第30話 反撃

 12月12日の水曜日、俺は病院を退院する事ができた。


 あれからスマホの電源を切っていたせいもあって、途中で2度ほど千葉県警の交通安全課の警察官が様子を見にやってきて、2度目には事故に係る調書にサインをさせられた。


 その後に保険会社の担当者もやってきて、


「お電話がつながらなかったもので」


 と言いながら、事故の示談やその他の手続に必要な書類を揃えていた様だった。


 今回の事故は完全にこちらの落ち度という事で落ち着いてしまったが、相手の気持ちを考えればそれも仕方が無い事だった。


 俺の右手の骨折はまだ治らず、右手首がギプスで固定された状態ではあるが、その他の負傷箇所はおおむね回復し、普通に歩く事が出来るようになった俺は、保険会社の勧めもあって、退院に応じる事にしたのだった。


 まあ、保険会社は俺の入院費をできるだけ安く済ませたいという思いがあったのだろう。


 外資系金融機関に務めていた俺には、その気持ちはよく分かる。


 保険会社が「契約者の事を一番に考えている」なんてのは大嘘で、実際は「どう利益を上げるか」しか考えていない。


 単に「会社のイメージが悪くならないギリギリのサービス」を目指しているのが保険の支払い部門であり、俺の入院費だって最小限に抑えたいと思っているのは明白だ。


 事実、今回の事故による相手の車両やドライバーへの保障は真面目に行われている様だが、俺の車両が廃車になった事を受けて、次の車両を購入する資金は保険金だけでは到底賄えない金額しか貰えない様だった。


 しかし、俺はすぐに新しい車を購入する気にはならなかった。


 何せ「敵」はこうした「事故に見せかける工作」をする事など容易い事なのだと知ったからだ。


 ならば、工作できる物は極力身の回りに置かない方がいい。


 結局俺は、病院前を通る路線バスを使って帰宅する事にしたのだった。


 バスを降りて自宅に戻る道中は寒かった。


 それもそうだ。


 2週間近く入院をして、気が付けばもう季節は冬なのだ。


 ・・・佐智子が死んだあの日から、色々な事があった。


 あれからたった2ヶ月弱しか経過していないなんて思えない程に長く感じた。


 菊子も事故に巻き込まれ、つい先日、獅童や小林も黒いモヤの餌食になってしまったのだ。


 そして俺も、間一髪で逃れたとはいえ、あの黒いモヤの餌食になるところだった。


 ナチョスさん達は大丈夫だろうか。


 鮫沢教授にも会っておきたい。


 佐々木の様子も見てみたいところだ。


 彼等は、俺の周りにいる数少ない協力者であるにも関わらず、事故で入院してからというもの、彼等とは一度も連絡を取っていない。


 もしかしたら、彼等が俺に連絡を取ろうと試みていた可能性もある。


 俺が入院していたのはほんの2週間程度だが、音信不通の2週間というのは、さぞかし長い期間だろう。


 寒さが辛く感じた俺は、そう遠くない自宅まで、タクシーで帰る事にし、厚着に着替えて再び外出する事にした。


 近くのバス停まで歩き、そこから船橋の駅に向かう。


 そこからJR線で秋葉原に向かい、まずはナチョスの店に向かう事にした。


 自分で自動車を運転するのとは違い、電車に乗るのは不思議な感じがした。


 サラリーマンの頃は毎日電車で通勤していたのに、2か月ぶりに電車に乗っただけで、ここまで感覚が変わるものなのだという事にも小さな驚きがあった。


 電車は30分程で秋葉原に到着し、俺は秋葉原の駅を出て、ナチョスの店の方へと足を向けた。


 平日の秋葉原は、電気街とオフィス街が共存する不思議な空間だ。


 オタク文化を発信する電気街の中に、大きなオフィスビルが乱立しているのは、今の俺の心の中の混沌に似た雰囲気を感じた。


 駅から10分程度歩いたところにナチョスの店が以前と変わらずにそこにあった。


 以前と同じくシャッターが半開きになっており、俺はそのシャッターの下から中を覗き込む様に身体を屈めた。


「いらっしゃい」


 と身体を屈めている俺の背後から男の声がして、俺はバネ仕掛けの人形の様に、驚いて身体を起こして振り返った。


 そこには、店の向かいから出てきたナチョスの姿があった。


「やあ、ナチョスさん! ご無沙汰しております!」


 俺はナチョスの変わらぬ姿に嬉しくなり、明るい声でそう挨拶をした。


「お久しぶりです。佐藤さん・・・でしたよね?」


 とナチョスはそう言うのに対し、俺は何度も頷いて、


「ええ、ええ! 佐藤です! ナチョスさんがお元気そうで、本当に良かった!」


 と言うと、ナチョスは俺の姿をまじまじと見てから、


「随分と大きな怪我をされてる様に見えますが、一体どうされたんです?」

 と訊きながらシャッターを少し上げて「まあ、立ち話も何ですし、どうぞ中に入って下さい」

 と俺を店の中へと招き入れた。


 俺は右手をかばう様にして店の中に入り、ナチョスが勧めるままに、用意してくれたパイプ椅子に腰を下ろした。


「右手のはギプスですよね? 階段で転んだとかですか?」


 ナチョスの質問に、俺は首を横に振り、


「いえ、実はちょっと大きな事故を起こしてしまいましてね」


 と言った。


「なんと・・・、それは大変でしたね。とはいえ、命に別状は無いんでしょう?」


「ええ、骨折や打撲で2週間ほど入院していましたが、命に係わる様な怪我はありませんでしたよ」


 ナチョスは少しほっとした様に、店の奥の冷蔵庫からミネラルウォーターを持ってきて、ボトルの蓋を開けて手渡してくれた。


「怪我を早く治すには、水を多く飲むのがいいらしいですよ」


 と笑うナチョスは、以前会った時と変わらぬ、いつも通りのナチョスだった。


 俺はペットボトルを受け取り、左手で持って水を飲むと、ひとつ大きく深呼吸をした。


 今回の事故が、人為的なものであった可能性について、俺はナチョスに話そうと思っていた。


 陰謀論や都市伝説に詳しいナチョスの事だ。


 俺の話を笑わずに聞いてくれるに違いない。


「実はね」

 と話し出した俺を、ナチョスはまっすぐに見返していた。


 そんなナチョスに、俺はこれまでにあった事を洗いざらい話す事にした。


 佐智子の死に始まり、様々な人々の死を目の当たりにしてきた事。


 船橋駅で起きた鉄道事故に菊子が巻き込まれた事なども、今も鮮明に思い出せるその情景を思い浮かべながら詳細に話した。


 それら事件の原因が、最初に見た「黒い球」から始まっているのではと、今は確信している事。


 新宿区役所の職員である佐々木との出会いや鮫沢教授との出会い、そしてそこで聞いた「酸化グラフェン」なる物質の話。


 更に陰謀論者の集いをサポートするウェブサイトのオフ会の話や柴田との出会い、そして柴田に紹介されるようにしてナチョスとの出会いに繋がった事。


 そして今回の自分自身が受けた事故に関する疑念。


 特に、マンションのエントランスで見た怪しい黒いパーカーの男の事などは詳しく話した。


 そして病院で入院中に起きた、小林刑事や獅童刑事の異常な死。


 さらに、自分自身も黒いモヤに包まれそうになって、ギリギリのところで回避する事ができた事なども。


 俺の話に目を逸らさないままゆっくりと頷いたり目をみはったりするナチョスに、俺はこれまで溜め込んでいた、やりどころのない感情の吐露にも似た勢いで、全ての事をできるだけ詳しく、できるだけ分かりやすくナチョスに伝えようとした。


「~だいたい、こんな感じです」

 と、一通り俺が話し終えたところで、ナチョスは大きく頷きながら、


「・・・なるほど」

 と呟いて大きく息を吐いた。


「佐藤さん」

 とナチョスが、ことさら真剣な眼差しで俺を見て、「僕が何故こんな陰謀論みたいな話を追うようになったのか分かりますか?」


 と訊いて来た。


「いえ・・・」

 と俺は言ったまま言葉が出なかった。


「僕はね、10年程前に、恋人をワクチンで失ったんですよ」


 とナチョスが言った。


 なぜ突然ワクチンの話が出てきたのかは分からなかったが、俺は黙って頷いた。


 ナチョスの話は続いた。


 昭和48年生まれのナチョスは「団塊ジュニア世代」と呼ばれ、第二次ベビーブームがあった時代に産まれた世代の一人だという。


 子供の頃は決して経済的に豊かでは無かったが、高度経済成長の最中にあった日本社会は、誰もが未来に希望を抱いていたそうだ。


 その頃の社会は、経済的に景気が良くなっていく流れがあって、親の世代は「夢のマイホーム」というメディアの宣伝に乗せられて、みんなが土地や建物を購入しようとしている時期でもあったらしい。


 日本の企業はほとんどが終身雇用制度を取っており、仕事の能力が低くても会社に解雇される事などほとんど無かったし、給与も年齢と共に上昇してゆくのが当たり前の社会だったそうだ。


 ナチョスが高校生の頃がバブル経済の絶頂期だったらしく、当時は夏休みのアルバイトで月に20万円稼ぐ事が高校生でも出来たという。


 ナチョスは当時まだ珍しかったパーソナルコンピューターに興味を持ち、独自にプログラムを勉強して、簡単なゲームを作ったりもしていたそうだ。


 いわゆるPCオタクというのか、インドア派で根暗な性格だったとナチョスは自分の過去をそう表現した。


 異性に興味はあるものの、決してモテるタイプではなく、彼女などつくった事も無いままに社会人になったそうだ。


 大学を卒業する前にはバブルの崩壊が始まったらしい。


 本格的なデフレ経済が始まり、就職氷河期が始まったのもそのころらしい。


 ナチョスは高校生時代からアルバイトをしていた秋葉原のPCジャンクショップに就職する事になり、PCの知識をどんどんと身につけて行ったそうだ。


 当時は店長の他に3人の従業員がいたらしいが、不景気が長引くにつれて店舗の売り上げは落ち、従業員の給与も安くなってきた事もあって、ナチョス以外の従業員は皆辞めて行き、どこかに転職する様になったそうだ。


 それから10年くらい経ったある日、高校の同窓会に誘われ、久々に同級生たちに会ったそうだ。


 そこで聞いた話は、ナチョスにとって衝撃だったようだ。


 まともな会社に就職できたのは半分くらいで、残りの半分は未だにアルバイトや日雇い労働の仕事をしていたのだという。


 当時のナチョスの月給は32歳にして手取り20万に満たず、自分は決して豊かではないと思っていたが、同窓会に参加した者の半数は、まともな定職にすら就いておらず、


「毎月決まった給与が貰えるだけでも羨ましい」


 などと、高校生の頃はナチョスの事を「根暗なやつ」とバカにしていた者達でさえそう口にした程だったそうだ。


 そんな中で、クラスでは目立たなかった女子の一人がナチョスに話しかけてきたらしい。


 彼女はカメラが好きらしく、秋葉原の小さなカメラ屋でアルバイトとして働いていたそうだ。


 秋葉原の街で時々ナチョスの姿を見かけていたそうで、その時に彼女の話で初めてナチョスはその事を知ったらしい。


 同窓会で彼女と話をするうちに打ち解け合い、やがて秋葉原で一緒にランチをする様になり、やがて恋人同士になったそうで、ナチョスが生まれて初めて彼女を作る事ができたのはその時だったそうだ。


 そんなある日、彼女とテレビで見た政府広報で「子宮頸がんワクチンの無料接種」というものを見て、彼女はナチョスに、

「無料なら受けておいた方がいいよね」

 と言って相談を持ち掛け、ナチョスも「そうだね」と勧めたそうだ。


 それがナチョスの悪夢の始まりだった。


 ワクチン接種を受けた彼女は、その日の晩に「気持ち悪い」と言ってトイレで吐いた。

 心配になったナチョスは

「病院に行った方がいいんじゃない?」

 と勧めたが、彼女は、


「大丈夫、ワクチンの副作用でちょっと体調がおかしくなるって聞いた事あるし、たぶんこれもそんなんだと思うから」

 と言って、その日は病院には行かなかったそうだ。


 しかし翌日、彼女は「身体が重くて動けない」と言って仕事を休む事になり、ナチョスは心配しながらも仕事に出かけ、夜に帰宅してみれば、彼女がベッドの上で苦しそうに唸っている姿を見る事になったらしい。


 あわててナチョスは救急車を呼び、急遽彼女を入院させる事になったそうだが、病院の診断では「原因不明」という事だった。


「ワクチンが原因としか思えない」


 ナチョスはそう病院の医師に伝えたが、


「情報不足で原因の特定は困難だ」


 と言われるだけで、ワクチンが原因だという事は認めてもらえなかったそうだ。


 入院にはお金がかかる。


 ナチョスの彼女は仕事を休んでいるし、ナチョスの給与だけでは到底彼女の入院費を支払い続ける事は困難だった。


 結局、1週間の入院を経て彼女は退院し、自宅で養生する事になった。


 毎週水曜日しか仕事が休めなかったナチョスは、仕事が無い日は一日中彼女の看病をし、仕事がある日は出来るだけ早く帰宅して彼女の面倒を見たそうだ。


 しかし、彼女の身体は大きな痙攣をおこす様になっており、彼女の意思で身体を自由に動かす事さえ出来なくなっていた。


「もうこんな身体いらない! 死にたい!」


 ワクチン接種から3か月が経つ頃には、彼女はそんな事を口走る様になったらしい。


「諦めないで! 俺も頑張るから!」


 そう言う事しか出来ない自分の無力さを、その時程恨めしいと思った事は無いと、苦悶の表情でナチョスは語った。


 それから数日後、ナチョスがいつも通りに仕事が終わり次第帰宅すると、自由に動かない筈の身体でキッチンまで這っていったのか、自分で包丁を使って首筋を切ったらしい彼女が、血だまりの中で絶命しているのを目の当たりにしたそうだ。


「・・・彼女を弔う為に生きて行こう」


 そう心に誓い、その後もワクチン接種によるそうした被害が無いかを調べていくうちに、沢山の事例を見つける事になったらしい。


 厚生労働省に問い合わせても「因果関係は無いと考えている」という回答だけでけむに巻かれ、病院の医師に相談しても「認証を受けたワクチンなら問題は無い筈」と答える事しかしてくれなかったそうだ。


 ナチョスはそんな事が続くうちに社会に対して大きな不審を抱くようになり、色々調べていくうちに、やがて「陰謀論」に触れる事になったそうだ。


 都市伝説や陰謀論の世界は、嘘か本当か分からない突拍子もない情報ばかりが溢れる世界ではあったが、それらの情報には全て「根拠」があった。


「もしかしたら、表向きの情報が全部嘘で、裏の情報こそが本当の事なのかも知れない」


 PCオタクを自称する自身の思考回路が常人と少しかけ離れている事は自覚していたが、さすがにぶっ飛んだ考え方だと頭の片隅では思っていたらしい。しかしそれでも「藁にも縋る思い」であった事もあって、それらの情報の信ぴょう性を調べていくうちに、「陰謀論」とされてきたその情報にこそ真実があると思われる事が次々と出てきて、そしてそれらの情報を繋ぎ合わせて社会を見ると、全ての事と辻褄が合う事が分かり、その後も様々な事件や政策を注視し、「彼女の命を奪った元凶」に迫る事を続けてきたとの事だった。


「・・・そうでしたか」


 ナチョスの話が終わったのを見計らい、俺はそう呟いた。


 ・・・俺と一緒だ。


 ナチョスも俺と同じ様な経験を経て、こうした裏の世界を垣間見る事を始めたのだ。


 ナチョスが無償でPCを作ってくれたのも、俺の事を同志だと思ってくれたからという事なのだろう。


「佐藤さん、その事故はお察しの通り、の手による工作と見て間違いないでしょう」


 ナチョスがそう言った。


 次に来る言葉が何なのか、俺にはわかる様な気がした。


「佐藤さん、そろそろ反撃に打って出ませんか」


 それは質問ではなく、ナチョスの意志表明の様でもあった。


 俺は痛む右手を少しさする素振りを見せたが、恐怖を超える、何か熱いものが込み上げているのも感じていた。


 ナチョスの昔話を聞いたせいかも知れない。


 しかし、同志がすぐ傍にいる事に心強さを感じたのは確かだ。


「ええ、やってやりましょう! 今度はこちらが攻撃をする番だ」


 俺がそう応えると、ナチョスは両手で膝を叩き、


「よし! じゃあ反撃の狼煙のろしを上げましょう!」


狼煙のろし? どうやってですか?」


 俺の質問にナチョスは立ち上がると、店の奥の部屋にある押入れの襖を開けた。


 その奥の段ボール箱を取り出すと、押し入れの奥に、更に奥に繋がる空間が見えた。


「隠し・・・部屋?」


 俺がどう表現したものかと呟くと、


「ええ、怪我人には少しツライかも知れませんが、この奥に隠し部屋があります。反撃の狼煙を上げる方法はコレですよ」


 ナチョスに手助けされながら押入れの奥に上半身を入れると、押し入れの奥には様々な機器が並ぶ畳3畳分くらいの空間があった。


 モニターが3台、キーボードが2つ。マウスも2つ。あとは大きな機器が天井まで積み上げられており、どれが何の機械なのかは俺には分からない。


 ナチョスが壁にあるいくつかのスイッチを起動すると、その空間にある全ての機器に電源が入り、押し入れの奥が、まるでSF映画の宇宙船の一室かの様な空間へと変化した。


「陰謀論者の集いはね、表には出てきませんが、実際には200万人以上の登録者が居るんです。彼等に協力を仰げば、相当な力になりますよ」


「200万人・・・」


 これまで何度も仲間を作ってきた。


 しかし、菊子や獅童刑事のような味方だった人が次々と亡くなり、結局は一人で戦うしかないとさえ思っていた。


 残された希望のひとつくらいのつもりでナチョスの元に訪れたが、これほどの力を蓄えていたとは・・・


 しかし、それも当然の事かも知れない。


 俺はせいぜい数か月間の活動だったが、ナチョスは15年以上も活動していたのだ。


 黒いモヤが発生する、ずっとずっと以前から・・・


 しかも200万人の仲間!


 そのうちのどれだけが本気で行動してくれるのかは分からない。


 しかし、200万人の「理解者」は得られるだろう。


 ならば希望はある。


 そしてきっと戦える。


 確かに敵は大きな組織かも知れないが、どんな大きな組織だって、200万人の組織なんて聞いた事が無い。


 世界一の自動車メーカーであるトヨタでさえ、世界中の従業員を合わせても40万人もいないのだ。


 ならば戦える筈だ!


 俺の中で猛烈に湧き上がる熱い衝動を感じていた。


 身体がブルブルと震えた。


 きっとこれは武者震いだ。


「いいですね! ここから反撃の狼煙のろしを上げましょう!」


 俺は痛む右手の事など忘れ、大声でそう叫んでガッツポーズを見せたのだった。

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