先輩と異世界弁当を食す
あれから数人が来店するだけで、ほとんどヒマだった。
接客というか、カウンターでぼんやりしている時間の方が多かった。
現在は朝から居座っている
親父曰く、平日にしてはいる方らしい。
昼になって親父と交代。
俺と先輩は昼休憩に入った。
リビングに置かれている親父特製の『異世界弁当』を戴いた。
中身は、白飯にドラゴンの肉(唐揚げ)、ゴブリンの腕(ブロッコリー)、ドラゴンの卵(卵焼き)、スライムゼリー(ただの青いゼリー)という内容だった。
てか、ゴブリンの腕って……。
「これ、異世界弁当!」
「先輩、知っているんですね」
「もちろん、土日は通っているからね。でも、いつもお昼過ぎに来るから食べる機会がなかったんだよね」
「そういうことでしたか。では、一緒に初異世界弁当ですね」
「うん、美味しそうだし楽しみ」
いただきますをして、俺は割箸で唐揚げを摘まみ一口
「カリカリでうまっ……!」
「ジューシーだねぇ。ご飯が進んじゃう。――あ、そうだ、愁くんに食べさせてあげるね」
「……せ、先輩」
「ほら、遠慮しないで。あ~ん」
先輩からドラゴン肉をもらい、俺は涙が零れるほど幸福を感じた。やっぱり、先輩は優しいなぁ。
そうして甘い一時を過ごしながら、先輩とお昼ごはんを食べて――早くも午後。
結局、学校は休みにして仕事を続行することにした。たまには気分転換にいいだろう。先輩と一緒に過ごせる時間は貴重だし。
再びお店へ出ると、まだあの
けど、なんだろう……少し客が増えたか?
「愁、戻ってきたか」
「おう、親父。飯美味かったよ」
「味付けが濃いから心配だったが、口に合ったようで良かった。自分はこれから飯にする。しばらく任せたぞ」
「おう。ごゆっくり」
親父と入れ替わり、接客を続ける。
おっと来店だ。
「「いらっしゃいませ~」」
その後も次々にお客さんが来た。
……む? どうなっている。午前中はあんな
「ねえ、愁くん。人増えてない?」
「そ、そうですね、先輩。テーブルが埋まってきていますよ」
俺もだが先輩も大忙し。
幸い、オーダーは最新のタブレットオーダー。注文を取る必要はないのだが……って、誰が調理とかするんだ?
「どうしよう、愁くん。注文いっぱい入ってるよ!」
「そ、そうですね。どうしましょう……」
困ったぞ。親父は休憩に入ってしまったから、料理を出せないぞ。てか、どんどん客も増えるし……本当にどうなっているんだ!?
このままではパンクする。
どうしたものかと焦り始めていると店の奥から声を掛けられた。
「お疲れ様~、新しいバイトさんかな?」
「え、どなたですか?」
「私は
そんな人がいたんだ。しかも、とびっきりの美人じゃないか。まるでモデルだぞ。大人の魅力満載でキラキラしているなあ。
「俺はこのお店のオーナーの息子です。秋永 愁です」
「え、そうだったの! 店長の息子さん、初めてみた。可愛いね」
可愛いとか……お世辞でも大人のお姉さんにそう言われると照れるな。
「で、こっちの受付嬢が俺の先輩です」
「和泉 柚です。宜しくお願いします」
先輩は丁寧に頭を下げていた。
「へえ、いつの間に新人さん入っていたのー! しかも、めちゃくちゃ可愛いじゃん。お人形さんみたい」
「え、あの……わたしは一日限定で……」
「そうなの!? そんなのもったいないなぁ」
先輩は、
――って、そんな場合ではない!!
「そうでした、
「マジ! じゃあ、私が調理してくるね。二人は注文の品をお客様に届けて」
「「わ、分かりました……!」」
良かった。
客はまだまだ増えている。
いったい、どうしてこんなに増え続けているんだ……?
その原因は直ぐに判明した。
……こ、これは……あの
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