第27話 諏訪護



 自分でもなぜこんな行動をとったのわからない。



 あやめの手を掴み、歩き出したはいいものの、これからどうすべきかなんて護は全く考えていなかったのだ。とりあえず離れまで送ろうと、竹林の方へ歩いて行くと、勢いよくその手は振り払われた。



 振り返ると、竹林を照らす足元の仄かな明かりに照らされたあやめは俯いたままだった。

 


「何なのよ……」



 そうぼそりと呟くと彼女は肩を小刻みに上下させグスグス泣き出した。



「ひょ、兵藤さん……」



「……もう帰りたい」



 ど、どどど、どうしたらいいの、これ……



 生まれてこのかたロクに女子と接してこなかった護には、もはや対処不可能な事態である。 



「ご、ごめんっ、何をどう謝っていいかわからないけど、とにかく太宰がごめんっ!兵藤さんを怖がらせるつもりなんて1ミリもなかったんだっ!!」



 あやめは怒りをぶつけるように両手を振り下ろし、声を荒げる。


 

「何なのよっ!諏訪家の人って、怖いにもほどがあるでしょっ!」



 護は再三謝ったが、その謝罪は焼け石に水であやめはさらに大声で「お母さーんっ!!」と泣き出してしまった。護がなすすべなく泣きじゃくるあやめを見ていると、彼女は少し冷静さを取り戻したようで、なんの役にも立たない護を睨みつけると、浴衣の裾で涙を拭った。



「……少しは慰めてくれてもいいじゃないっ」

 


「ご、ごめん、だ、大丈夫?」



「大丈夫じゃないから泣いてるのっ!」



「そ、そうだよね……ごめん。あ、そうだコーラ飲む?泣いて喉乾いたでしょ?」



 コーラが彼女の逆鱗に触れ「馬鹿じゃないのっ」と怒鳴られる。



「じゃあ、何がいい?アイス?お菓子?食べたい物コンビニで買ってくるよ」



「こんな時間に食べたら太るでしょっ!でも……」


 アイス食べたい、とぼそりと彼女が言うので護はちょっとお金取ってくる、と蔵に戻ろうとすると、あやめはてててと歩き出し、道に落ちていたスマホを拾い上げ、汚れを払う。



「いいよ、私のスマホあったし、これで買お」



 行こ、とあやめはスタスタと行出すので護はその後を慌てて着いて行った。

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