第131話 エピローグ

 それから、お父さまとお祖父さまは、年が変わる前に、西都に戻って来て下さった。


 その間、嘉承と瑞祥の三十六家の大人達が厄災の後処理に借り出された二年前に、留守を預かっていたお祖父さまが私にして下さったように、父様が、毎朝、私が朝食を済ませるまで、同じ席についてくれた。父様は夜勤やオペが長引いて帰りが深夜や、明け方になることもあるから、毎日でなくてもいいのにね。当初はぎこちなかったが、毎日のことなので、段々と慣れて来て、もう、父様といても緊張しなくなった。


 土御門さんは、当初、一ヶ月の逗留予定だったが、彼もまた、お父さまが戻ってくるまで、残ってくれた。その間、私の魔力制御の特訓に、例のチェスで付き合ってくれた。賀茂さんもそうだけど、土御門さんも、教えるのがめちゃくちゃ上手だ。陰陽大学校で、理論建てて学んだ人達は、初期魔法が使えない、どこぞの冥府の魔王サマとは違うよね。


 そして賀茂さんは、宰相にかけあい、議会にかけあい、学習要綱を変えた。来年から、私たちは、物の怪について習うことになる。監修は陰陽寮なので、妖が悪いやつらばかりでないと教えてくれると思う。陰陽大学校でも、魔法理論と実技に抜本的な変更があり、後者で私のゴーレムが採用され、良いお商売をさせてもらっている。牧田と料理長と世界美食制覇の旅も、そう遠くないはずだ。


 最後に、行く人。来る人。


 梨元宮が帝都に戻ることになった。西都の監視の意味がないと報告し、宰相が激しく同意したという。今後は、内務省で宰相のお手伝いをするそうだ。香夜子姫は、見るからに落胆していたが、取り巻きのスケカクコンビも家族で帝都に引っ越すことになり、三人で「帝都姫の会」の発起人になるそうだ。あの三人は、西都で何を掴んだのか。三人の親たちが、帝都に行くのは、内裏の深刻な人手不足によるものだ。検非違使以外にも、各省庁で消えた官吏たちの穴を埋めるのは大変で、みっちー宰相が日々、発狂しそうになっているらしい。


 そして来る人は。

 何と、東宮殿下が、西都大学で学びたいと編入試験を受けて合格された。来年の春から、西都大学二年生になり、瑞祥家で下宿されることになった。仲の良い瑞祥のお兄さま二人も嬉しそうだ。



「ふーちゃん、準備はいいー?」

「はーい、今、行くよ」


 真護と私は、あれから毎週末に小野家の領地の山科まで出かけて、明楽君と三人一緒に、峰守お爺様に【風壁】の訓練を受けている。制御も、少しずつだけど上達してきたので、同じように、少しずつだけど、痩せてきた気がする。


 そして、いつか三人で空を飛べたら、楽しいよね。



 第一章完結



 ―――――――――――

 終わりました!8月後半から足掛け半年。最後まで読んで下さって、ありがとうございました。近況ノートでご報告した通り、一章で出て来たキャラの短編を何本か投稿する予定です。間違いが多いので、一話から見直します。たとえば、速水凪子姫、侯爵令嬢になっていたようです。大変失礼しました。皆様に、少しでも面白かったと思って頂けた作品になっていれば、幸いです。

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