予知夢




🔴みなさんは「予知夢」をご存じですか?


睡眠中に見た夢とそっくりそのままの光景が、次の日か、その次の日か、はたまたずっと先の未来で繰り広げられるという現象があるそうです。


睡眠中でなくてもいいのですが、いずれにせよ、その夢のことを「予知夢」といいます。


よく「デジャヴ」と同じものと考える人がいます。


しかし、両者は別物。


デジャヴは、今初めて体験したことなのに、以前にも体験したことがあるように感じる現象のこと。


原因は、脳で行われている情報処理ミスと言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。


一方で予知夢は、前もって夢で見たことが、現実に起こった、という状態です。


ギャンブルに例えると、わかりやすいかもしれません。


ポーカーをしていて、生れてはじめてロイヤルストレートフラッシュを完成させたとします。


デジャヴの場合は、「あれ、前にもロイヤルストレートフラッシュになった気がするぞ」という感覚を持ちます。


予知夢の場合は、「ロイヤルストレートフラッシュが完成する」という夢を前もって見ていて、実際にカードを引くと、手札がロイヤルストレートフラッシュになる、という具合。


要するに、事前に予想できるかどうかがポイントです。


デジャヴの場合は、あとから「ああ、知ってた」と思うだけ。


後出しジャンケンみたいなもの。


しかし、予知夢は違います。


前もって、ロイヤルストレートフラッシュが完成することを知っているんですね。


予知夢を見ることができたら、たいへん便利に思えます。


先ほどギャンブルの例をあげましたが、予知夢を見ることができれば、競馬の万馬券を当てられるかもしれません。


この能力を使って金持ちになったり、危険を察知したりすることができそうです。


未来を予想することは、人類共通の「夢」でもありました。


この種のテーマが小説や映画で繰り返し描かれてきたのは、そのためでしょう。


有名な映画では、『NEXT -ネクスト-』『マイノリティ・リポート』、古いところでは、スティーブン・キング原作の『デッドゾーン』があります。


・2分後の未来を見られる

・将来、起こる犯罪を見られる

・核ミサイルの発射ボタンが押されるのを見られる


ここで注目すべきは、どの映画も「未来は変えられる」という前提に立っていること。


主人公は、予知夢で見た未来を、動かしようのない、絶対的な未来とはとらえておらず、なんとかして悲劇的な未来をさけようと行動します。


悪戦苦闘は実を結び、結末は予知夢どおりにはなっていません。


犯罪は未然に防がれ、核戦争は回避されるのです。


ハッピーエンドを迎えることができて、後味の良い映画に思えますが、私の知り合いのAさんは、この種のストーリー展開を「おかしい」と言います。


Aさんに言わせると、未来が予知夢どおりになっていないのであれば、それは予知夢ではない。


したがって主人公が見たのは、予知夢ではなく、ただの夢であり、主人公が「必ず~となるから、今すぐ逃げろ!」と話す未来の内容は、たんに彼の思い込みにすぎないのだ、と。


さらにAさんはこう続けます。


「映画なんてウソっぱちさ。未来を変える方法なんてない。


未来は、予知夢どおりに進むんだ。


考えてもみろ。


予知夢を見ることができるっていうのは、けっして幸せなことじゃない。


それどころか、地獄に決まってる。


だって夢の中で、確実に明日、交通事故にあうって、わかっちまうってことなんだから。


あらかじめ知ってるなら、事故をさけられそうに思うだろ?


でも、無理だ。


試したことがあるんだ。


事故にあって、左足を骨折する夢を見たことがある。


オレは怖くなって、家に閉じこもったよ。


これなら絶対に事故にあわない。


当時、オレはマンションの5Fに住んでた。


5Fでスマホをいじってるオレが車にひかれるって、どういう状況だ、そんなことありえない、ってオレは安心したもんさ。


だけどね、オレは大事なことを見逃してた。


予知夢は未来を教えてくれる。


でも、その未来が『いつ』やってくるかは教えてくれないんだ。


オレは3週間、マンションから一歩も外へ出なかった。


でも4週間目、さすがに外へ出た。


仕事の都合もあったし、だんだんバカらしくなってきたんだ。


まだ起こってもない未来にビビッて引きこもるなんて、左足を骨折するよりひどい状況じゃないかと思ってさ。


そしたら、マンションのエントランスを出た瞬間に、猛スピードで曲がってきたタクシーにひかれて骨折した。


もちろん、左足だ。


だからさ。


無駄なんだよ。


未来を変えるなんて。


予知夢なんて、見るもんじゃない。


だいたいオレなんて、自分がどういうふうに死ぬか、もうわかってるんだ。


いつ死ぬかは、わからないけど。


そりゃもうひどい死に方でさ。


予知夢を利用して、いい思いをしたこともあったから、バチが当たるのかもな。


とにかく、オレはいつか山へつれてかれて、生きながら穴の中へ埋められる。


その日がくるのを、ビビりながら生活しなきゃならない。


こりゃ、地獄だよ」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る