?」
「私の爪ですよ」
「ゴフッ!」
は?
爪?
あの指付いてるあの爪?
「あと、ケチャップには私の血が混ぜてあります」
……え、こわ。
……マジで怖いんですけどこの子……。
「……もう腹いっぱいだからいいや」
俺は半分くらい残ってるオムライスとコンポタを残して席を立った。
すみません、お米の神様……。
致し方ないんですよ異物混入なので!
「……眠いから寝る」
「え?お風呂入らなくていいんですか?」
「明日の朝入る」
「チッ……風呂凸して既成事実作ろうと思ったのに……」
「なんか言ったか?」
「イエ、ナニモイッテナイデスヨ」
「?そうか」
そう言って俺は寝室に向かった。
寝室に入った俺は鍵を三重にかけて開かないのを確認してから寝た。
だってアイツ絶対凸ってくるもん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます