第3話
(やべえ、マジやばいぞこれ……)
逃げ回っているうちに路地裏に来てしまったようだ。
ここなら撒けるかもしれないと思ったのだが甘かったみたいだ。
小鹿とは少し距離を取れているが全力で走らなかったらすぐ追いつかれる距離だ。
曲がり角を曲がると、目の前には黒いパーカーを着てフードを深く被った小柄な人が立っていた。
「ちょっとそこどいてくれ!」
「……」
どこうとしないからその横を通り過ぎようとした時だった。
首を掴まれてそのまま地面に組み伏せられてしまった。
「ぐぅ……!」
首を掴む力が強すぎて息ができない。
必死にもがくが全く抜け出せる気配がない。
「暴れないほうがいい。逆に首がしまるぞ?」
「……!」
その低めの声には聞き覚えがあった。
フードの隙間から見える黒と赤のオッドアイにも見覚えがある。
「久々だね……うざいやつも来てるみたいだし、一旦場所を変えようか」
そう言って、彼女は俺の首を掴んだまま走りだした。
「……先輩?……どこに行ったんですか?」
「ここは……どこだ……?」
目を覚ますと知らない部屋にいた。
俺はベッドに寝転がっていて手足は鎖に繋がれている。
「起きたかい?おはよう。気分はどうかな?」
声がしたほうを見ると、そこには白衣を着た女性が椅子に座っていた。
「やあ、久しぶりだね。気分はどうだい?」
「……最悪ですよ」
「ひどいじゃないか、久々の対面だと言うのに」
そう言って笑いだしたのは、組織の元上司の
生物学の知識に特化していて、裏社会だけじゃなく、表社会でも有名な人だ。
「なんで……ここにいるんです……?」
「なんでって、君に会いに来たに決まってるだろう?」
「……俺を殺しにですか?」
「まさか。そんな理由だったら今頃殺してるよ」
……確かにそうだな。
「いやぁ、仕事が忙しくてなかなか会いに行けなかったけどやっと時間ができて来れたよ」
「……俺は会いたくなかったですけどね」
「それは残念。ところで……君はこの数年何をしていたのか教えてくれるかな?」
「……何もしてませんよ?ただフリーターをしてましたけど……」
嘘はついていない。
ずっとバイトをしながら生活をしていた。
「……君はそんなことで私に会いに来なかったのか?」
「は?」
「私は君のことを探していたんだよ。なのに、君は何も言わずに姿を暗まして……。酷いじゃないか」
「組織が嫌になったものでしてね」
「私のことは?」
「いや、別に嫌いじゃないですけど……」
そもそも俺が嫌になったのは人を殺すってことだし……。
「じゃあ、好きってことだよね!?なら結婚しよう!」
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます