第49話 太宰
あの蔵は明治終わりに建てられた代物で、何度か外壁の塗り直しや内部のリフォーム、耐震施工などを行ってはいたが、老朽化と、日々、護の不用意な力の暴発のせいで、かなりガタがきてしまっていた。
このままではいつ護があの蔵の下敷きになってもおかしくない状態であり、太宰の判断で取り壊しに踏み切ることとなったのだった。
しかし、あの蔵には問題があった。過去何度となく解体の話しがでていたのだが、そのたび、請け負った業者が倒産したり、ここに来るまで大事故に見舞われたりと、話はいつも流れてしまっていた。勿論、呪いを鎮めるため、祈祷など手は尽くしていたのだが、その指揮をとっていた当時の頭首、護の祖父が大福をを喉に詰まらせ急死するという事態に見舞われ、蔵の取り壊しは取り止められた。
諏訪の家には強すぎる力のために精神に異常をきたす者が少なくなく、あの蔵に隔離し、療養させていたという歴史がある。
あの蔵には護のような呪の申し子たちが死するまで、生活していたわけであり、現在もなお、彼らのドス黒い念が色濃く残っている状態でなのである。
だから、事を慎重に進める必要があった。この件は頭首と太宰だけが密かに動いていた。
「実はね、諏訪さん宅のリフォームの際、私のところに元夫か連絡がきてね。それで私の会社の取り引き先の特別な解体業者を紹介したのよ」
つばきの元夫は蔵のリフォームを受け持った地元の工務店に勤めていて、例の蔵の事を彼女に相談していたのだという。
「それで、今回もお願いできないかって」
頭首からそれ専門の業者がいると太宰聞かされていた。それにまさかつばきが関わっているは、夢にも思わない。
もしやと思い、太宰は聞く。
「では、神社の方に来たことも?」
「ええ」
やはり、神社で見かけたのは彼女で間違いないようだった。
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