第68輝 三人
「桜木さんってリリー先輩と知り合いなんですか?!」
「え?」
リリーが来る寸前まで俺の前に壁を作っていた内の一人の眼鏡をかけた少女が、また俺の前に戻ってきて今度はさっきよりも興奮気味に聞いてくる。
流石魔法少女として活躍する先輩だけあって、リリーを慕う後輩も多いということらしい。目の前にいる子の他に、何人か俺にリリーとの関係を聞くような質問をしてきている。
「それに、リリー先輩が決闘するようなことを最後に言っていた。───本当?」
「え?! 桜木さんリリー先輩と戦うの?!桜木さんって強いの?!」
表情の変化がまるでない少女が、さっきのリリーが教室から出ていくときの言葉を聞いていたのか、メガネの少女の横から質問してくると、それに反応してさらにその隣の少し髪色が明るい少女が顔をこちらに近付けてくる。───って、近い近い近い!
無表情の子に下の名前で呼び捨てにされた気がするけど……最近の中学生、距離を詰めるのが早いのか? 男バレした後が怖いから、出来るだけディスタンスを取ってほしいんだが。
「ちょっと! 近いですよ明日葉!」
「うぇぇ?! ───あっ、ごめん!」
幸い眼鏡の子が引き剥がしてくれたから良かったが、それにしてもパーソナルスペースはどうなってるんだ……これが最近の中学生なのか……? ギャル怖い……
明日葉と呼ばれたギャルっぽい女の子は、俺が困惑しているのを表情から察したらしい眼鏡の子に咎められて俺に謝ってきた。
「ごめんなさい……! 悪い子じゃないんですけど、ちょっとおバカで……」
「おバカ!?」
「明日葉はおバカ」
「怜奈まで! もう、ひどいよー……」
眼鏡委員長系と表情筋死滅少女に陽キャギャルで一見チグハグな三人組だが、今のやり取りを見ている限り仲の良さは本物らしい。周りの他のクラスメイト達も温かい目で眺めていたリ、「三人ばっかり桜木さんを独占してずるい!」とヤジを飛ばしたりしている。
……独占ってなんだ独占って!? 俺は犬猫じゃないんだけど?!
「───んふ、ははっ」
そんな仲の良い彼女たちのやり取りを見ていると、自然と頬が緩んでしまい、無意識に笑いがこぼれてしまっていた。
「あー! 笑ったなー!」
「ごめんごめん、つい……ふはっ」
「んもー!」
皆に馬鹿にされたのが納得がいかないようで、明日葉と呼ばれた少女はその場で地団駄を踏み始めた。
その姿がなんともシュールで、俺は失礼だと思いながらも、何とか笑いをこらえようと踏ん張る。───でもちょっと無理かも、ふはっ
「来たばっかりの体験入学生にも笑われるなんて可哀想。───どんまい明日葉」
「うわーん! 怜奈が追い打ち掛けてくるー!」
「くっははは───」
笑いのダムが決壊寸前の俺にも怜奈と呼ばれた無表情少女の追い打ちは刺さり、犯罪者にはなりたくはないから距離取りたいなーなんていう意思に反して、無事俺は大笑いをしてしまうのだった。
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