第17話 若者の更生を願う。一人息子のためにも

 和希のひったくりで少年院に入院していたという打ち上け話が終わった。

 和希曰く「今はおばあちゃんと妹と三人で平和に暮らしています」

 そのあと、待ってましたとばかり、話の輪に入って来たヘルプがいた。

「僕の場合は、万引きしてたんです。まあちょうどそのとき、僕の両親は離婚して僕は母親に引き取られたばかりで、母一人子一人の不安定な家族だったんですよ。

 母は掃除婦をしていたが、なんせ一か月の契約パートだからいつクビになるかわからない不安定な身分。その掃除もルンバなどロボットの出現で減っていく一方。

 だから、僕はコンビニで小さなお菓子などを万引きしていた。

 コンビニの親父は、本当はそのことを気付いていたのだが、二回までは僕のクリーニングにもだせない汚れたセーターを見て、経済状況を察したのだろう。

 見てみないフリをしてくれたが、三回目からはもう店に来ないでくれと釘を刺された。なんでも、万引きする人はドアを開けた瞬間から、わかるらしい。

 それとすれ違ったのちの風でピンとくるらしい。

 あっ、もう僕は万引きを卒業したから安心してね」

 私は思わず「盗みというのはクセになるから、しちゃダメよ。つい指が動いてしまうからね。またそれを見られてた悪党どもから、犯罪に強要されることもあるわ。

 私は一度万引きに間違われたことがあるの。レジを通してから売り場に戻って、マイバックに入れようとしたら、つかつかと歩み寄っていた女性から『レジ通して下さいね』私思わず『レシート見せるわ』というと、向こうは何も言わずに去って行ったけどね」

「失礼なお角違いだなあ。でもレシートっていうのは購入した証拠になるから、きちんと持っとかないとね。でもまあ、お姉さん(彼は私をそう呼んだ)だから、よかったようなものの、気の荒いオジサンだったら怒鳴っているところだよ」

 まあそうかもしれないなあ。しかし、人間誰でもミスはあるわ。

 ちなみにそのスーパーは、一年後潰れてしまった。


 一週間後、シャインに行くと今度はイケメンホストとお笑い風が私に話しかけてきた。

 山Pに似たジャニーズ系と万年ボケ専門の漫才師風である。

 二人とも二十歳だという。

 山P風曰く「セックスすると飽きてくる」

 万年ボケ風が深く納得しながら「飽きてくるな。だから僕は東京でホストをしているとき、彼女に中絶を強要した。でも、中絶ってお互い傷つくんだぜ」

 やはり十戒の「汝姦淫するなかれ」は当っている。

 だいたい、女性は愛想を愛と勘違いし、愛想のいい人を自分を愛してくれる人だと大きな勘違いをしているケースが多い。

 肌のぬくもりは愛ではなく、男性にとっては吐き出すものでしかない。

 愛想よくされ、耳もとで甘い言葉を囁かれると愛されていると勘違いし、反対に反応のない黙っているだけの人を、無視していると妙な誤解を生み、相手を敵視しようとする。

 無視というのは、相手を恐れているという意味もあるのではないか。

 この人にはなんて答えたらいいのかわからない。うっかり言い返すと、噛みつかれそうであるという恐れから、無反応であるケースもある。

 しかしそういう捉え方をするのは、残念ながら何らかの形で嫌われたりしていたケースが多い。

 それが嵩じていじめを産むのであろう。


 私は小説を書き始めた。

 もともと文章を書くのは好きで、文章講座でも先生に褒められたこともあったし、友人に見せると好評だった。

 そうだ。ヘルプの子をモデルに小説を書こう。

 私はクリスチャンだから、金儲けよりも小説で神の愛を伝えていこう。


 今はコロナ渦につけ、値上げラッシュの時代である。

 大手の飲食店はクーポン券を配り、なんとか客をつなぎとめるのに必死である。

 私の行きつけのカフェー夫婦でなんと四十二年も経営している老舗カフェは、幸い値上げラッシュはせず、元の価格で頑張っている。

 しかし、珈琲屋の話によると、三軒注文が途絶えたという

 カフェも商店街もは先細りであり、老舗テンポが閉店し、代わりに出店が営業している。出店は二日から一週間くらいで終わるが、その代わり値段は安い。

 これからどんな時代になっていくのだろう。


 ふとテレビをつけると、時代の寵児秋元康が映っている。

 小太りで温厚そうな一見平凡なおじさんであり、あくどさは感じられない。

 億万長者でもあるが、金に対する執着は感じられず、むしろクリエイターのごとく、のびのびとしている。

 ある吉本のお笑い芸人に「どうしてこんなに成功するのか」と聞かれると秋元氏曰く

「それは山のような失敗作があるからだよ。それでもめげることなく、チャレンジしたからだよ」という。確かに「吉本坂」というプロジェクトも失敗に終わったという。

 秋元氏の睡眠時間は、早朝六時から九時までの三時間だという。

 秋元氏曰く「人生に無駄なし。人生は足し算ではなく、引き算である。人脈というのは後からついてくるものである」

 いわゆる山のような失敗作から生じたものが、氷山の一角のような成功作なのであろう。

 実際、AKBの場合でも、インディーズのCDを作成して売り込んだが、耳の肥えている音楽関係者には相手にしてもらえなかったので、秋葉原に自らAKB劇場をつくったという。

 しかし、それもなんと客は四人くらいしか入らず、客よりスタッフの方が多かったくらいである。

 その時期が四年ほど続き、大赤字になったが秋元氏はそれでもめげなかったという。その結果、大成功に恵まれた。

また、秋元康曰く「記憶に残る幕の内弁当はない」

 幕の内弁当というのは、主役がなくていろんなおかずが均等に詰められているが、そのなかで記憶に残るおかずはない。

 ひとつのアイディアがあり、それにいろんなものを付け加えて安全なものにしようとすればするほど、人の記憶に残らなくなっていく。

 それよりも、個性的なもの、前代未聞のものの方が、好き嫌いや反対意見もあるが人の記憶に残ることは間違いなしである。

 マスコミでいちばん売れないものは、地味、平凡、時代遅れだという。

 今の時代を閉じ込めたような作品をつくらねばならない。

 秋元氏は、机上の空論にならぬように、いろんな人と気軽に話をするという。

 

 秋元氏の側近如く「彼がどんなに努力してるか知ってますか? 彼の努力は天まで届く」また「彼は誤解されている」とも言った。

 秋元氏の作品は、いずれも家庭の温かさを感じさせる。

 こたつの上に一個置かれた小さなみかんのようである。

 実際、秋元氏は父親はデパート勤務、母親は専業主婦だったというし、家庭の不幸はみじんも感じられない。

 犯罪者に、幸せな家庭の人は一人もいないというが、秋元氏の成功は恵まれた家庭という土台の上に成り立っているような気がする。


 秋元氏曰く、芸能界において運というのは重要なことである。

 才能があり、どんなに努力しても運に恵まれなければスターにはなれない。

 アイドルは強運でなければならない。

 林真理子氏は、文壇界上におけるアイドルであるという。

 林真理子氏は、本屋の娘に生まれ日大を卒業したものの四十社以上の会社を不採用となり、自殺を考えていたところ、アパートの隣の部屋に住んでいた友人の紹介で、コピーライター養成所「宣伝会議」に入学し、めきめきと頭角をあらわした。

 糸井重里の弟子に選ばれ、コピーライターとして新人賞を受賞し、独立したコピーライターとして活躍していたところ、業界紙に掲載していたエッセイが認められ、

「るんるんを買っておうちに帰ろう」のエッセイ集を発売すると、たちまち爆売れ。

 林真理子氏曰く「私は心を鬼にして、心を裸にした」

 人間の深層心理がよく描かれていて、面白かった。

 林真理子曰く「作家は精神のストリッパーだ」


 それからは紅白歌合戦の審査員に選ばれ、テレビタレントにもなったが、直木賞を受賞して以来、本格的な作家として活躍するようになった。

 私は一度、林氏の講演会に行ったが、マスコミのイメージとはあまりにもかけ離れているのにびっくりした。

 こズルくて嘘が上手くて、世間ずれした女性のイメージを見事に覆し、育ちのいい可愛らしいインテリ女性だった。

 まあ、マスコミは活躍する女性を、そういったイメージに仕立て上げようとするが、私の思惑は見事に裏切られた。


 ふとカフェで一休みしようとした。

 セルフサービスの安価のカフェ。

 珈琲を飲んでいると、二十歳くらいのロングヘアの女性が

「このパン食べませんか」と菓子パンを差し出した。

「えっ、いいんですか。それではお言葉に甘えて頂きます」と

パンを受け取ったが、これもひとつの縁なのだろうか。

「人はパンのみで生きるにあらず」(聖書)という御言葉通り、食っていくためには何をしてもいいなんて考えは、大きな間違いであるということを思い知らされた。

「神の国と義とを求めよ。するとこれらのものは添えて与えられるであろう」

(聖書)

 神の国とは神が所有する領土であり、神の義とは、神が良しとするところである。

 これらのものとは、生活の糧であるが、それを上回るものが神から与えられるという意味である。


 最初は誰でも素人からさ。

 この世は、チャンスの波に乗るのが必要。

 聖書にも、チャンスはときと機会によるが、いつどのような形で訪れるかは誰にもわからないので、常に目を覚ましていなさいと記している。

 私にできることは、これしかない。

 少女の夢のようだが、できることから始めよう。


 私は、もう一度人生のチャンスさえあれば、自分も華やかな世界にいけると勘違いしたこともあった。

 しかし、華やかすぎる世界の裏には、いろんな人の涙、妬み、やっかみがあり、あまり売れすぎる芸能人は家庭の不幸に見舞われるという。

 チャンスをつかむ人は、何度も失敗し、そこから這い上がっている人たちなのだ。

 世の中上見りゃきりがない、下見りゃきりがないというが、世間には私の住んできた世界など想像もつかないほどの苦境に見舞われている人もいる。

 我が子が反社になった。刑務所に服役中である。ドラッグがやめられない。

 借金で苦しんだ挙句の果て、うつ病で自殺未遂を図った。

 言い出せばきりがないのである。


 しかし幸い日本は、児童福祉法違反があり、十八歳以下の売春、買春は禁止されている。

 ということは、LGBTの人はそういったものに利用されずに済むということであり、エイズや梅毒などの性病にかかる率も少ない。

 これは保護されたことである。

 


 

 

 

 


 



 

 

 

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