第41話 太宰
太宰の部屋は有事の際、すぐ駆けつけるようにと母屋にある。
部屋は板の間で、形ばかりの社があり、その他はベッドと鏡と本棚くらいしかない殺風景な部屋だったが、静かで直射日光が当たらない薄暗い所が気に入っている。
足元には使い魔の如く、自動で掃除をしてくれる機器が部屋を歩き回っていたので、それを避けながら鏡の前に行く。
ここに来るまでスマホで中学生に人気のあるアイドルや俳優などを調べておいた。とりあえずそのまま真似て見る。金髪の目鼻立ちの整ったなかなかの美少年だ。ただ、金髪というのが気恥ずかしく、今度は髪だけを黒くしたが、やはりこの相貌で部屋を出る勇気なく、もう少し大人な感じにアレンジする。それでもしっくりこないと、結局いつもの姿に落ち着いていた。
「これでは護様と何ら変わらないではないか……」
太宰はベッドに身を投げ出し、溜息をつく。そういえば、以前同じような胸のざわめきを覚えたのも黒髪の綺麗な女性だった。一年くらい前だろか、その女性は一人で神社を訪れており、熱心に手を合わせていた。なんだかその女性から目を離せず、敷地の掃除をしていた手を止め見入ってしまっていたのだ。
声をかけたい衝動にかられた。だが、それを理性で食い止め、職務に戻った。しかし、その後もその女性は太宰の中に居座り、また彼女に出会わないだろうか?と敷地の掃除ばかりをしていた記憶がある。
そろそろ職務に戻らねばと思った矢先、とてつもない波動が部屋の空気を揺らす。これは間違いなく護だとわかる。ややあって物凄い轟音護のいる蔵の方から聞こえた。嫌な予感と共に、部下の式神からスマホに連絡入る。
「大変ですっ、くっ、蔵が潰れましたっ」
「蔵だと?護様はどうした?」
「護様は下敷きになりましたが、うねうねした何かが守ったようです。ですが、そのうねうねがーー」
うわーっ、という悲鳴とともにスピーカーから何も聞こえなくなる。これは浮かれてい自らの職務を怠った自分のミスである。凛に護を任せた自分が愚かだったと後悔せずにはいられない。救いだったのはあの呪物により護が助かったことだ。
とにかく行かねばと、太宰は部屋を出た。
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