8 ~飛激の少女~ HIGEKI
やや
そこにある屋上スペースには、やっぱり誰も
辺りを見回すと北の方に、関東平野には異色な、平地に一つだけポッコリと顔を出す
朝とお昼と夕方に風を生みだすそれは、昔、ディザイアーと戦っていた魔法少女が大暴れして
それにより、東京北部とその近辺の大幅な区画整理が
その時のディザイアーは、日本史上でも記録的な強さと大きさの超大型ディザイアーだったと、二年生の地理の時間に習った気がする。あれ? 日本史の授業だったかな? 経済……ではなかったハズ。
ただ、その山は鎮座していると言う表現が一ミリも当てはまらないような
カエルかアンコウのようなずんぐりとした図体に、魚のようなヒレで地面を
「な、
「現実をあるがままに受け入れろ。
「っ! 分かってる!」
テリヤキの遠回しな
ささやかな大きさのグラウンドを飛び越え、西に
離れた学校の屋上から見えただけでも、十人以上の魔法少女が集まっていた。
それなのに、あの大型ディザイアーは警報が出てから数十分でこんな内陸まで上がってきている。多少は足止めできているみたいだけど、それでも
でも。
関東は日本でも指折りのディザイアー出現スポットだ。
そんな関東やその周辺を守る
それだけ
たった一つの魔法も使えない
色んな路線が乗り入れる
もう正面には、
『アンタはここらじゃ
お昼休み、リサ先輩に貰った自信が胸を
その高鳴りに
そうだ。
私は、魔法少女になったばかりの半年前とは、違う。たとえ未だに魔法が使えなくても。
「
自分に出来ないことをアレコレ考える必要はない。
みんなが攻めきれていないなら、
魔法が使えなくても、いや、魔法が使えないのなら、魔法が
「理解しているのなら、特には何も言わん。だが、魔力とは己の気力も源とする。いくら貴様のそれが膨大と言えど、気落ちすれば、
頭に乗っていたテリヤキが、渋声を鳴らして前足で
「わ、分かってるよ! ていうかテリヤキが余計なこと言うから、せっかくの気合が紛れちゃうじゃん!」
「なんだと小娘!
「なにおう!? テリヤキこそハチョーが合う女の子が他に居ないって半べそかいてたんじゃん」
「だっ……! 誰がそんな情けない
「言われなくてもやるよ! ていうかテリヤキがわざわざ言うからやる気そがれちゃったよ!」
「何を
「ちょっ。どこ見てるのテリヤキのエッチ!」
頭の上の
それに対し、テリヤキは
「誰が貴様の
「そうだった!」
テリヤキに言われ、改めて
もう、ヤツが
テリヤキがいつものように
右手に握る杖に左手も
環七に出たすぐその先に、何度と見た
大きな怪我はないみたいだけど、衣装や体はもうドロドロだ。
「リサ先輩!」
「っ!!」
その顔は、驚きと
「まったくアンタは、不用意に突っ走るなっていつも言ってるでしょうに。でも、いいところに来た」
その苦笑いを含み笑いに変えたリサ先輩は、大きく息を吸い込んで、様々な攻撃を繰り出す色とりどりの少女達へ
「みんな! トモナが来た。とりわけ大きいのをブチかますわよ! 一点集中で道を
「「「おぉ――!」」」
少女達はすぐに声を
剣を振り、木の枝を回し、杖を突き立て、
それでも、魚のような大型ディザイアーは
「「させるか」ない!」
が、止まない魔法少女達の総攻撃によってすぐに地面へ撃ち落された。
「——―の
体勢を
「今だ!」
レモン色の少女が叫ぶ。
ここに来てから、
その一撃一撃は、
もうこの場の誰もがすぐには動けないだろう。
「はぁぁあぁあああああああああああああああああああああああ!!」
皆の想いを魔力に乗せ、力強く大地を蹴る。
「「いけぇ!!」」
杖から尾を引いて
今まで
狙うはリサ先輩が繋いでくれた大きな頭の
「いけっ、トモナ!」
「ぉぉおおおおおお! ――あたしの! 今の、ありっったけを!! くらええええええええええええぇぇぇぇえええええぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇええええ之えええええええええええええ!!!」
杖の先の玉に込められた、はち切れんばかりの魔力を凝縮して
バリバリバリバリバリィィィイイイ!! と耳を
万力のような衝撃が、大型ディザイアーにぶつけた魔力から伝わってくる。少しでも気を抜けば、魔力ごと
空気を
「こ……ん――の、ぉぉぉおおおおお!」
「くげぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁ」
がむしゃらに放ち続けた魔力の
シロナガスクジラもかくやといった超重量を受け止めた環状七号線に浅草花やしきよりも大きいクレーターを空けて、魚ガエルの大型ディザイアーはゆっくりと宙を舞い踊る。そのまま地面に落下しその巨体に見合った
対する
「あたっ、あでっあだっだだだ………」
クレーターにあわや落ちると思うギリギリ手前、ゴロゴロと転がる
「まったく、最後まで締まり切らないわね、アンタは。
寸でのところで
「えへへ………」
猫のように首根っこを掴まれ、力の抜ける
が、ズンっっ……、と
その場に居た全ての魔法少女が、空気の凍り付く感触を共にした。
肌という肌が痛い。無意識にそれから
「
「—————ッッ」
昆布を腕に巻き付けた
どこかで水の
「…………くぁ、っっぁっぁっぁあ」
パラパラがらがらと、
良く晴れた午後の日差しがその異様で不釣り合いな黒い体を嫌にはっきりと映し出す。
遠くで
もちろん、意識には届かない。
何か考えなきゃと停止した脳で思うも、思考回路は時が止まったように顔の表情を奪い去る。
「ッぁッぁッぁッぁッぁッぁッぁ………」
「
「あ――――――――――――――」
閉まらない口から音が漏れ出る。
普段は
いや、飛んだとようやく認識できたのがそこだったのだ。
「トモナぁ!!」
けたたましく過ぎ行く風切り音の向こう側、数メートル隣から聞こえる声に顔を向けると、そこには同じく空を飛ぶリサ先輩の姿があった。
私と共に居たリサ先輩も、一緒に飛ばされたんだ。
「り、サ……せんぱ―――」
徐々に離れていく先輩魔法少女を呼ぶ声は
「——ッあ、がっっ」
吹き飛ばされた反動で少なくなったなけなしの肺の空気を吐き出し、背中から建物にぶつかった衝撃で、
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