第4話

 気には、なった。

 階段で、ただ座っているだけ。

 もうすぐ、クラスが始まる。それなのに。動こうとしない。というより、途方にくれて、どうしようもない、ような。そんな感じ。


「あの」


 たえきれなくて。声をかけた。


「どうしたんですか?」


「いや。何も」


 会話は。ここで終わり。

 どうにもならない。


「もうすぐ、クラス。始まりますよ?」


「そうなんですか」


 どうしようもない。でも、会話を否定されているふうでもない。聞けば、反応がある。


「わたしのこと。見てました?」


「というより、制服を」


「制服」


 やっぱり。わたしではなく、わたしの服。


「ここに来るまでの目印に。他の人と」


 えっ。


「いや。なんでもない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る