第12話 兵藤あやめ
なっ、なんだったの……
ツタが緩み始めたことに安堵したあやめはホッとして膝から崩れ落ちる。すぐ横で轟々と音を立てて吹き上がる水柱を見上げるとそこには虹がかかっていた。
「だ、大丈夫……?」
そう声をかけられ、目の前にいる護を見上げる。全身ずぶ濡れであり、より不審者感が増していた。
「う、うん……」
彼はそこにかがみ込み、あやめに絡みついたツタを遠慮がむしり始める。あやめはお礼を言い、彼に聞く。
「それより、なんなのあれ……?」
「よくわからないけど……、たぶん呪物のたぐいだと思う」
「ジュブツ?」
「呪いの儀式とかに使われてた物とか、呪いのかかった物のこと」
なんでそんな物を彼は持っていたのだろう……
驚愕の表情でを見ていると、彼ははっとしたように手を引っ込め、ゴニョゴニョ呟く。元々声が小さく、隣の水柱の吹き出す音で余計に聞こえない。
「え、なに?」
彼はあの、そのを繰り返し「お、お、お胸の方はその、大丈夫……だった……?」と彼は明後日の方向を向いてあやめの胸元を指差す。
あやめも気になって胸元へ視線を落とすと、絡まったツタの間から服が濡れたせいで水色の下着が透けて見え、なんとなくいやらしい感じになっていた。
ちらりとこちらに視線を向けた護と目が合う。
「最低っ!!」
咄嗟に手が出てしまい、あやめの平手打ちが護の頬にクリーンヒットする。
すると後ろで悠護があははと声を立てて笑う。
あやめは胸元を押さえ、腹立たしげに首だけ振り返る。
「笑いごとじゃないですっ!」
後ろにいる悠護はすでにツタを払い除けていて、ヒビの入った眼鏡かけ、怒り心頭のあやめを見て肩を竦めて笑う。
「まっ、それだけ元気があれば大丈夫だね。とりあえず、ここは離れようか。人が集まってきた」
あたりを見渡すと、水道管の破裂さわぎで、人が一人また一人と増え始めた。
「ほら、お姫様」
次の瞬間、悠護に軽々と体を抱きかかえられ、まだツタの絡みついた体は急に宙に浮く。
見上げた先には笑顔の悠護がいた。
身体にまだ絡んだままのツタが、一瞬にゅる動いたような気がした。
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