第8話

 制服の話を、ほんの少ししただけで。お昼休みが、終わってしまった。


「あの。わたし」


 どうしよう。どうすれば、この続きができるだろうか。


「ここに、ずっといますか?」


「いや」


 彼の顔が曇った。あまり、言ってはいけないことだったかもしれない。


「ごめんなさい」


「いや。ええと」


 彼。ほんの少し考える表情。


「じゃあ、ここに。たぶん、ここにいる」


 それだけで、とても嬉しかった。まだ、制服の話ができる。

 午後のクラス。はやく終わらないかな。楽しみなことがあると、時間の進みも、じれったかった。いっそのこと、すべて飛ばしてしまおうか。ユニットを全て取得している自分には、べつに出なくてもよいものだった。クラスメイトとかに気を遣っているだけ。


 時間が。


 経って。


 ようやく。


 午後のクラスが終わった。演劇部には行かないことを伝えて、階段に走る。待ちきれない。


 階段。


 踊り場。


「いたっ」


 ちゃんと、そこにいた。


「おお。来た」


「あの。さっきの続きを」


 あ。さっきじゃないか。昼か。


「いや、その前に。お手洗いに」


「あ。どうぞどうぞ」


 階段から、立ち上がる彼。


「場所まで、案内してもらってもいいか?」


「あ、はい」


 お手洗いの場所も、分からない。本当に、編入したひとなのかもしれない。

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