第1話

 今日はいつもより客が多かった気がする。

 疲れたので早く帰ろうと思っていると携帯が鳴る。


(誰だよ……)


 画面を見てみると『非通知』の文字があった。

 こんな時間に電話してくる奴なんていないはずなのに。

 不審に思いながらも通話ボタンをおす。

 すると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「……先輩?」

「!」


 俺はその声を聞いた瞬間、通話を切ってスマホの電源を落とした。

 ……まずい!

 俺は仕事の時いつも使っていた隠れ家へ向かった。

 だが、そこには……。


「……あ、やっときた。先輩、何も返事しないで電話着るなんてひどいじゃないですか?」

「……」


 組織の後輩の小鹿彩矢がいた。

 最後にあった時より成長した体つきになっている。

 身長が高くなり髪が伸びていて大人びている。

 10代後半の少女に見えるその姿に動揺してしまった。


「……何の用だ?」


 小鹿は何食わぬ顔で答える。


「え?分かりますよね?」


 俺は笑顔で言う彼女に寒気を感じた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る