青魚好きで悪いか

 食堂に着きトーラは注文をした。


「オヤジ、焼き魚定食2つ、それとネギ抜きで」

「わかってるよ、なんだ虎坊主、新しい彼女か?」


 早速、ミケトは女の子に間違われるが、それと同時にトーラが男の子扱いされているのに気づいた。


「えっと、トーラさんは女の子ですよね?」

「そうだよ! オヤジはいつもオレを男扱いをして茶化すんだ」

「ん? いつもなら、黒か斑といるのに今日に限っては可愛い三毛なんか連れて来るから」


 端から見れば可愛い三毛に見えるミケト。


「でも、こいつ男だぞ」

「ん、んん? すまん、ちょっと思考が追い付かねぇ、つまり虎坊主の嫁でいいのか?」

「なんでだよ!」


 このようなやり取りが続いたあと注文した焼き魚定食(ネギ抜き)が出来上がった為、空いている席を探した。


「おい、虎坊主、ダイオウイカのあたりめを付けるの」

「いらねぇよ! なんだそれは、ほらミケト、お前もそれを持って席に着く」


 ミケトも焼き魚定食(ネギ抜き)のトレーを持って席に着いた。


「ったく、あのオヤジめ、オレらケットシーをなんだと思っているんだよ」

「うちの子可愛いとか?」


 ミケトの答えに対しトーラはちょっと赤くなった。


「ば、バカ! なんて事を言うんだよお前は」

「だって、僕のおとーさんは、うちの子が可愛いってよく国会中継で言っているよ」

「あーミケト、ちょっと待て、情報が大渋滞を起こしている……おとーさんだぁ? ああ、お前の飼い主か」

「そうだよ、トーラさんは家族に言われない? 可愛いって」

「そりゃ、うちのアニキは……ってミケト早くメシ食え!」


 このまま、可愛いで押しきられそうなトーラは、話題を変えるべくミケトに目の前の食事を取るように促した。


 焼き魚定食、ご飯に味噌それと鯵(アジ)の焼き魚と全体的にネギ抜きが施されているが、裕福な家庭育ちのミケトは気になった点があったのでトーラに質問した。


「トーラさん、トーラさん、この魚って食べられるんですか?」

「はぁ? 食べられるからメニューにあるんだよ」

「へぇ、鮪(マグロ)とか鯛(タイ)以外に食べられる魚ってあるんですね~」


 育った環境の違いか、このミケトの発言がトーラの逆鱗に触れた。


「おい、青魚バカにすんな!」


 裕福な実家のミケトとは反面、それなりの実家で青魚はご褒美だったトーラにとっては青魚崇拝はとてつもない物だった。

 そして、トーラによる怒涛の青魚プレゼンが始まってしまい、ミケトは食べる所ではなくなった。



「トーラさんがものすごく魚が好きなのはわかったから、そろそろ食べようよ、ね」

「あー、しょうがねーなこれぐらいにしてやる」


 怒涛のプレゼンもようやく治まり、焼き魚定食を食べ始める。


「まあ、こんな風に語るのも久しぶりだな」

「前にも誰かに語ったの?」

「そうだな、サビィにも語った事がある」


 サビィと言えば、ミケトが食堂に連れて来られることになった経緯の子である。

 ミケトは、そろそろ本題についてトーラに振ってみた。


「えっと、そのサビィさんの件で用があったのでは」

「ああそうだったな」


 トーラは味噌汁を飲み終えた後、サビィについて話をした。

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