第34話 警鐘
強い。それなりに場数を踏んだ感覚が、私───
近接戦での冷静な判断力と富んだ発想力。さっきの咄嗟の目眩しなんかはおよそ回復魔法使いの、ましてや魔法少女になったばかりの訓練も受けてない子供ができる動きじゃない。
───もしや後暗いことでもあるのか? 例えば、どこかの国の兵士であるとか。髪色は黒髪だが、セカンドフェーズ以上の変身をすると変わるからなんとも言えない。顔立ちだけで言ったら外国人やハーフの人のような人形っぽい整った可愛さがある。
問いたださねばなるまい。歳はバルクやリーテと同じぐらいに見える少女が、何かしらの武装組織に文字通り使われている可能性があると考えると居ても立っても居られない。
「レイドちゃん? どうしたの? 怖い顔してるわよ」
「あぁ……すまない、なんでもないよ」
リリーに取り繕いながら返事しつつも、クレイアンブロイドの方からは目を離さない。
とにかく、変身を解除させてでも無力化しなければ。
確実に抵抗されるだろうが、リリーの『
そのためにはまずリリーの射線上に私たちがいてはいけないんだが、クレイアンブロイドはそこを察してか、さっきからリリーと自分の間やその先に私やバルクを挟むように立ち回っている。
「ホント厄介な奴だ……」
とにかく、バルクとリーテと合流して、リリーの射線に入らないように伝えなければ。
一気にクレイアンブロイドの横を駆け抜けて、2人の方へ走ろうと姿勢を低くした瞬間、彼女の体が淡く光り始めた。これは……?
「『
まさか……願いの魔法? 魔法少女になったばかりだったんじゃないのか? ───いや、それだけ強い意志で魔法少女になったってことか。
一体何を願って魔法少女になったんだ?
「気をつけて。体が魔力で包まれてる───多分身体能力を向上させる魔法だと思うわ」
「あぁ……了解した」
感覚を頼りにする私にも何となく分かった。しかも、願いが濃密だ。あれはだいぶ厄介だな……多分。
「四の五の言ってられない。怪我させるの承知で突き刺す」
「あら、さっきまでは手加減してたの?」
「───まさか」
手加減なんて出来なかった。あれは、手を抜いて勝てる相手じゃない。こっちが本気で当てようとしても、子供のチャンバラをあしらうかのように避けられてしまう。
「最初から当てる気だったさ」
こちらが4人だからまだ拮抗しているが、これが私と彼女の1対1なら、負けているのは確実にこっちだ。特に───殺す気なら。
バルクの弾を避けて近付いた私に目眩しの魔法を放ってきた時、彼女が私の横を素通りせずに剣を滑らせれば、最悪私は死んでいただろう。死なずともこの戦闘中には再起不能な程度の傷は負っただろう。
だが、アイツはそれをしなかった。何もせず、ただバルクに向かっていった。
一体何を願ったらそこまで強くなれるというのだろうか。1度ご教授願いたいな。
そのためにも捕まえなければいけない。4人なら、多分不可能じゃないだろう。
感覚が告げる警鐘は未だ鳴り止まず、クレイアンブロイドが願いの魔法を纏ってから、よりその音が強まった気がしていた。
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