第9話
4時間ぐらい、座って待っただろうか。
せっかくなので、トイレまで案内してもらった。待った分の、権利の行使。
トイレは、1日行くか行かないかぐらいだった。こういう体質なので、どちらかというと身体のほうが慣れている。今も、特に必要を感じなかったけど、一応行った程度。トイレに困ったことはない。
「あ。待って待って」
歩き出した自分を、彼女が留める。
「こっちに。階段よりもいい場所が」
彼女に、ついていく。
初めての、経験だった。いや、さっきのトイレもこの構図だったか。誰かの、後ろを歩く。誰かに、行き先を委ねる。心地よい感じがする。
「屋上か」
いや、ちょっと違うか。
屋上ではあるけど、どちらかというと、その入り口といったほうが正しいかもしれない。
屋上の、一歩手前。なぜか、机と椅子がある。椅子はちゃんと背もたれのあるやわらかいやつで。机も、わりと、かっちりしている。
「いい場所でしょ、ここ。私のお気に入り」
お気に入りか。じゃあ、あまり気楽には来れないな。来る方法も分からないけど。
「どうぞ」
引かれた椅子に、座る。やわらかい。背もたれに、沈みこむ。かなり良い。屋上が見える。あと空。
「話の続きを」
なんの話だったか。
そうだ。制服の色だ。
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