そもそも、猫妖精族とは

 シロンの膝で寝ているミケトは夢を見ていた。

 まだ幼く、ケットシーに成り立ての頃の夢である。


 そもそも、猫妖精族と言うのは只猫の突然変異の一種なので、生まれた時は只猫でも成長につれてケットシーになってしまう為、大抵は飼われた家でそのまま育てられるか、ケットシー専門施設に保護される等の選択肢がある。


 ミケトの場合、三毛猫で尚且つ雄と言う事で高値になる事が必至であり、今のミケトの育ての親である萩原議員(当時はまだ先代の秘書)はミケトを買おうとしたが、ミケトの産みの親の飼い主の娘さんに一目惚れしてしまい結婚、そのままミケトは萩原議員の家の子になった経緯であった。


「おかーさん」

「ん? なあにミケト君?」


 ミケトが思わず呟いてしまったが、目の前にいるのは自分を生んだ母猫でも、育ての母でもなく、白い髪をしたケットシーのお姉さんであった。


「!!!!!」


 ミケトは思わず飛び起きてしまったが、シロンはミケトをまた膝の上に寝せた。


「もう、じっとしていなさい、あなた結構体力使ったんだから」

「う、うん……」

「それに、なんで家出なんかしたの? 基本猫は家に憑くモノ、ケットシーなら尚更よ」

「僕が、僕がいることによって、今のおとーさんは無理をする。だから家を飛び出したんだ」

「確かにあなたのお父さんはケットシーの地位向上に積極的に活動してるけど、君がいなくなっちゃったら本末転倒よ」

「それでも……」


 色々と悩むミケトにシロンはある提案をする。


「どうせ家出するんだったらいいところ紹介するわよ」

「何処ですか? 自治区ですか?」

「彼処は、行くまでが危険ね、自治区まで連れていくといいながらマタタビ漬けにされて更に治安の悪い北の国に……」

「え、ええ……」


 そして、シロンはミケトに答えを教える。


「んーミケト君に来てもらいたいのは私のチーム。ちょうどあなたみたいに前衛を任せたい子を絶賛受付中だから」


 ミケトは少し考えた後で答えを出す。


「わかりました」

「それじゃあ、まずはあなたの家に帰りましょう、親御さんの許可も必要だし」


 その後、シロンはミケトを家まで送り、ミケトの特殊部隊スカウトの打診をミケトの育ての両親にした。


 最初はミケトを連れ帰ったシロンに感謝をしていたミケトの両親だったが、特殊部隊の話をした所、難色を示していた。


 最終的にはミケトが、シロンが凄く強い事を説明しつつ、もっと強くなりたいと願ったミケトに根負けをし定期的に帰って来るを条件に入隊が許可された。


 しかし、この件が原因で萩原議員が防衛省に予算を増やそうとか言ってまたやらかしたのは言うまでではなかった。

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