第12話

「学校に行きたいってのも、どこでもいいから、辿り着く場所が欲しかったからで。頭が良くなりたいとかではないんだ。ばかのままでいい」


 彼は、ぼうっとしていた。


「必要なものは、勝手に取得されている扱いになってる。ありがたい限りだよ」


 そして、とても。切ない表情をしている。


「だから俺は、毎日。制服を目印に、なんとかして学校に辿り着こうとしている。今日も」


 そこで、急に彼は黙った。


「余計な話だったな」


 何も、言えなかった。


「だから、ここに来るのは無理なんだ。まっすぐに歩くことすらできない、どこにも辿り着けない人間が、この屋上に」


 つかれたらしい。

 事切れた。


 眠っている。


 彼に。


 どう声をかけたらいいのか。分からない。

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