サビィと言うケットシー

 サビィ、鼈甲髪の控えめなケットシーである。

 その取り扱い説明をトーラがミケトに伝える。


「まあ、あいつはちょっとばかり、男が苦手なんだ。それと人見知りでもあり、暇さえあれば機械を弄っている」

「う、うん」

「そんなサビィが、珍しく自ら友達になりたい子がいると言ってきたんた。つまりお前だな」

「え? 僕は特に問題は無いですが?」


 同じケットシーの友人を作る分にはミケト自身大賛成である。


「ところがだ、さっきある問題が生じてしまった」

「な、なんですかそれは」

「それはな……」

「それは」


 トーラはミケトを指さし、答えを言った。


「ミケト、お前が男だと言う事だ!」

「にゃ? え?」

「さっきも言ったろ? サビィは男が苦手って」

「そう言えば、言ってましたね」

「サビィは、オスケットシーとしての友達じゃなく、三毛で長い髪のメスケットシーとしての友達を求めている」


 ミケトは、トーラの説明の理解が追い付かず困惑している。


「つまりだミケト、サビィと仲良くなるのなら、お前が男と言う事実を伏せてもらいたい」

「えっと、それだと、僕がサビィさんを騙しているみたいで……」

「それでいい、むしろ騙せ! 後でなんとかするから!」

「あらあら、なんの相談かしら~」


 色々な元凶である、直属上司のシロンがやって来て、ミケトとトーラの会話に参加する。


「ふふ、早速ランチとは仲がいいのね、そう言えばサビィとノワルは?」

「サビィは引きこもって機械弄り、ノワルはその辺で寝てるかネズミでも取っているかもしれねーよ。それよりシロン、お前ミケトが男だって黙っていたのか?」

「猫聞きが悪いわね、それはあなた達をテスト……」


 トーラは、シロンに向かってフーッと声をあげた。


「ごめんなさい、言い忘れでした」

「まあ、そんなことだろうとは思って居たが、シロン、その事でちょっと問題が発生している」

「何かしら~」

「サビィがミケトの事を女だと思い込んでいる」

「それは大変ね~」

「って、全部お前のせいだよシロン」


 トーラは、年上や身分も関係なしにシロンにズバズバと物申すのでミケトはすごいやと感心していた。


「だったらトーラ、私がサビィに伝える? ミケトちゃんはミケト君でした~って」

「いや、それは無しの方向だ。もはや状況は不利だ。だったらミケトにはしばらく女でいてもらう」

「僕は男だよ」

「だから、サビィが慣れるまでは、ミケトには女のフリして仲良くなってもらう。シロンはシロンでそれがバレないようにフォローするんだよ」


 必死に作戦計画を伝えるトーラに対してミケトはある疑問を抱く。

 なんでトーラはこんなに必死に対サビィ計画を通そうとするのか、ミケトはその事について質問した。


「あの、トーラさんなんで必死なんですか?」

「ふふ、ミケト君、聞きたい?」


 チームリーダーであるシロンは理由を知っているようである。


「トーラはサビィに伸されているのよ!」

「え、え? あの大人しそうなサビィさんに」

「あーうん、そうだな恥ずかしい話だけど」


 トーラはその当時の話をする。


「アレは、サビィが入隊した時だったな。シロンがサビィが男が苦手だったと言う事を言わなかったせいで酷い目に遭ったんだ」

「酷い目?」

「ああ、オレはこんな形だろ? それに胸もそんなに無かったから、そのせいで女と思われてるのかなかったようで、気軽にサビィに触ったらクロスカウンターを貰って、気づいたらメディカルルーム送りだ」

「それが所謂サビィ最強伝説の」

「うるせえ、最強はあんただろう。その後、オレの事を女だと知ったサビィが泣いて謝ってきたと言う話だ」

「それじゃ、サビィさんって物凄く強いアタッカーなの?」


 ミケトの質問に対して、トーラは首を振り、シロンがサビィの入隊ポジションを教える。


「サビィはメカニック兼ドライバーよ、拳の実力は下から数えた方が早いけど」

「まさか、あんなカウンターをするとは……」


 しかし、ミケトが食いついた話題は拳の実力ではなく……。


「ドライバー? と言う事はサビィさん運転できるの? すごいや僕も18歳になったら免許取ろうと思っていたんですよ」

「ああ、ケットシー免許だったら別に人間基準じゃなくても合格すれば何歳からでもって、今はそう言う話じゃねーよ」


 このミケトの天然なのか計算なのかの言動にトーラはシロンに尋ねた。


「なあ、シロン、こいつ天然かそれとも計算か?」

「恐らく、前者ね優しい子だもの」

「そっか」


 トーラは少し遠くを見た。


 



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