第10話

 制服の話をしばらくしていたら、応答がなくなった。机の向こう側。椅子の背もたれに沈みこんで、彼が眠っていた。つかれていたのかもしれない。

 制服の話。色の深みのこと。他のことも話したかったけど。まぁ、とりあえずいったんは。

 また、たぶん会える。ここに来ればいい。そう言おう。ここで、話をしよう。


 彼が。

 起きた。


「どうしたの?」


「眠っていたのか。いや、すまない」


 なんか、ちょっとだけ、おかしい。窓の外を見て、天井を見て、椅子を見て、それで、また背もたれに沈みこむ。


「ここに誘われて、服の色の話をして。そして眠った。そんなところか」


「うん。そんなところ」


 一瞬。まるで違うひとみたいな。そんな雰囲気だった。


「話の続きを」


「いや、眠そうだし。やめよっか」


「いいのか?」


「うん。また会えるよね。ここで」


 彼の顔が。曇る。


「それは」


 彼。何かを、迷っている。


「そうだな。今日会ったばかりだけど、べつに話してもいいか」


「何を?」


「俺の話」

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