第3話 ブログ

 俺たちは、その後も下町の江東区深川江戸資料館や江東区中川船番所資料館に出掛けて、江戸の街並みを想像して楽しんでいた。遅い昼食に、さくら鍋(馬肉)を食べたりした。


 その時は、いろいろな施設の無料券や割引券がついている”ぐるっとパス”というチケットを持っていて、さらに地下鉄の1日乗車券を買っていたから、1日でいろんな場所を回った。両国に行ったのは、そのついでだった。ちなみに、今は江戸東京博物館は改装中だ。


 はっきり言って疲れる。一度に何か所も回れるもんじゃない。ぐるっとパスはいらなかったかもしれないと思う。


 俺は慰霊堂で撮った写真の中に心霊写真がないか探してみたが、スマホで見た限りでは見つからなかった。最強心霊スポットと言いながら、普通のお寺と変わらないじゃないか。俺はがっかりした。


 アスファルトの上を歩き疲れて、その日はすぐに寝てしまった。

 次の日は仕事で、ブログを更新する暇はなかった。


 ***


 数日後、会社のパソコンでライバルのブログを見てみた。  

 すると、やつの最新記事は、俺が先日行ったばかりの東京都慰霊堂だった!

 お前ストーカーかよ!俺はブチ切れた。


 【閲覧注意】心霊写真が撮れました、と書いてあった。


 道路から撮った建物全体の写真の周りを、黒い靄のようなものが取り巻いている。

 写真の半分は煤をつけたみたいに黒かった。地の部分が見えないほどだった。きっと写真を加工したんだ。汚い野郎だ。


『ここに写っているのは関東大震災で亡くなった人の霊です。火に囲まれてみんな真ん中に集まっていますが、人が重なり合って、重さで窒息してしまったみたいです。周りにいるのはそこに火が燃え移って、火だるまになっている人ばかりです。まるで、地獄みたいな感じです。人間だけじゃなくて、馬とか犬もいます。箪笥とか家具を持って来た人もいました。


 あまりに被害が大きくて、まだ成仏できてない人がここに大勢います。ふざけて近付いてはいけない場所なので、気を付けましょう。行く場合は真剣にお参りしないと、霊を怒らせてしまうでしょう』


 俺は自分の記事を出すのを諦めた。

 この人には絶対勝てないと思ったからだ。

 ガチの霊感がある人にかなうはずがない。


 あそこって、本当にいるんだ・・・。

 どうしよう。

 幽霊がついてきたりしてないよな・・・。

 最近、急にゾクッと悪寒が走ることがある。



 その記事の下に、その人が食事した店のことが書いてあった。

 俺が行ったさくら肉の店だった!

 すごい偶然。

 結構離れた場所にあるのに・・・。

 しかも、頼んだのは、俺も食べたさくら鍋じゃないか。

 写真もうまく撮れていた。センスがいい。


 もしかして店で会ってたかもしれない・・・。

 いやだなぁ・・・。


 その時、俺は気が付いた。

 俺のライバルは、身近にいた。

 息子だったんだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心霊スポット 連喜 @toushikibu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ