第6話 パワハラ詐欺店長の最後
現場を知らない雇われ店長の無茶な暴言ー朝の仕込みは一時間以内に済ませてしまえーに私は猛反論した。
だいたい、雇われ店長はいつも店には四時間しかいないのに、出勤簿には九時間働いているように記入しているという詐欺を働いている。
それに第一海田先輩は、一分の休憩も無しに、一日九時間も働かされている。
こんなことが続くと、確実に身体を壊してしまうのは、目に見えてわかっている。
「そんなのムリです。だって、私は一分の休憩もなしに、連日九時間も働いているんですよ。このことは会社の規定でも、違反しているはずです」
店長は、一瞬戸惑ったような顔をしたが、酔っ払った赤い顔で強気に出た。
「お前は無能な店員だ。だからうっかり休憩をあたえると、新人に仕事を奪われてしまうという親心から、わざと休憩を与えなかったんだ。
それが証拠に、お前はいつまでも皿洗い専門で、それ以上の調理の仕事はさせないだろう。それは教えても無駄だからである」
海田先輩も含め、他のアルバイトは、雇われ店長の暴言に半分あきれ顔で絶句したように、口をポカンと開けて聞いている。
無理もないだろう。店長に反論できる勇気あるバイト店員は、そう存在しない。
店長はそれをいいことに、さらに横暴になり、店長の権限を振り回しつつある。
「この前、実名をあげることはできないが、ある店舗の店長がお忍びでやってきた。海田の仕事ぶりを見て、呆れたと言っていた。
遅いし、覇気はないし、こんなバイトがいるから、いつまでたっても売上が伸びない。こんな店員は、機会があれば辞めさせるべきだと言っていたぞ」
海田先輩は、猛然と反論にでた。
そりゃそうだ。海田先輩は、休憩も無しに朝九時から夕方六時まで働かされ、その上タダ働き。
一応、労働基準法としては、七時間の労働時間の内、三十分休憩を与えなきゃならないという法律さえあるんだ。
これじゃあ、身体も壊してしまう。
「そんなの、無理です。だって、私は一分の休憩無しで九時間も働いてるんですよ。
このことは、会社の規定でも違反している筈です」
店長は、一瞬戸惑ったような顔をしたが、すぐ強気に出た。
「お前は無能な店員だ。だから休憩を与えると、新人に仕事を奪われるという親心から、わざと休憩を与えなかったんだ。
それが証拠に、お前はいつまでたっても皿洗い専門で、それ以上の調理の仕事はさせないだろう。それは、教えても無駄だからだ」
海田先輩も含め、他のアルバイト店員は、半分あきれ顔で黙って聞いている。
無理もないだろう。店長に反論できる勇気あるバイト店員は、そう存在しない。
店長はそれをいいことに、更に横暴になり、店長の権限を悪用している。
「この前、実名をあげる必要はないが、ある店舗の店長がお忍びでやってきた。
海田の仕事ぶりを見て、呆れたと言っていた。
のろいし、覇気はないし、こんな店員がいるから、いつまでたっても売り上げが伸びない。こんな店員は、機会があれば辞めさせるべきだと発言していたぞ」
海田先輩は、反論した。
「それが実話なら、証拠を見せて下さい。その店長を呼んできてください」
店長は、何かをごまかすように多少口ごもって、無理やりに発言した。
「おまえ、気ちがいか。精神異常か。そんなこと、言えるわけないだろう」
そこまで反論するということは、裏を返せば事実無根のウソだということか?
ウソを事実のように転化して発言するのはたやすいことであるが、事実をウソのように発言するのは難しいという。
店長の発言は、たぶん八割方までウソだろう。
だって、毎日労働時間をごまかすような詐欺店長及び給料泥棒である。
一日五時間しか勤務していないのに、出勤簿には十時間勤務しているように記入して、十時間労働に見合う給料をもらってる給料泥棒である。
なのに、バイトの身分の海田先輩にタダ働きをさせようとする、とんでもない詐欺店長、給料泥棒に加える悪徳店長である。
私は他人事とはいえ、火の粉が自分に降りかかってくるような気がした。
私と海田先輩とは同い年であり、私は自分まで海田先輩の二の舞にあるのではないかという不安感が、一瞬私の脳裏をよぎった。
「とにかく私はタダ働きなどできないし、バイトの身分がする義理などない筈です」
海田先輩は、決して折れることはなかった。
そりゃそうだ。バイトというのは時給で雇われているに過ぎない。
それにひきかえ正社員である店長は、雇われとはいえ給料はバイトの二倍、ボーナスまである。
バイトをこき使った上、身体を壊した時点で解雇に追い込むつもりだろうか。
もしそうだとしたら、私もバイトの身分である以上、黙って見過ごすわけにはいかない。
詐欺店長の海田先輩に対する横暴さは、日ごとに増していった。
ある日、海田先輩に
「ねえ、お宅、主人とは週何回? もちろんセックスの方だよ」
海田先輩は無視した。
アルバイト店員もクビになるのを恐れて、店長に逆らう人はいない。
それをいいことに、店長は権限を悪用している。典型的なパワハラじゃないか。
許せない。私は義憤がわいた。
ある日、店長がアルバイト全員を集合させて発言した。
「今月から食事代を徴収することになった。一人二千円徴収する。海田さんから払ってくれ」
海田先生は払ったが、あとのバイト店員は払わなかった。
翌日の閉店前の朝食のとき、ある店員が海田先輩に耳打ちした
「あの二千円払ったの? あんなの、出鱈目詐欺だよ。
あの店長は借金まみれで、返済に追われていてこんな詐欺を考えついたんだ。
しかし、転職するとき、この店に勤務していたということがわかったら、非常に不利なものを背負うことになる。
躾の悪い非常識な子の多い店というレッテルを貼られ、不採用になることが多い」
海田先輩は、怒りに顔を歪めていた。
朝食が終わった十一時頃、店長が出勤してきて、怒鳴り声が聞こえた。
「おい、この皿洗い、まだ全部終わらせていないな。誰がしたんだ」
「海田さん」
店長は、吐き捨てるように言った。
「はい、海田さんだけ、朝ごはん抜き」
店長が来た時点で朝食は終わっていたが、二千円もだまし取った海田先輩から朝ごはん抜きはひどい話である。
翌日、海田先輩は退職届を提出した。
それから一週間後のことだった。
本社社長とエリアマネージャーが、直々に視察にやってきた。
エリアマネージャーが、チーフとアルバイト全員を集めて発言した。
「店長はどこに行った?」
チーフが「店長は今、歯医者に行っています」
「どこの歯医者だ? そして何時頃に帰ってくるんだ? その歯医者に電話をかけて、調べさせてもらう」
チーフは急に、もごもごさせて答えられない。
そりゃそうだ。店長は歯医者などに行っていない。
店長の弟子ともいえるチーフの命令で、口裏を合わしているだけなんだ。
「もう一度だけ聞く。その歯医者の名前を教えてくれ。電話番号はスマホで調べるから」
エリアマネージャーは、がっくりとため息をついた。
「やっぱり答えられないのか」
ひやりとした雰囲気が、店中に漂った。ついに嘘がばれるときが訪れる。
「実はいろいろ店長について、良からぬ報告を聞かされてるんだ。
店長が労働時間をごまかしていること、いつも十一時から三時くらいまでの五時間しか勤務していないのに、出勤簿には十一時間勤務しているように記帳していること。店長の立場を利用して、法律違反のセクハラ行為をしていること。
これが事実だったら、店長は給料泥棒の詐欺師という犯罪者ということになる」
エリアマネージャーは、深刻な顔をして言った。
本社社長はその様子を、半ば呆れたような顔で見ていた。
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