第17話 凛
夜の闇に輝く白銀の毛並みと、しなやかな曲線を描く狐特有のしなやかな体躯。いつ見ても惚れ惚れする。呪いでできた自分の黒く見にくい姿とは程遠い。
この彼の本来の姿を凛は美しいと思う。
この銀髪も彼のように美しく有りたいという願望である。
「まだそんな格好をしているのか?」
「先輩の眼の保養になればと思って。護坊っちゃんには好評だったんですよ」
太宰はそれに答える変わりに呆れたようにため息を付く。
それより、と太宰は口を開く。
「また、悠護様の嫌がらせか?兵藤あやめに近づいたのは」
凛はそれを鼻で笑う。
「まさか、ただの偶然ですよ。
元々悠護坊っちゃんとあやめちゃんは本好きのお友達だったんです。
だから、そのことを知って先輩が何か仕掛けてきたのかと思って止めに入ったまでですよ。さすが、血の繋がったご兄弟、女の趣味まで一緒とは、もう笑い話にしかなりません」
「確かにな。で、何か話があったんだろ?」
「随分護坊っちゃんにはお優しいなと思いましてね。恋のお手伝いまでして」
「それが仕事だ。
護様が彼処から出ないことには何も始まらないからな。主の色恋などどうでもいい。
兵藤あやめはただのまき餌だ。護様には早く呪いと共存できるようなってもらわなければ。あれでは術師として箸にも棒にもかからないからな」
「護坊っちゃんのこと買ってらっしゃるんですね。悠護坊っちゃんのことはあっさり見限ったくせに」
「悠護様は性格以外、なんの問題もない。
私が憑く必要はないと判断しただけだ。それより力の暴発時に護様を押さえるためにも、自分が憑く方がいいと、悠護様にも再三説明した」
「悠護坊っちゃん、態度には見せないですけど、相当ショックだったんですよ。俺、裏で悔し泣きしてるの何度も見ました」
「そうか」
「酷い人ですねぇ。その上、彼女まで奪う気ですか?悠護坊っちゃんのいない間に」
「いや、私が兵藤あやめを気にしているんだ」
そのもの言いに大袈裟に驚き「まぁ、これまた禁断の三角関係」と茶々を入れる。
「彼女、どう、思う?」
彼はこれ以上ないくらいの真剣な眼差しを凛に向ける。
えっ?まさかの、本気?
太宰に見つめられ、可愛らしく变化した少女の顔は張り付いたように引きつった。
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