なにもしてないよ

領域

なにしてるの？っていう言葉が嫌いだ。特に用もないのに聞いてきて心の中に入ろうとしてくる。実際わざわざ聞かなくても分からないものなのか。まぁ聞いてくる人の意図はだいたい半分興味、半分理解不能だろう。

小さい頃よく一緒に遊んだアキト君はアリを見るのが好きだったからアリを見ていたのに「なにしてるの？」と周りにいた子に聞かれ「アリを見ているの」と返事をしたら少し引かれていた。なんてかわいそうなんだ。今思うとその時からだろうか。その言葉が嫌いになったのは。

スマホを持ってからはさらに面倒だ。仲良かった子から「今なにしてるのー？」と連絡がきたらちょっと萎える。特に異性ならなおさらだ。なんでってそりゃ嫌いな言葉に時間指定が追加されたからだ。え？未読しろ？未読したらそれは質問の回答としては不適切なのだ。たとえば、忙しくて既読できなくてそのあと既読した場合、それはもう今ではないのだ。つまりこの質問の意図は今を知りたいのだ。後でも先でもない。今、なにをしているのか。読者も気づいてきているのではないか。これは普通の何気ない質問かと思いきやひどい束縛なんだ。たまに束縛がひどい人を見かけるが（連絡は5分以内など）この言葉はその領域になりかねない。

それならなんていえばいいの？と思うだろうが自分もこれといって代わりになるものがないのだ。チクショー。あの時あの場にいなければ。仕方ない。過去は過去。今だけを考えるんだ。

いや無理だ。なぜならついさっき言われてしまったのだ。

「なにしてるの？」

さすがに自分もこれまでたくさん言われ続けたから模範解答を見つけているのだ。

「え、なにもしてないよ？」

そうこれが模範解答。なにもしてない。意味が分からないだろう。なにかしているから聞かれる。もしくはなにをしているのか知りたいから聞かれるのになにもしていないと答えるのだ。自分はなにか人から興味を持たれることをやったのだろうか。それとも理解できないことをやってしまったのだろうか。