第22話 諏訪護

 



 女の子っていい匂いがする……



 その香りは自分の中で眠っていた感情を激しく叩き起こそうとする。



 もう、兵藤さんが誰だっていいじゃないか……もっと、兵藤さんに触れていたい……



 彼女は護の先を歩きながら、時折振り返り微笑む。

 


 夢みたいだ……



 ふいに彼女が立ち止まり、護があやめにぶつかり、彼女はよろけた。それはスローモーションのように見え、護はとっさにあやめを抱きとめる。



 腕の中の彼女はひどく華奢だ、力を込めたら壊れそうだ。



「ありがとう」と呟く彼女の大きな瞳にに見つめられ、もう目が離せない。



 何も考えられない。彼女がそれを許さない。彼女は護の頬に触れる。近づく彼女の唇。



 吐息がかかり、護も彼女に唇を近づけようとした瞬間、破竹の勢いで蔦が彼女に絡みついてきた。



 コンっっ!!



 コンは二人のキスを邪魔するように、彼女を全身蔦でぐるんぐる巻き、瞬時に蓑虫のような姿に変えてしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る